2-12
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「だからちょこっと魔力を渡して、傷を閉じてやるのさ」
「魔力を?」
「ターロを織る時に魔力をまとわせて織っとるじゃろう?
あんな感じで、ちょこっと魔力を渡して癒してやるのさ。
傷がついたのに樹が気付かぬ程度にな。
すると雑味の無い、美味い茶を摘むことが出来る。
だが魔力を渡しすぎると樹は喜んで、また別の物を出しちまう。
だから傷口を塞ぐ分だけ、ほんの少しじゃ。加減が難しいぞ」
織りに編み込むだけじゃなく、生きてる樹に魔力を渡せるなんて、初めて知った。
「しかし、野菜の場合はのう、雑味がうま味になることもある。
『アクも味のうち』というてな。
こっくりした煮込みの雑味を取りすぎると、さっぱりしすぎて旨くないのじゃ。
ま、経験を積んで、舌を肥やしていくしかないのう。
この加減がわかれば、美味い茶が淹れられるようになるぞ」
そうかあ。
魔力って、おもしろいなぁ。
よし、これから特訓だ。
ばば様のお好みの、おいしいお茶をいれるためにがんばるぞ。
美味い茶が飲みたかったばば様が、ちょっと『試し』にミーアに教えた事。
磐座の婆にとっては、茶を飲み、食事を作り、糸を染める、ごく当たり前の、日々の技。
だが、それは、茶の葉だけでなく、染め草も、薬草も、植物の本体とその成分を損なう事なく、完璧な採取ができるようになる、という事だった。
それが世の中の薬師たちが羨望して止まぬ秘儀であり、稀有な体験であったことをミーアが知るのは、ずっと後の事になる。




