99式自動貨車(ケース<義烈>3 〜冥冥〜)
99式自動貨車(ケース<義烈>3 〜冥冥〜)をアップします。
いや〜長くなって…
こんなはずではなかったのに{苦悩}
いやだいぶ削ってもこの有様です。諦めます(泣)
「話は聞いてる。自動車の戦いは得意だそうだね。」
豊岡の林の中に設けられた「特別部隊」の中隊長室で
敬礼した我々二人を出迎えてくれた森山大尉から握手を求められた。
「同じ大尉だが、よろしく頼む」
表裏を感じない笑顔で、私を歓迎していた。
元の隊を離れるときに、連隊長が「少しは箔をつけた方がいいだろう」と平井上等兵とともに「一階級特進」を申請してくれ、それは正式に受理された。
「しかし…」
何かしら思うところはあるのだろう、うんうんとうなづきながら
「よく来てくれたものだ」
わっはっはっは、と物語の世界ではそのような笑い声を知っていたが、現実にそんな笑い声を聞くと不思議にも思えた。不快ではない、演技ではない、この人の地なのである。なんとも豪快な人だ。とても陸軍第一の精鋭部隊の長とは思えなかった。いや、このような清濁併せ飲んでもなお自分を見失わない人物こそがふさわしいのかもしれない。
この作戦の困難さは間違いない。それどころか、半分も到達することが難しいかもしれない。
作戦の詳細は伝えてくれた。
サイパン島突入
B29地上破壊
「あとは実行日だけだ」
つまりは陽動か…ただし我々車両の動きはどうするかという視点での検討はまだなされていなかった。
ここ豊岡では奥山大尉率いる空挺部隊は原寸大のB29の模型を相手に、爆破訓練を繰り返していた。自分たち任務の重要性を認識している彼らは。
「一人五機」
を合言葉に、何度も効果的な攻撃をするための検討と訓練に励んでいた。
こんなに体格のいい兵がそろっているのは初めてだ。聞けば全員が柔道・剣道の有段者だという。それなのにエリート然とはしていない。自身に自信があるのだろう。部外者とも言える我々にも気さくに対応してくれた。
その中の一人が自動車運転を引き受けてくれた。村上上等兵と名乗った。
「あまり運転はしていなくて…」
そりゃそうだろう。歩兵とか輜重・兵站とかとは違う。せいぜいが基地内をうろうろする程度しか経験がないだろう。
次の日から、3人での訓練が始まった。
最初は平坦な道路、そして荒地。基地内外をこれでもかというくらいに走り回る。
こちらの意思がどの程度伝わり、そして言葉の指示だけでなくとっさの判断を自ら行えるくらいに。
「最後の最後はこの車で体当たりしますよ」
ときっぱりと言う村上上等兵に
「だめだ」
とこちらもきっぱりと言う。絶対に譲れない。
「最後の最後を作らなければいい」
そういう私に村上上等兵は化け物を見る目で顔を向ける。
「我々はかく乱だ。弾丸が続く限り、部隊の兵全員が死ぬまで敵を撹乱しなければならない。そして…」
言葉を切る。村上上等兵ののどがごくりと動く。
「その最後の一兵には、村上上等兵、貴様も含まれる」
これは信念だ。この3年間戦い続けた信念だ。自分の部隊の一兵が生き延びていたら、自分は死ねない。それこそが部隊を率いる自分の役割だと思っている。
「もし敵の捕虜となったら、不平を言え。扱い、食べ物、なんでもいい。捕虜全員で訴えるんだ。おとなしくしている必要はない。食料は特に倍食べろ、一人が二人分、敵の食料を食べることで奪え。隙があったら収容されたところを逃げ出せ。そして車両の一台、ドラム缶の一本でももやせ。それが敵に少しでも負担をかけることになる。隙を与えないように敵が厳重に守ろうとすればするほど、負担は大きくなる」
一気にまくし立てる。反論は許さない。上官だからの命令ではない。同じ車両で共にする仲間だからこその命令だ。
これは、以前の隊でも少しずつ浸透してきた考えである。定量的思考は前線の兵を中心に広がっている。
『兵士道は生きることに見つけたり』
