2-16
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ばば様、まーだかなー。
「巫女の集会所」の前の、駒つなぎ場の踏み石に腰かけ、ミーアは待っている。
頭を上げて、卑屈にならずに。
遠くで何かささやいてる女性の集団は無視だ。
私は、「磐座のばば様」のお手伝いに来てるんだから。
しかし、しばらくすると集会所の戸口にかかっている垂れ幕に、眼が釘付けになる。
風に揺れる薄手の生地に施された見事な刺繍。
デフォルメされたトーテムのいろいろな動植物が絡まり合って、まるで踊っているよう。
生態をよく知る者の適格な表現。大胆な色使い。
木造の柱にも横木にも、精緻な彫刻が施されている。
凄いなぁ。
上手だなぁ。
私もあんなのが、つくりたいなぁ。
大きな樹の横に立つ熊。その後ろでは狐が跳ねて、花綱と小鳥が全体を結んで・・・
夢中になって意匠を追うミーアは、誰かが話しかけてきているのに気が付かなかった。
いきなり、どん、と後ろから肩を小突かれる。
「俺を無視するのかおいっ!
ここはお前なんかが来て良いところじゃない!
さっさと立ち去れ!」




