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空母用カタパルトのお話 その2

皆さん

お久しぶりです。


いゃ~~

自治会の役員ジーサンですを引き受けたもので、バタバタと3月末から忙しくなりました。

面倒くさいけれど、歳をとった者の義務だと思い一年間頑張るしかありません。


前回からちょっと書き方を変えましたが、文章がトッチラがりがちでやっぱり不評なようで、今回のカタパルト以降は元に戻します。まぁ、終わるまでご勘弁ください。


ではお楽しみください。


「学べば学ぶほど、私は何も知らないことがわかる。

 自分が無知であると知れば知るほど、

 私はより一層学びたくなる。」

          アルベルト・アインシュタイン


  ◇      ◇


 「ポン6」


という言葉がある。日本海軍独特の言葉だ。

「6円」は、思った以上にかなり大きい数字だ。少尉である自分の任給が月に100円少し、だから数をこなすとそれなりに大きい。そしてその6円を今から得ようとしている。


「索、装着確認!」


「ヨシ!」


エンジンの音にかき消されないように大きな声で互いに確認する。時間が無いとは言え手順を守らないと、その代価は自分の命となる。

風防は閉じずに開いたままである。

出されていた白旗が赤旗に変わる。係が頭上高く赤い旗を出していて、それがひらひらと持っている棒を叩くかのように舞っていた。

もう逃れられない。エンジンを全開に吹かし、各計器を確認する。異常は無い。機尾が浮き上がることを昇降舵で抑える。そして手を上げて「発射準備よし」を発艦要員へと伝える。

飛行甲板に片膝付いた発艦要員が頭上の赤旗を振り下ろす。昇降舵を上昇位置に置きスロットルを思いっきり開ける。機尾が上がっているのが体験出来る。いつもと違い追い風を受けつつ風下に飛び出すのだから、しっかりと操縦桿を握る。途端に強いGを受け、座席後方に自分の身体が押しつけられていく。何度味わっても慣れないものだ。


「少尉に賭けましたので、お願いしますよ」


機体に乗り込む前に、顔見知りの発艦要員からそんな激励の言葉を受けていたことを思い出す。兵・下士官の間で射出の成功・失敗が賭けの対象になっていることは知っている。戦況が味方有利なだけにあまり誰も言わない。自分が賭けの対象になっていることであまりいい気はしないが、まぁ「地獄の加賀」だからこそそんなこともよくある話だろう。せめて「損」はさせないようにやるだけだ。


 発艦するとうまく発艦索が外れた。ぐんとエンジンを吹かす。一旦飛行甲板の高さから低くなるが、そんなことは分かってる。タンクいっぱいのガソリン、基準いっぱいの弾薬、それでも増加タンクを付けていないからか、機体はぐんぐんと上昇する。


 「6円もらったな」


 日本海軍では、カタパルト射出1回につき6円の危険手当を出していた。それを「ポン6」と搭乗員たちは称していた。そして顔見知りの発艦要員にも「得」を与えられた。

 事前の話では、とりあえず4,000まで上がってから敵機を追い払うことになっていた。僚機も打ち出された後で、自分に付いてきている。

 おいおい雷撃機か?

低空をのたのたと飛んでいる星マークの機体を見つける。最初から飛んでる防空隊が取り付いていた。

 あれだったら、任せても大丈夫だろう。

そう判断して、周囲を旋回しながら艦隊上空を観察する。

 あ、いた!

黒い点が数個、雲に隠れながら着々と艦隊に近づいていた。高度からいっても急降下爆撃機だろう。そちらに機首を向けて軽く7.7㎜を撃つ。それだけで僚機は理解した。堕とさなくて良い、攻撃を諦めさえすれば…




 今回はいつもと違う形で書かせてもらってます。

 いろいろとポチの中の人の「つぶやき」やらも入ってますが、ご了承ください。


 さて、カタパルトの話題でしたね。

 普通ならばカタパルトの歴史などを書きます。現在の日本でカタパルトらしきモノを考えると、自衛隊を見る限りでは軍事的なモノはぼありませんね。(かなり以前、船から対空射撃用ドローンを打ち出している写真を見たことがありますけれど、あれはカタパルト?)まぁ「電磁砲」などはカタパルトの変形と考えても良いかもしれませんが(笑

 読者の皆さんには民間のカタパルト利用は目にする・体験することがあるやもしれません。例えばジェットコースターなどにはその活用が見られます、などというと「え?」かもしれません。一気に最高高度まで昇るタイプのモノはカタパルトを利・活用していると言えます。逆バンジータイプのモノもゴム式のカタパルトと言えます。またグライダーの飛行のためにゴム式カタパルトを使って離陸させる場所もあるそうです。