自分が死ぬことより、生き延びることで敵に圧力をかけ続ける。それこそが負けない戦いだ。
またこの部隊に度々航空軍の参謀がやってきて、「死に急ぐな、ゲリラ戦をやれ」と指示していた。
まだ十分には納得していない様子を見せたので、
「一人5機…という話だったな?この車両に乗るのは3人、15機を、そしてグライダー要員を含めれば5人、25機を狙う…それまで死なない、死ねない」
村上上等兵はぐっと顔を引き締めた。
「捕虜になってでも、その戦いは続くんだ」
「はい」
大きく頭を縦に動かす。
食事は豪勢だった。後方とはいっても戦いは続いている。そんな中でも三度三度の食事は量も質も優れたものであった。大本営直属の部隊とあって特別扱いであり、最初、大喜びだった平井伍長も次第にその量にはうんざりしていた。何せ体格の良い空挺隊員に合わせたものであるからだ。
この作戦には四台の99式自動貨車丙型が参加する予定だった。夕飯は士官同士が訓練の様子や計画の詳細を話し合うために集まり、上げ膳据え膳状態で食事をとっていたが、昼飯は四台の車両班全員でとり、自動車戦闘の問題点を出し合い、時には地図をもとに車両の動きを確認していた。もちろん仲間意識を少しでも上げようとする目的もあった。私たちを含む三組が歩兵科、一組が輜重科の出身であった。それぞれに一人ずつ空挺隊からの支援兵が付いていた。いずれも自動車を使った戦闘経験が豊富で、共通の経験や話題があり、階級や部署という壁を払うことは次第にできたことは幸いであった。
そして移動命令が出た。
航空隊がある浜松基地である。
「平井伍長殿」
と、先行していた車両整備班の兵が平井伍長を呼んだ。
平井伍長は言葉数こそ少ないが、人との接し方がうまく以前の部隊でも「平井班」などといわれる兵科や部隊を越えたグループが形成されて、車両のこまごました改造や97式自動砲の設置や取り扱いにあれこれと手を出し口を出していた。この部隊の中でもいつの間にかグループが出来上がっているようであった。
「見つけました。例のもの。もう手に入れてます」
「ついでに別のものも手に入れてます。4つ」
何事だと不信に思ったのが顔に出たのだろう。平井伍長は軽く笑う。
「あれですよ」
整備されている自車を見てみると、見慣れたものが助手席に鎮座していた。
97式自動砲
である。
「この隊にも支給されていたのですが、落下傘で下すのには重すぎるし、第一、あの一門のために10人も用意しなければならないので放置されていたようです」
それでなくても落下傘で降下すると部隊はかなり広がる。うまく自動砲を下したとしても10人が集まるまでは大変だ。ならば2人で使える軽機の方がましだし、一人でも使える擲弾筒の方が使い勝手がいい。
97式自動砲ならば平井伍長が慣れている。火力として申し分ない。
「それから、別のもあります」
と、あらためて後部席の銃筒を見ると見慣れない細いものがついている。
「飛行機の機関銃ですよ。新型ができたためにもう使っていないと聞きました」
「今回は弾を盛大にばらまくことが必要みたいなので、貰ってきました」
なるほど、かなり速く車を動かすだろうから狙いをつけて数発ずつなどより、当たるが幸いと弾幕を張ることが重要だと、車両班の昼食の時に話をしていた。
『九八式旋回機関銃甲』
と銘が打ってある。なんでもドイツの機関銃をコピーしたものらしい。弾薬もチェッコ機関銃のものが使える。サドル式で75発入りの弾倉はかなり重いが、有り余る利点がある。発射速度である。
九九式軽機が750発前後、こちらは1000発ある。なんでもドイツの機関銃は命中率よりも敵兵の頭を上げることを防ぐために発射速度を重視しているという話だ。
試射すると、私の腕が悪いこともあって確かに命中率は悪い。ただその発射速度は素敵に思われた。
浜松では、飛行機に乗りその感覚を確認したり、グライダーの胴体部分のみが設置されて車を素早く降ろすことを何度も確認したりと、実戦への準備が進んだ。グライダー降下も二度ほど経験した。
