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魔物の住み家

 太陽が出てしばらくたった頃。

 俺は小屋の扉を開け外に出た。


(今は……昼前ってところか?)


欠伸を噛み殺しながら、そんな事を考えていると――

 

「レン」


「おはよう天音、早いな」


「もう、お昼前だよ!」


まるで、寝すぎだ!と抗議するような表情で俺を睨んでいるのは

 【土御門 天音】(つちみかど あまね)

―― 俺と同じ魔物の少女だ。


「いや、昨日は【狩り】から帰った後にちょっとアジトまで見に行ってさ。帰りが遅かったんだ勘弁してくれよ」


今度は欠伸混じりに答える。

 それでも……と天音は続け


「朝ごはん遅くて【ゴル】さん怒ってるよ?」


「……そうか、それはしまった。急いで準備しよう」


 俺は慌てて食料と昨日山賊共の【アジト】で見つけた酒を持って走った。

 ここは【山賊】共の【狩り場】の一角、深い谷間の底

そこに俺は【ネグラ】を作り身を潜めて生活をしていた

山賊(奴ら)の情報を奪うために、この【世界】を知る為に。

 そこに最近は天音も加わった、という事だ。

 だが、この【ネグラ】には俺達2人だけで暮らしているわけじゃない

いや――

むしろこの【ネグラ】に俺が転がり込んだ状態とでも言うのか?

比喩表現でもなんでもなくそのままの意味だが


 「レンか」


俺が息を切らせながら姿を見せると、その堂々とした姿で出迎える者があった。

 もともとこの【ネグラ】にいた先人?先客?の【ゴル】さんだ

ゴルさんも俺達と同じ【人族】ではない――

が、俺達【魔物】とも違う。

 いや……【魔物】なのか……?まあ、ともかく俺達とは違う

 彼は【竜】……

ここで隠居生活を楽しんでいたらしいが

山賊共が勝手にアジトを作り

狩り場を作り

騒がしくしていたらしい。

 いっそ山賊共を皆殺ししようかとも思ったらしいが……

 曰く


「百年程待てば静かになるじゃろ」


って感じだったらしい。

 まあ、そのおかげで俺は助かったわけだが……

俺は初めてこの世界に召喚され、すぐに【狩り】に放たれそのまま必死に逃げた。

 そして、この深い谷の上にまで追い込まれた時、足を滑らせそのまま谷底にまで落下した

その時、運がいいのか運が悪いのか……生きていた

虫の息で呼吸もほぼ出来ていなかったと思う。


が――


必死に、必死に痛みと眠気に抗っていた事は覚えている。

 そして――ゴルさんのところへ落ちた。

そこで、ゴルさんのウロコ【竜のウロコ】を掴んで光が身体を包んだらしい

(その時は無我夢中で覚えていなかったがゴルさん曰く「命を繋ぐ為に命を削っているようじゃった」らしい)

その時、俺のスキルが発動し傷を塞いだらしい。

……塞(・)い(・)だ(・)ら(・)し(・)い(・)と言うのは所謂傷を癒した訳ではないという事。

 そう俺のスキルは【回復】ではない

素材を使って別の何かを作る――【クラフト】スキルだ。

 俺は自身のスキルがそこまで万能でも強スキルでも無いと感じているので【日曜大工】と呼んでいるが……まぁ、このスキルとゴルさんのお陰で命を長らえる事が出来たという事だ。


 「ゴルさん、悪い食事遅くなったな。お詫びに酒もつけるから許してくれ」


「!……ふむ。それならば、しょうがないな」


不承不承と言った顔だがゴルさん……

声と尻尾に出てる。

隠しきれていない。

ウキウキがダダ漏れだ。


 「して……どうじゃった?」


俺の用意したご飯を食べながらゴルさんが聞いてくる


「ああ。恐らく間違いない……【狩り】の後、奴らはほとんど見張りを立てずに宴会を始める」


 俺は、にやりと口の端を上げた。


「そうか……ならば、そろそろかの?」


「ああ……次の【狩り】で決行する!」


「……寂しくなるのぉ」


「ああ……色々と世話になった。小屋とかはそのままにするから、好きに使ってくれ」


「ここを出たら、まずは何処を目指すのじゃ?」


「一先ず、北東にある村だ。そこから大きな街を目指すつもりだ」


「ならば、儂の財宝も少し持って行け。あって困るもんでもなかろ」


 最後まで面倒見のいい竜だな。


 心の中で溜息を吐きながらも、俺は砕けた表情で礼を言う。


「なに……ここまで関わってくるとな。孫のように感じとるのかもしれん」


 ゴルさんも、同じような表情で笑った。


 俺はゴルさんから、かなりの量の宝石や装飾品、そして綺麗な意匠を凝らした 短剣――だが、切れ味も良さそうだ。


 それと、竜のウロコも数枚もらうことができた。


 そして同時に、初めてゴルさんと会った時の会話を思い出す。


 あの日。


 痛みで意識が朦朧とする中、スキルを発動した時のことだ。


「神が使うスキルに似ておるな」


 あの時の俺は、自分のことで精一杯だった。


 返す言葉もなかった。


 それでも、必死な中で妙に冷静に、


(神もスキルを使うんだな)


 と思っていた。


 神様なんだから、何でもありなのだろう、と。


「そういやゴルさん……神って、どんな奴なんだ?」


 俺の言葉を聞いた瞬間、ゴルさんの顔に少し怒気が浮かんだ。


「ふん! あんな奴の人となりなぞ、興味もないし語りたくもないわっ!」


 そこで一度言葉を切り、


「……じゃが……まあ、お主のように儂に敬意を見せる奴ではなかったの」


「お主とは逆じゃ、逆!」


 そう言って、ゴルさんは強引に話を終わらせた。


(この話は、ここまでだな)


 あまり深く語りたくないということだろう。


 俺はそう判断した。


「出発前に、また顔を出すよ。今度は天音も一緒に」


「おお! アマネにも褒美を用意してるから、持って行けと伝えてくれ!」


 その言葉を背に受けながら、俺は小屋へ戻った。

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