 また横にそれました(笑 


 そうそうカタパルトの歴史でした。

 調べるまでもなく(よく知られているということ)飛行機とカタパルトはその黎明期から関連があるのです。ライト兄弟の航空機「ライトフライヤー」は陸上から重りを利用した一種のカタパルトで、失敗しましたがサミュエル・ラングレー氏の航空機「エアロドローム」はポトマック川に浮かべた台船(?)の上からカタパルトを使って打ち出されます。(どのような形式なのかいろいろと調べましたが、それ以前のグライダーにも使ってますので重り落下式のものだと考えます)

 などと調べていくと、リリエンタールに行き着いて(必要な情報を得られないままに)時間が経過します(苦笑  決して無駄な時間ではないのですが、ある程度調べて納得したら、まぁいいか~~~と打ち切ります。


 で、世界的なカタパルトのことを調べた後で、日本でのカタパルト利用にやっと目が行くわけです。もちろんそれまでに並行して調べてもいますけれど……

 いろいろと調べると日本海軍のカタパルトはかのハインケル博士とかなり関係があることが分かります。


「1925年初頭にまた日本の大使館付海軍武官小島大尉があらわれなかったら、私とて、飛行機のカタパルトまで造ろうとは考えつかなかったであろう」

               エルストン・ハインケル「嵐の生涯」より


 実はこの時に造ったのはカタパルトではなく「滑走台」(海軍の名称は「特殊(特設)滑走台」)なのですが、これに合わせたHD-25(愛知がライセンス生産。海軍名称「二式複座水上偵察機」)という水上機も製作してます。更には4年後にハインケル博士は実用的なカタパルトを製作してます。(なんと客船「ブレーメン号」に搭載!! 蒸気式です。パヤオさん「○の豚」の護衛航空機搭載客船はその影響でしょうか?)その影響を受けたのか海軍でいわゆる「呉式1号カタパルト」(空気式)、更には「呉式2号カタパルト」(火薬式)が作成されてます。(ハインケル博士の特許を上手く掻い潜る形で小技を駆使してます)


というと

 あれ? 萱場製作所は?

空耳ですね(マジ  

いやいや、忘れていませんよぉ~

 呉式1号カタパルトは「衣笠」に搭載されました。そして萱場式カタパルトは「五十鈴」と「由良」に交互に搭載。制式名称がないように実験で終わったようです。空気式はその後潜水艦で活躍します。じゃ、水上艦には? その後に開発された呉式2号カタパルトが使われます。火薬式です。日本海軍の水上艦のカタパルトは基本的に呉式2号の派生型ばかりです。この火薬式は水上機用として他国でもよく使われていますので、決して間違った選択ではありません。

 火薬式は、射出時の初期Gが強いのが難点です。搭乗員の失神騒ぎもよくあったようです。戦争後期には「難燃性火薬」によって最高Gが多少遅くなるようにしたようです。実際に「賭け」の対象になったように失敗(着火しなかったことも含む。どうも例の利根4号機はそれが原因という話)も結構あったみたいですね。


 さて、これら水上機用のカタパルトの紹介の後で、やっと航空母艦のカタパルトに記述をつなげられます。この航空機用のカタパルトですけれど、


蒸気式スチームカタパルト


が、現在の主流です。が、これは戦後のイギリスの発明(?)です。(前述のように水上機用はドイツで作られてますし、戦中にドイツの巡洋艦に搭載されているみたいです)


ならば以前のカタパルトは? 航空母艦が発明されて以来、アメリカではさまざまなカタパルトが発案・実装されてます。個人的に面白いと思うのは


・フライホイール&クラッチ式


 意味は分かる、で、それを実用化しようとしたアメリカ…… あなどれない……

 まぁ水上機用なんですけれどね。航空母艦に水上機? てのが面白いと思いません? しかも搭載甲板からの横向き(艦舷へ発進)なんですよ。航空母艦の過渡期とは言え、初めて知った時は「むむむっ」とうなってしまいました。

 で、圧縮空気を利用したモノの試作を経て、本命の


・油圧式(正確には油圧空気式らしい)


