2-11
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ある日、ばば様は、茶の椀を二つ並べ、ミーアに聞いた。
「どうじゃ、この二つの茶の違いが判るかの」
口をつけたミーアは考え込んだ。
初めて飲んだ時はよくわからなかったが、ばば様に教えられて数カ月。
おいしいお茶を淹れて喜んでもらおうと、頑張って来たのだ。
「うーん、こっちのお茶のほうが・・・おいしい?」
五歳ちょっとでは、形容する言葉をまだ知らない。
「それが、儂の摘んだ茶のほうじゃ。
雑味がないとか、すっきりするとか言うわな」
こちらが儂の摘んだ葉。こちらがそなたの摘んだ葉。
と、ばば様は二つの葉を並べて見せる。
先っぽの二枚だけを摘んで軽く干した、同じような葉。
「違いが、判るかの?」
「・・・うー・・・ん・・・」
乾燥して縮れた葉っぱは全く同じようだ。
(ま、この歳では舌も肥えておらぬし。観察眼もまだまだ・・・)
と、半ばあきらめかかっていたばば様は、
「・・・切り口の、色がちょっと違う?」
と言ったミーアにびっくりしたのだった。
「ほう。よく見分けたの。
葉を摘むという事は、樹に傷をつけるということ。
樹は傷を治そうと、普段と違う成分を出す。
すると、味が変わってしまうんじゃ」
だから雑味が出てしまう、と、ばば様は言う。
「金属の鋏なんぞを使うのはもってのほかじゃ。
この手で優しく摘み取ってな。
傷を小さくして、閉じてやるのさ。
ちょこっと魔力を渡してな」
「魔力を?」




