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砂漠の織り手  作者: 葉月秋子


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「此度は御師様にご足労いただき、ありがたき幸せに存じます」


『運命の織り手』の巫女たちの集会所(ロングハウス)


 見事な胸飾りと複雑な幅広のターロ織りの帯を身に着けた、巫女の長『歌うツグミ』のシャリシャが、『磐座(いわくら)の老師』に向かって深く頭を下げる。

 後ろに控えるのは、上位巫女の一団。


 老師は差し出された茶を一口啜り、鷹揚に頷く。


(ふむ。最高の茶葉なのに、蒸らしが足りぬな。もったいない)




「やっとのことでお弟子候補の女児が内定いたしましたの。

 日をあらためて、族長からご挨拶を」


「ふむ。長く待ったのう。

 結局一族の内から候補を出すか。

 本人は納得しとるかの?」


「他の部族の女性が染め師になるなど、『磐座の守』トゥリアークの沽券にかかわりますわ」


「要は血筋ではなく、染め師の才だと何度も申しておろう。

 だからいつでも、長続きせんのじゃ。

 薬師の技と同じ、長く厳しい地味な修行の道じゃぞ」


「その道の果ての名誉を思えば、長い修行も当然の事。

 ご指定のように十二未満、頭もよく、機転がきき、手先も器用な女児でございます。

 この度こそは、ものになると信じておりますわ」


「ですから」と巫女の長は続ける。


「あの女児を、叔母の下に返してくださいませ」

 と、ミアリス排斥の言葉を続ける。




「その女児は、美味い茶を淹れられるかのう」


 老婆はゆったりと尋ねる。


「茶、でございますか?」


「あれを返したら、誰が儂の茶を淹れてくれるんじゃ?

 その有能な弟子候補かや?」


「・・・それは・・・慣れた下女をつけて・・・」


「下女つきの弟子など聞いたこともない。まっぴらごめんじゃわ」


 嘲るように老婆は言う。


「ミアリスは、弟子ではないぞ。

 老後の儂の世話が出来るよう、いろいろ仕込んでいるところじゃ。

 弟子見習いではなく、養女見習いと言った処じゃの」


 養女という言葉にざわつく、後ろの一団。

 ほっほっほ、と老婆は笑う。


「ま、十二歳の儀までには、どちらも決定が出来るじゃろう。

 ミアリスを戻したいなら、あれより上手く茶を淹れられる者を見つけてもらおうぞ」



 だから余計な口を出すな、ともう一言釘を刺そうとしたが、



 外から聞こえる騒ぎに、話は中断されることになった。




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