となるのですが…………

 「H型Mk II」というカタパルト……エンタープライズにも搭載されてますが、これが結構、使えないのです。せっかく設置しても


「ええぃ、邪魔だ!!」


と、戦時中にもかかわらず撤去される始末。なるほど、戦争前半のカタパルト記述が少ないわけです。

ちなみに…護衛空母(軽空母を含む)に搭載されてるのは

「H型 Mk IV」

なのですけれど、これってどちらかというと戦争後期に活躍したモノですので、初期の「ロングアイランド」や「ボーグ級」には? といろいろ調べても今のところ分かりません。ちなみにこの「H型 Mk IV」の派生型がエセックス級に使われてますので、こちらはそれなりに使えるモノで、アメリカ海軍としての決定版だったのでしょうね。この性能向上型がミッドウェー級にも活用されてます。(その後、火薬式! のカタパルト試作の後、蒸気式がイギリスより導入されて今日に至ります。電磁式は実用化されたと言っても未だ発展途上中ですね)


 アメリカのだいたいが分かったところで、他国にも目を向けてみたいと思います。

 「フューリアス」(改装前の「ハッシュ・ハッシュ・クルーザー」タイプはかなり興味がありますが…)・「アーガス」に始まるイギリスの空母は黎明期の迷走を経て「アーク・ロイヤル」で完成形となり、ここに油圧式カタパルト(HI-1)が搭載されてます。その装甲重厚型と言える「イラストリアス級」にも油圧式カタパルト(BH-3)が搭載されてます。ところが、「アーク・ロイヤル」は2基なのに「イラストリアス級」には1基……あれ? 何で? いろいろと調べてみてもはっきりとしたことは分かりませんでしたが、どうやら装甲重厚型にしたのが原因のようです。つまり場所がない…ということかな?

 次はドイツです。遂に実戦化されてませんが、一部ではよく知られている「グラーフ・ツェッペリン」ですね。最初は火薬式カタパルトを利用しようとしてました。これが凝った作りで、火薬式独特のどーんとする初期Gを抑えるために段階・連続的に複数の火薬を使うという「ムカデ砲」に準ずる変態的な(ほめ言葉)やり方という話を聞いたことがあります。(残念ながらホントの話なのかよく分かりません。大サトー御大もどこでこんな話を聞いたのでしょうか?)これが実用化されたら面白かったのですが、さすがにドイツでも…てな具合で、実際に搭載されたのは空気式のカタパルトです。ここで面白いことに、アメリカでもしてないことをドイツはしようとします。それは

 「全機カタパルト発進」

をデフォルトとしていることです。その頃(1940年前後)の米英の空母、カタパルトは補助的なモノという意識なのに対してメインとしているのは、たぶんドイツ海軍が空母による船団攻撃を考えていたことが影響していると思われます。船団を追撃しているときにわざわざ風上に艦首を向けるよりも船団に近づくことを優先していたのでしょう。なにせグラーフ・ツェッペリン級には16門の15cm砲(最上級の改装前とほぼ同じ。まぁ片舷は半数ですが…)が搭載されてます。実際にそんなことができたのか…まぁ無理筋でしょうけれど執念ですね。第一次大戦で干上がる寸前になってますし、第二次大戦でもアメリカからの「超法規的解釈(勝てば官軍)」によるレンドリースがなかったら終戦合意は無理にしてももっとイギリスは困っていたことでしょう。


 さてやっと日本海軍に移ります。

 前述のように「加賀」に搭載されて、96式艦戦の機体強化型を打ち出し実験したみたいです。あまりに軍秘なためかドイツのような台車式か、英米のようなワイヤー式なのかさえ分かってません。またそのころの日本の水上機用カタパルトを考えると、台車利用の火薬式を搭載されたと思われます。

 「加賀」に実験もなく搭載しようとしたの? 

と調べてみると横須賀で地上実験を行っているようです。真木成一氏の記述に寄れば


「14年に横須賀のカタパルトから九六戦の射出6回成功、機体に異状無し。15年に横須賀のカタパルトから零戦の射出に成功。」


とあります。事実が淡々と述べられてますので、この零戦が機体強化型だったのかは分かりません。で、このカタパルトって何だろうか? 地上のカタパルトというと「鹿島海軍航空隊」のたぶん訓練用なのだろう写真がよく知られていますが、艦載水上機のモノが支柱付きの置かれてます。横須賀にも同様のモノが置かれたのか? は、分かりませんがたぶん地上に置いたままでも使ったのかもしれません。

 で、その実績を経て「加賀」での実験となるのですが、96式艦戦の方はどうやら上手くいったみたいです。問題は今後の搭載機となる零戦です。「加賀」から射出されたのは搭乗員がいない機体だったようです。で、上手くいかなかった… って、ちょっと待てよ、何が上手くいかなかった原因なのか、はっきりしていない。いろいろと文献を調べてみても「破損した」という記述もあれば、「撃ち出し自体はできた」という記述もある。そして、