他の降下部隊もフル装備で飛行機から降り、散開することを繰り返していた。
ちなみに、個々に百式機関短銃が支給されたが、ビルマから持ってきたトミーガンがすでに手元にあった。
「欲しかったのだろう?持ってけ」
と、部隊から離れる旨を報告に行くと、連隊長が二人に二丁与えてくれた。
「それから自前のものではあるが…」
ホルスターに入ったピストルが渡された。欄印の友人から贈られたものらしい。ホルスターから出したものは、ルガー拳銃である。私の私物であるブローニング拳銃(FN ブローニングM1910)のような安物ではない。
「やるのではない、貸すんだ、必ず返しに来い」
計画の概要までは知っているが、その内容までは教えてくれない連隊長からの「帰ってこい」というありがたい言葉を含んでいた。
浜松について三週間。
もういつでも出撃できる。部隊の皆はそう感じ始めていた。さざ波のようにじわじわと部隊全体をその空気は広がっていく。
厳しい訓練が続き、それでも隊員たちには食事中や休憩中に緊張感が増しているようには思えなかった。ただ、視線は日々鋭く強くなっていくことを感じていた。
そんなある日。
トラックが数台やってきた。いつもの補給物資か…とのんびりと構えていたら、
「大尉殿、お願いします」
と、私を呼ぶ声が聞こえた。手近にいる上級将校は私だけである。
トラックの中には、木箱が多数。何事かと不安に思っていると、そのうちの一つが下ろされた。中には何かしら細い筒のようなものの前に一回り大きな缶詰のような筒状のものが付いているものが四本互い違いに入っていた。爆発筒?
『試製五式四十五粍簡易無反動砲』
と表紙にある取扱説明書が箱の中にある。
ちょうど訓練の中休みの時間だったこともあって、隊員たちがぞろぞろと取り囲む。説明書は数冊あったので、それを配り自分自身も読んでみる。
「すごい…」
と、ある兵士がうなる。
たしかにすごいものだ、使えるとしたら。
個人携帯の対装甲兵器だ。一人で使える。有効射程は50メートル、実際にはそれよりは飛ぶが、今、降下隊員たちが持っている柄付き爆弾や爆弾帯に比べればかなり楽になる。自爆覚悟で攻撃しなくてもいい。
『試製五式四十五粍簡易無反動砲』
は、個々に二門、そして試射用に二門配られた。かなりの数である。とても『試製』という言葉にそぐわない。などと考えていると、口に出たのかもしれない。
「大本営も豪勢なもんだ」
新しい兵器を取り囲んで口々に批評している兵たちのその様子を眺めていると、森山大尉の声が後ろから聞こえた。
「なんでもドイツのものを参考にしたらしい。試作、即、量産だ。歩兵も工兵も大喜びだ」
いたずらが成功したかのように愉快そうに笑う。
火炎瓶や地雷を抱えて戦車に突っ込むだけだった攻撃を
「一人で戦車と戦える」
ということで、うわさを聞き付けたさまざまな部隊長からやんのやんのと催促されているらしい。兵器の制式採用など吹っ飛んでいる。
「来てくれ」
トラック近くの喧騒の中、森山大尉が私を呼んだ。
しんとした兵舎の片隅の中で軍靴の音だけが響く。
「決まった」
中隊長室に入った途端、私を振り向きこう述べた。
何が?わかっている。
「一週間後、硫黄島に移る。給油の後、そのままサイパン島だ」
森山大尉は私が指示の言葉を飾ることを厭うことを知っているため、きっぱりとした口調で言う。
「始まりますか…」
「そう、やっと…」
ほっとした言葉だった。私にとっては二か月余りだが、森山大尉にとっては半年。長いことだったろう。傍から見ていても、さまざまな苦悩があったはずだ。そして周囲のやっかみと期待も…それを持ち前の豪快さで吹き飛ばしていたように見えていた。
「やっと」
その言葉の持つ空気が部屋中に広がり、私には突き刺さるように聞こえた。
