はじめまして。
そういえば名前しか聞いていなかったな。お互いを知る為にも、ちゃんとした自己紹介をするべきだよな。
そういえば、他の事に頭を使っていて、自己紹介すら出来ていなかったよな……。
「自己紹介をし直そうかな?」
「そういえば、ちゃんと出来ていなかった気がする」
「なんだか順序がおかしい気がするけど。取りあえず、はじめまして。僕の名前は天羽 此方。とりあえず我流の魔法が使えたりします」
「アモウ コナタ殿か。不思議な名前だな」
「こっちに来てからは良く言われますね」
「こっち?」
あ、やっべ!?
「アリジリーナに来てからって意味です」
「成る程。コナタ殿の故郷では不思議な名前を付けるのですか」
うん、まぁ。故郷と呼ぶなら間違ってないな。
「私はクレア=アンティクリス。故郷はアリジリーナから北にあるコリナール。獲物は剣だ。魔法は……あまり得意ではない」
少し俯き気味に言う。感情の上げ下げが激しいなぁ。
クレアの装備を見る。見たこともない装備だが、かなり年季が入っているようだ。所々、損傷の後がある。が、相当丁寧に扱っていたのだろうか、綺麗だ。
武器の剣は、アリジリーナ宮殿にいた兵士と同じ物だ。つまり、そこそこの強度を持ち、量産性に長けているのだろう。かわりに切れ味は低いだろうな。
「コナタ殿は武器を持っていないんですか?」
「ん? あぁ、一応魔法が使えるしね」
「魔法ですか……」
あぁ、なんだかまた落ち込まれそうな予感!
「とにかく、一文無し同然なんだから、モンスターを倒してお金を集めないと!」
「モンスターからお金を集めるのか?」
「え?」
「だから、モンスターがお金を落とすんですか、と聞いているんだが」
冷や汗が垂れる。
モンスターがお金を落とさないだと!? なんて不便な世界なんだ!
「お金を集めるなら、モンスターの素材とか、モンスターが落とした物を売ればお金になるんだぞ」
それが同然のように言われても困る。そもそも俺は商人の養子に入ったんだ。商いの心得があっても、モンスターとの戦闘法はほとんど知らない。
「分かった。それじゃ、僕は薬草でも探します。モンスターの方をお願いできますか?」
「あぁ。構わない」
ジャキンッ、と音を立てて剣を引き抜く。その動きだけでも、クレアが今まで沢山の修練を越えてきたかが伺えた。それ程磨き上げられた抜刀だった。
「薬草、お願いします」
「えぇ。任せておいて下さい」
これでもそこらの人には分からない程の薬草も見分ける事が出来るからな。
少し昔を思い出しながら、近くに生える雑草を探し始めた。
2013/09/04 細かな表現を修正しました。
2013/09/08 題名を変更
2013/09/20 文字の表現を修正しました。