「実機射出実験は行われず。」

って、1回の無人機試験だけで、もう捨て去ってしまうわけです。それまでの横須賀での試験も、佐世保での「加賀」の工事もなにもかもがなしにされたのです。また翔鶴・瑞鶴にも搭載予定だったのも無視されてます。

 一応、理由は述べられてますが、有り体に言えば

 「搭乗員が危険である」

 「発艦までに時間がかかる」

の2点です。そんなの最初から分かっていたのでは? 日本的飽きっぽさもあるかもしれませんが、実際のところ開戦間近の実施なので熟れる時間が惜しかったのでしょう。


 さて、これからがIFです。

 カタパルトの必要性については「上海事変」を用意しました。次はカタパルトの開発ですね。昭和10年くらいから始めれば、14年あたりで搭載出来るかな?

 日本のカタパルトは

 ○火薬式(水上艦用)

 ○空気式(潜水艦用)

の2種類です。油圧式(油圧空気式)はパッキンなどの密閉性が悪いので、試作実験程度はできるでしょうけれど難しいと思います。

 ここでは「空気式」(できるだけ「ワイヤー式」)を採用させてもらいます。

 たぶん現実の加賀のカタパルトは大戦中一般的だった呉式2号5型(火薬式、約4トンの機体を発進)の改造型でしょうが、大淀型に搭載された二式1号10型(空気式、約5トン(6トンという記述もあり)の機体を発進)を前倒し的に開発出来るかと考えます。(後の伊号400型の四式1号10型(空気式、約5トンの機体を発進)だと全長も短めですし…)火薬式だと不発の場合に面倒くさい(すぐさま交換ができない)みたいですし、何と言っても甲板下に少量といえども火薬を使うのが恐ろしい。

 その頃の97式艦攻が正規重量約4トンですから、十分に撃ち出し可能ですね。(天山で約6トン)で、撃ち出し間隔ですが二式1号10型で約40秒間隔というデータがあります。ちなみに四式1号10型だと約4分間隔になりますが、これは潜水艦という限られた空間のためだと思います。(これもちなみにですが、米海軍は約1分間隔だそうです)空気式の場合、コンプレッサーと圧縮空気用タンクが開発のキモになるでしょうね。翔鶴級で常用航空機が72機~74機、一波・二波と分かれるのが大目にみて1回につき約40機、カタパルトが2基とすれば約20機を1分ごとに打ち出す……二式1号10型だと大淀で6機を予定しているが……コンプレッサーはかなり効率的なモノが必要でしょうし、空気タンクの配置が…むむむ……さて、2、3年でできるだろうか? 大淀のことを考えると10機くらいまでならば大丈夫ですけれど、その倍……割り切って10機くらいまでで残りは自力で発艦させるべきかもしれませんね。(実際、米海軍も戦争中期までは自力発進が主ですし)

 とすると、今回のIF戦記のように防空用の緊急発進か、重量が重い艦攻の打ち出しが主になるかもしれません。また軽空母や護衛空母(日本にはこの区分はありませんでしたが…)用の艦爆・艦攻用となるでしょう。


 

 そのあたりを次回にまとめようと思います。



いかがだったでしょうか?


加賀のカタパルトは技術的なものもありますが、開戦に間に合わないということが大きかったのではないかと思います。また、かの機動部隊の搭乗員の練度から言えば、「いるか!」ということだったかも…源田さんならば言いそうですよ。でも、戦争前半ならば良いとしても(良くはないが…)中盤以降のことを考えると、必要だっただろうなぁ~と考えます。どちらかと言えば軽空母の方に… まぁ、末期の空母航空隊の練度から言うとどうなんだろう? 雲龍なんかは輸送艦扱いですしね…


次回まで

またしばらく時間をおきますが、

見捨てないでくださいね(泣


ではでは


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― 新着の感想 ―
[良い点] 聞けば聞くほど「採用しない」様な気がwww [一言] 某作で「可変式スキージャンプ甲板」が出て来ましたっけねww
[一言] 「ポン6}ですかぁ。昔古本屋で買い漁った「丸」の海軍よもやま話のなかにあったなぁ。 同じ乗組の普通の水兵が安いバット(ゴールデンバット:金鵄(きんし))しかのめないのに、ニキビ面の若年航空兵…
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