敵からの攻撃の隙間に合わせ、硫黄島に集合した97式重爆は、あるものは完全装備の空挺隊員を乗せ、あるものはグライダーを牽引し飛び出した。これから空路3時間余り。浜松基地で軍服に迷彩のために塗った淡緑色の染料の匂いがなかなか消えないでいた。99式も米軍に合わせオリーブドライに似た色で塗られていた。(さすがに星のマークは入れていない)
グライダーに乗る前はにこにことした笑顔を絶やさなかった村上上等兵も、次第に黙りがちになった。
風切り音と遠くの97式重爆のエンジン音。グライダーの中は暗闇の中で静かな時を過ごしたいた。平井伍長は戦闘糧食として配布された羊羹を口にしていた。
戦闘食料と言えば、隊員のほとんどが世話になった整備兵らに分け与えており、各々最低限のものを携行していた。私自身も海苔巻きと固形塩、キャラメル以外は車両整備班に与えていた。ついでにビルマから持ってきていて使いきれなかったウィスキーも分けてしまった。貰った兵たちが喜び半分悲しみ半分の顔で、
「武運を祈ります」
と言ってくれた。たぶん死出の旅と思っていることだろう。だが、そんなに簡単には死ぬことを覚悟していない。最後の最後まであがくつもりだ。
「あと30分くらいで切り離されます」
母機からの連絡を受けて、グライダーの機長から声がかかる。
時計をちらりと見る。蛍光塗料の文字盤が薄く浮かび上がり、予定より5分程度の遅れを指していた。機体がやや上昇する。ある程度高度を稼いでから切り離される予定だ。
「僚機は?」
「グライダー牽引の4機は無事です」
降下兵を乗せた残りの12機は突入方角が違うために分からない。
簡易シートのベルトを確認する。感じていた眠気はいつの間にか薄れていき、シートに軽く押し付けられる感覚を感じた。
「切り離されます」
遠くに聞こえていた重爆のエンジン音が遠ざかるようにその音を小さくしていた。一瞬、スピードが落ちたが、グライダーは多少下降し、スピードを安定させていた。その時のぐらりとした、ちょっと浮き上がった感覚に違和感を感じていたが、それでもグライダーは安定して飛んでいた。風切り音しか聞こえなくなった。
「準備は?」
「はい」
「大丈夫です」
同乗した2人の声が狭いグライダーの中に響く。
あと20分くらいで突入だ。
突然、前方の島が爆発した。
その後、上空を探照灯が撫で回し、無数の光が空に向かって打ちあがっていた。対空砲、対空機関銃の雨。予定していた日本海軍の爆撃機攻撃であった。総勢20数機、20t近い爆弾が降っているはずだ。我々の攻撃を欺瞞するために海軍の精鋭機が投入された。通り魔のような爆撃に、米軍はその全力で防ごうとしている。上空でも爆発が起こる。
ああ、我らのための犠牲がまた一つ…
「降下します」
グライダーは低空飛行をするために、降下に移る。対空砲を防ぐために降下エネルギーを使って、ぎりぎりの低空を速度を落とさずなめるように飛ぶためだ。海面まで10メートルを切るという。ク8Ⅱグライダーの搭載量ぎりぎりの状態でも期待は安定して飛ぶ。車両を止めているワイヤーが軽くきしむ。風切り音が激しくなる。
「あと5分」
「僚機被弾!」
悲鳴のような声が機首側から聞こえた。
窓の右側後方から何かしら光が見えた。
唇をぎゅっと引き締める。
考えるな、悩むな、今は前を見るしかない。
お楽しみいただけましたか?
今回
『試製五式四十五粍簡易無反動砲』
を出してみました。本当だったら「試作九糎空挺隊用噴進砲」の方が適切かもしれませんが、この戦中簡略版のような割り切った無骨さが好きですね。現実では量産・配備されるのはもう少しあとのようです。ただ『試製』は書類の関係からかはずさ荒れた様子はありません。
また
『九八式旋回機関銃甲』
は日本兵器らしくないスタイルに惹かれてます。弾丸の関係や製造の難しさからあまり量産されなく、次期の機関銃に交換されたこれも可愛そうな兵器です。
なんかこんな可愛そうな兵器が好きなんてwww
はい変人です(真顔)
次回で完結予定です。
ではでは。。。