バレンタインデー
このハーレム物語はいわゆるサザエさん時空のもとに進んでいきます
バレンタインデー当日、しかも週末という最強のタイミングで、四角関係は最大級のカオスを迎えた。
場所は悠真の部屋。
「今年は全員で公平に!」という瑶季の提案で、なぜか四人が悠真の狭い1Kに集結することになった。
理央が「私の家の方が広いのに〜」と不満げだったが、瑶季の「悠真くんの部屋でこそ本気の勝負!」という謎理論に負けた。
部屋に入った瞬間、三人の女の子がそれぞれ巨大な紙袋を抱えて仁王立ち。
瑶季「はい! 本命チョコ! 手作り三段重ね! 中身は全部悠真くんの好きなもの詰め込んだよ!
これで決着つけようね!」
理央「ふふ、私のは義理じゃなくて……本命中の本命♡手作りフォンダンショコラに、悠真くんの名前を金箔で書いてあるの。溶けても私の愛は溶けないよ?」
すみれ「えへへ……すみれのはね、悠真くんが一番喜んでくれそうなの選んだよ〜♡高級チョコレート専門店の詰め合わせに、私からの手紙と……キス印のハートシールいっぱい♡」
悠真「……待って。三段重ねって重さ的にヤバくない? 金箔って……? キス印って何!?」
三人は同時に悠真を囲むように座り込み、
それぞれのチョコをテーブルにドン!ドン!ドン!と並べる。
瑶季「じゃあ、順番に食べ比べて! 一番美味しい=一番好きな人で決定!」
理央「えー、それだと瑶季ちゃんの分量勝ちじゃん。私は量より質で勝負だから……一口で落ちるように作ったもん♡」
すみれ「私のは……悠真くんが食べながら、私のこと考えてくれるように、甘〜く作ったよ……♡
ねえ、すみれのチョコ、一番最初に食べて?」
悠真「いやいや、なんで俺がそんな順番決めなきゃいけないんだよ!しかも三人とも本命って言ってるし……!」
その瞬間、瑶季が立ち上がって宣言。
「よし! じゃあ新ルール!
『悠真くんが一番ドキドキしたチョコをくれた人に、今日一日デート権』!
どう? これなら公平でしょ!」
理央「いいね〜。私、悠真くんの心臓の音、絶対聞こえる自信あるもん」
すみれ「えへへ……すみれ、悠真くんの耳元で『大好き』って囁きながら食べさせてあげよっか……?」
悠真「ストップストップストップ!!俺の心臓が持たない!!」
結局、チョコの食べ比べは始まったものの、一口食べるごとに三人がそれぞれ
「どう? ドキドキした?」
「ねえ、私のほうが甘いでしょ?」
「悠真くん、顔赤いよ♡」と迫ってくるため、悠真の心拍数は常時危険域。
途中、瑶季が「これ義理チョコ!」と叫びながら大量の市販チョコを追加投入したり、理央が「これは友チョコ……だけどちょっと特別♡」と謎のランク付けを始めたり、すみれが「これ、すみれの分身だから……全部食べてね?」と涙目で迫ってきたりで、テーブルはチョコの山と化した。
夜が更けて、ようやくチョコ食べ比べが終了。
悠真が満腹で動けない状態で呟く。
「……俺、もうチョコ見たくない……」
三人は同時に笑って、
瑶季「でもさ、今日めっちゃ楽しかったよね?」
理央「うん。悠真くんの困った顔、最高だった♡」
すみれ「私も……みんなと一緒にいられて、すっごく幸せ♡」
悠真「……お前ら、ほんと容赦ないな」
そして三人が同時に悠真の両側と正面に寄り添ってきて、
瑶季「来年も、絶対やるからね!」
理央「もっとすごいの作ってくるよ〜」
すみれ「次は……もっと甘くしちゃう♡」
悠真「勘弁してくれ……」
窓の外では、土曜の夜の街に雪がちらつき始めていた。部屋の中は、甘いチョコの香りと、三人の温もりと、悠真の絶望的な幸福感で満ち溢れていた。
この四角関係のバレンタインは、誰も勝者にならず、誰も敗者にならず、ただただ甘く、熱く、終わらないまま続いていく——
そんな予感だけを残して。




