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これでも勇者ですが、何か?  作者: 『螺旋 螺子』
彼が勇者ですか? 「本当なのか、ただただ怪しいな(ファーリ談)」
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歓喜の処刑

 歓声。

 今、目の前の景色を一言で表すのならば、その漢字が良く似合う。


 処刑を娯楽の一つとしているのは、いかがなものだろう?

 だが、江戸時代までは処刑なんてものは見せしめであり、娯楽でもあったことだろう。

 刎ねた首を何日も町の真ん中で晒す。そして、通行人は悪人が滅んだ事に喜ぶことだろう。


「ハハハ……」


 処刑を笑えない人間は現代を生きた人間だからだろうか。

 血を見ずに過ごし、何の不自由も無く生き続けた結果か。


「さっさと歩け!」


 ドンッと衛兵に背中を押される。断頭台には、処刑人が堂々と居座っている。

 目を細めて階段の数を数えてみる。


「13段ですか」


 なんの冗談だ。


「そこに座れ」


 命令されるがままに、座り込む。すると両サイドから鎖が引っ張られ、両手を拘束される。

 視界を下げると、町の人が歓声を再び上げた。その向こうまで見える。


「……」


 目を細める。


「すみません。魔法が使えないんですが」

「……アンタ、こんな所で良くそんな事が言えるな」

「あ、いや……まぁ、冥土の土産的な?」


 俺の惚けた顔に、処刑執行人がやや戸惑った言葉を漏らす。


「いや、まぁそれが冥土の土産と言うならばいいんだが。その両手を縛る鎖があるだろ」

「ええ。コレですね」


 ジャリッと音が鳴る。


「これは『破魔石』で出来ているんだ」


 破魔石。あぁ、ニードラゴンと同じ属性を持っているのか。


「レアメタルなんですか?」

「あぁ。希少価値の高い代物だな。だが、聖域サンクチュアリを展開するよりはコストが安く済む」

「へぇ。強度はどの程度なんですか?」

「言っておくが素手で割れる程軟な出来じゃないぞ。そうだな、一般的な強度で言うと鋼の剣よりは上だな」

「なるほど」


 執行人が怪しい目で見てくる。


「なぁ、アンタ。なにか逃げる方法でもあるんじゃないのか? どうしてそんなに怯えていないんだ」

「さぁて、なぜでしょう?」

「するなら早めに実行することをオススメするぞ。あの貴族様は直ぐに執行したがるからな」

「えらく罪人の肩を持つんですね」

「まぁ、誤認なんて良くある話さ。だがそれを通せるだけの力をあの貴族様は持っているからな。俺が出来ることといえば、処刑される時に一瞬で安らかに出来る事ぐらいさ」

「……」

「言っておくが、逃げる方法が無いなら大人しく受け入れろよ。下手に外すと痛いぞ」

「ご忠告、痛み入ります」

「あと――」

「んんん!」


 ラドルが咳払いをして執行人を制する。

 慌てて一礼すると、斧を持ち直した。


「罪人を窃盗罪にて――」

「せめて名前ぐらい言いましょうよ」


 ラドルは眉を一瞬吊り上げたが、無視する。


「我が名ラドル=レモンティーの名において――」

「待て!!」


 今度は地上から制止の声が聞こえた。

 二度も言葉を遮られた為に、逆ギレ気味にラドルが怒鳴る。


「誰だ! 今、ワシの言葉を遮った者は!」

「私だ!」


 群がる群衆をかき分けながら、馬車を連れた一団が断頭台の真下に来る。


「名を名乗れぃ!」

「私の名はロミニカ=アレクサンドリー。後ろはその仲間だ」

「なに用だ!」

「貴殿の保持していたと思われるドラゴンキラーを所持した馬車と盗賊の一味を捕縛した。その者は無実だ。即刻無罪放免せよ!」


 なんとか首を繋げることが出来たな。


「なぁ。どこまで予想していたんだ?」


 隣で天空と地上で問答をしている隙を見て、執行人が聞いてくる。


「向こうから一団がこちらに走ってきているのが見えました。それが僕の処刑に関係するかもしれない、と予想したんです」

「見事当たりって訳だ」

「ええ」

「つまり、破魔石の会話はその時間稼ぎだったって訳か」

「まさか」


 隣で決着が付いたらしい。


「ただの知的好奇心ですよ」


 笑顔を向けた。それに執行人は笑顔で答えた。



 背後で降りるぞ!、と怒声が聞こえてきた。



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