2-18
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「ターロ板!」
ミーアは叫んだ。
手が止まった男の子からポシェットをもぎ取り、あせって開く。が。
出て来た四角い小さな板は、見事にまっぷたつ。
「・・・あ・・・あ・・・」
「ふ、ふん、一族でもないのに、そんなもの持っていたのか。
やっぱり生意気な奴だ。
これに懲りて、もうここらに近づくんじゃないぞ、混ざりものめ。
今度やってきたら・・・ぐえっ!」
ぽんぽんとミーアが触れた部分を尊大に叩いていたガキ大将は、再び飛びかかったミーアの頭突きがもろに鳩尾に入って、息が止まった。
同時に入った膝裏の衝撃に、両足が中に浮き、しりもちをついて、尾てい骨をしたたかに打ちつける。
「ばかっ!ばかっ!あやまれ!あやまれっ!」
馬乗りになって年上の男の子をポカポカ叩くミーアは怒りで頭が真っ白。
大事なターロ板を!
大事な女の財産って言われた、たった一つのミーアのターロ板を!
どうしてくれる、このやろーっ!
「ちょっ・・・やめっ・・・このチビッ・・・」
たかが五歳の子供のあまりの迫力と尻の痛みに、男の子は反撃も出来ず、小さな拳を防ぐばかり。
「巫女の集会所」の垂れ幕があがり、何人かの女たちが飛び出して来る。
遠くで誰か叫んでいる。
だが、まず現場に駆け付けた誰かが、ミーアの脇の下に手を入れて、暴れる小さな身体を持ちあげ、二人を引き離した。
これじゃ届かない、とミーアは両手をばたばたさせる。
「はなせっ!あっちが悪いんだ!あやまれっ!」
「こら、やめろ。
女が拳で戦うものではない」
後ろから聞こえた声がますますミーアの怒りに油を注ぐ。
何が女だ!差別だーっ!
大っ嫌いだ、こんな世界ッ!
そんな思いが吹き上げて、どっと涙が溢れ出す。
拘束から逃れようと思い切り頭をそらせると、ごちん、と柔らかいものにぶつかった。
「ぐっ!」
と、後ろで誰かが声を上げた。




