表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
砂漠の織り手  作者: 葉月秋子


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

44/47

3-6

3-6


 そして、ゆっくりと時は過ぎていく。


 ミーアは九歳になった。


 織りの腕も草摘みの腕も上がり、蜜蜂の世話も任されるようになった。

 キーヤは、戦士見習いとして大兄の従者となり、お山にやって来るのも稀だ。


 そして、今日は。


 泥色の液体の中で、纏めた糸束をゆっくりと回す。

 ムラにならないように、ゆっくりと、慎重に魔力を通しながら。

 そして・・・

「今だ!」

 魔力を使って、定着。色止め。

 引き上げると、空気に触れた糸束は、一気に色を変えていく。


『水浅黄』・・・と言う言葉が一瞬頭をかすめたが・・・


「出来た。綺麗な、お空の色!」


 だれにも頼らず、魔力を使って初めて染めた、ミーアの最初の糸の束。

 水で洗って、乾かすために広げて干すが。


「うーん、まだまだ薄いなぁ」


 乾くともっと薄い水色になるから、まだまだ空の色には届かない。


 村のみんながやっている普通の草木染めとは違い、「染め師」の染めは魔力を使う。

 触媒もなく色味を変え、定着液もなく色止めする。

 魔力のこもった糸は、色の濁りがなく、変色することも少ないが。

 大きな魔力と、タイミングを見極める目と、繊細な操作が必要だった。


 少ない魔力を細く均一に入れていく織物、編み物とは全く違った魔力の使い方をするので、両方を同時に覚えようとするのはそれは難しい事だったのだ。


 だがミーアは、ばばさまが初めに見せてくれた、あの青い糸が忘れられない。


 光沢を持った絹のひと(かせ)

 深い深い、夏の空の青。

 どんな素材を使って染め液を作り、どれほど魔力を極めたら、あの澄んだ深い青が出せるのか。


 薄い水色に染まった自分の糸を眺めながら、あの色が出せるようになるのはいつになるのか、と、一人ため息をつくのだった。

 

 



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