2-19
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「此度は御師様にご足労いただき、ありがたき幸せに存じます」
『運命の織り手』の巫女たちの集会所
見事な胸飾りと複雑な幅広のターロ織りの帯を身に着けた、巫女の長『歌うツグミ』のシャリシャが、『磐座の老師』に向かって深く頭を下げる。
後ろに控えるのは、上位巫女の一団。
老師は差し出された茶を一口啜り、鷹揚に頷く。
(ふむ。最高の茶葉なのに、蒸らしが足りぬな。もったいない)
「やっとのことでお弟子候補の女児が内定いたしましたの。
日をあらためて、族長からご挨拶を」
「ふむ。長く待ったのう。
結局一族の内から候補を出すか。
本人は納得しとるかの?」
「他の部族の女性が染め師になるなど、『磐座の守』トゥリアークの沽券にかかわりますわ」
「要は血筋ではなく、染め師の才だと何度も申しておろう。
だからいつでも、長続きせんのじゃ。
薬師の技と同じ、長く厳しい地味な修行の道じゃぞ」
「その道の果ての名誉を思えば、長い修行も当然の事。
ご指定のように十二未満、頭もよく、機転がきき、手先も器用な女児でございます。
この度こそは、ものになると信じておりますわ」
「ですから」と巫女の長は続ける。
「あの女児を、叔母の下に返してくださいませ」
と、ミアリス排斥の言葉を続ける。
「その女児は、美味い茶を淹れられるかのう」
老婆はゆったりと尋ねる。
「茶、でございますか?」
「あれを返したら、誰が儂の茶を淹れてくれるんじゃ?
その有能な弟子候補かや?」
「・・・それは・・・慣れた下女をつけて・・・」
「下女つきの弟子など聞いたこともない。まっぴらごめんじゃわ」
嘲るように老婆は言う。
「ミアリスは、弟子ではないぞ。
老後の儂の世話が出来るよう、いろいろ仕込んでいるところじゃ。
弟子見習いではなく、養女見習いと言った処じゃの」
養女という言葉にざわつく、後ろの一団。
ほっほっほ、と老婆は笑う。
「ま、十二歳の儀までには、どちらも決定が出来るじゃろう。
ミアリスを戻したいなら、あれより上手く茶を淹れられる者を見つけてもらおうぞ」
だから余計な口を出すな、ともう一言釘を刺そうとしたが、
外から聞こえる騒ぎに、話は中断されることになった。




