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99式自動貨車(開発2・量産)

99式自動貨車(開発2・量産)


陸軍次官東條英機少将は当時、兼任として陸軍自動車学校研究部部員をしており、御殿場での「試製99式自動貨車」の実験に立ち会った際に

「歩兵科でも使えるのでは?」

と、輜重科のトラックとする以外の使い方を模索するため、先行量産車の20台を使い、歩兵連隊での運用実績を積んだ。


・助手席に軽機関銃を装備可能

・ウィンチ(工兵関係車両)

・牽引金具(牽引能力 最大800kg)


などの小改造で済ます甲案とともに、


・架台を半分にして後部座席を増やし、4名乗りオープン型(積載量 250kg)


の乙案もでた。


「この方が歩兵科として使い勝手がいいのでは?」

という乙案だったが、輜重科からの

「いや、それだと積載量が悪くなりますよ? 」

「量産体制に影響がある」

と、当初の発注先である陸軍自動車学校の意見が優先され、しばらくは甲案を歩兵科用に生産するに留まった。

「輜重としては、とにかく早くトラックを作って欲しいわけだな……」

豊田自動車は生産体制を維持できる甲案を喜んだ。

「まあ、トラックは戦争をする上で必要だし、それに時間をかけすぎるのは確かに問題だろうしね。」

そして、豊田自動車の方から提案してみることにした。

「乙案は生産体制が出来上がる1年後以降に」


こうして、豊田自動車の方は、これらの試験結果を元に改修を重ね、本格的なトラックの生産に入った。

正式に「99式自動貨車」として採用された後、豊田自動車は当初月産300台を目指し量産を始めたが、輜重科・歩兵科以外の砲兵科・工兵科などからも使い勝手がいいと依頼が相次ぎ、豊田自動車は以前より進めていた一貫生産の新工場の建設を陸軍からの資金援助もあって前倒しにし、月産600台(最大1000台)体制とした。

「戦場で荷物を運ぶにはこれくらいないとねぇ……

ただでさえ、うちの会社は戦時中なのに増産しろって言われてるんだし……」

当初は月産50台だったものが、最終的には800台、18年6月には1200台を達する量産体制となった。


「まあ、そのうち、こっちにも回ってくるでしょうしね……」

とは、後に戦車連隊長となった自動車学校関係者の言葉だ。


99式甲型は、まずは輜重科に優先的に配備されることとなった。

日本陸軍は戦線が広がるに連れて、トラック輸送による補給線の維持を最優先事項としていた。

これは、兵站を支えるための最重要課題であったからだ。特に前線への物資の輸送については、99式は馬匹の3倍、人力の10倍と言われ、本車の普及とともに「トヨタ四起(略してヨタヨンとも)」と兵たちは呼ぶようになった。その「トヨタ四起」は、当初こそ故障も多かった(これは今まで自動車に触れていなかった兵のせいでもある)ものの、すぐに信頼性を増していき、終戦まで主力車として運用されるに至ったのだ。


「これだけ便利なものがあれば、もっと早く採用してくれれば良かったものを」

そうぼやく者も、満州事変を知る古参兵を中心に少なくなかったという。


満州事変に際しては、陸軍自動車学校で編成された自動車隊が満州に送られ、兵站自動車隊として活動した。

編成上、各師団の輜重連隊の中に兵站自動車中隊を置く形であるが、日本陸軍の輜重隊は中隊レベルで動くことが多かった。中隊は、三〜四個小隊と中隊本部で編成され、トラック65〜70台(三個小隊時)と各種自動車7〜10台を定数とされていた。

兵姑自動車隊は本来、直接の戦闘部隊ではなく、兵姑間の軍需品の輸送が任務である。武器、弾薬、糧株、 衛生材料、兵員、傷病兵など必要人員や物資を運ぶのであるが、自動車隊の行軍は敵の目標となり、物資を積載しているので襲撃され易い 。これについては、自前の自衛兵器として三八式歩兵銃や四四式騎銃などが用意されていたが、大型トラックでは戦闘時の取り回しが悪く、追加配備された99式自動貨車を空荷状態で護衛用に使う部隊も多かった。架台に2名ほどの兵を乗せ、小銃3、もしくは軽機関銃(輜重兵にはあまり配備されなかったため鹵獲兵器などの員数外のものが多かった)1〜2で武装し、戦闘時の迎撃を行うだけでなく、敵を追撃さえ行う部隊もあり、事後のお叱りと共に褒められるという不思議な評価を受けた若手少尉もいた。


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