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砂漠の織り手  作者: 葉月秋子


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「だからちょこっと魔力を渡して、傷を閉じてやるのさ」

「魔力を?」


「ターロを織る時に魔力をまとわせて織っとるじゃろう?

 あんな感じで、ちょこっと魔力を渡して癒してやるのさ。

 傷がついたのに樹が気付かぬ程度にな。

 すると雑味の無い、美味い茶を摘むことが出来る。

 だが魔力を渡しすぎると樹は喜んで、また別の物を出しちまう。

 だから傷口を塞ぐ分だけ、ほんの少しじゃ。加減が難しいぞ」

 

 織りに編み込むだけじゃなく、生きてる樹に魔力を渡せるなんて、初めて知った。



「しかし、野菜の場合はのう、雑味がうま味になることもある。

『アクも味(み)のうち』というてな。

 こっくりした煮込みの雑味を取りすぎると、さっぱりしすぎて旨くないのじゃ。

 ま、経験を積んで、舌を肥やしていくしかないのう。

 この加減がわかれば、美味い茶が淹れられるようになるぞ」


 そうかあ。

 魔力って、おもしろいなぁ。

 よし、これから特訓だ。

 ばば様のお好みの、おいしいお茶をいれるためにがんばるぞ。

 



 美味い茶が飲みたかったばば様が、ちょっと『試し』にミーアに教えた事。

 磐座の婆にとっては、茶を飲み、食事を作り、糸を染める、ごく当たり前の、日々の技。




 だが、それは、茶の葉だけでなく、染め草も、薬草も、植物の本体とその成分を損なう事なく、完璧な採取ができるようになる、という事だった。

 それが世の中の薬師たちが羨望して止まぬ秘儀であり、稀有な体験であったことをミーアが知るのは、ずっと後の事になる。


 


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