第2話 「裏切りと崩壊」
多数の犯罪を犯し、警察から追われていた謎の青年・Wは、アメリカ全体をしきっているマフィア組織(WMC)と関わりのある男・ローズに拾われる。ローズと過ごしていく中で、Wは組織の荷物を運ぶ仕事を命じられ遂行していくようになる。危ない橋を渡っていることは承知の上だったが、Wは生まれて初めて誰かから自分が必要にされているんだと感じていた。
Wが運び屋の仕事を始めて数ヶ月が経った。
Wは組織の中でも信頼される存在になっていた。
危険な区域への配達。
敵対組織の監視をかいくぐる輸送。
警察の検問突破。
若いながらも成功率は高かった。
その日も大仕事だった。
「今回の報酬は5万ドルだそうだ。」
ローズが言う。
「成功したら半分はお前の取り分だ。」
Wは思わず笑った。
2万5000ドル。
スラム街の人間からすれば人生を変えられる金額だった。
⸻
結論から言うと、、、
仕事は成功した。
銃撃戦もなく。
警察にも見つからない。
完璧だった。
Wは報酬を受け取るためローズのアパートへ向かう。
なぜなら組織との窓口はローズだったからだ。
ドアを開ける。
ローズはテレビを見ていた。
「、、、仕事、終わった。騒ぎも戦闘も何もなく無事にな。」
「そうか。」
「金は?」
ローズは煙草を吸いながら言った。
「お前の取り分は500ドルだ。」
まるで時間が止まったかのようだった。
Wは固まった。
「……は?」
思わず言葉が漏れていた
「組織の取り分だ。色々引かれた。」
嘘である。そんなことはこれまで一度もなかったからだ。さすがのWも気づいていた。
「嘘つけ。」
空気が変わった。
するとローズは急に笑いだした。
その笑顔は初めて見るものだった。
「やっと気付いたか。」
⸻
Wは机を叩く。
「最初から俺を利用してたのか?あんたの生活援助のためによぉ」
「利用?援助だぁ?」
ローズは鼻で笑う。
「俺がお前を拾わなきゃ今頃刑務所だったろ。」
「だからって…!」
「恩返しだと思え。」
Wの拳が震える。
「金だけじゃない、、、」
「え?」
ローズは聞き返した。
「金だけじゃなかった。、、初めてだったんだ。誰かに必要とされてるって感じたの、、」
「だから、今まで仕事を頑張ってこれたのに、、、お前は、、、」
少しの沈黙の後、ローズは口を開いた。
「言ったよな。何も知らないふりをして淡々と仕事をしてるだけでいいって」
Wは無言になってしまった。
そんなWに無慈悲な言葉を突きつけようとしていたローズ。
「お前、マフィア向いてねぇよ笑」
⸻
世界が止まったように感じた。
雨の日。
家に入れてくれた男。
食事をくれた男。
父親のように思っていた男。
その全てが計算だった。
Wは掴みかかろうとする。
しかし。
カチャ。
拳銃。
ローズが銃口を向けていた。
「この家から出ていきな」
「……。」
「お前は便利だったよ。」
⸻
その瞬間。
Wの中で何かが切れた。
怒りだった。
悲しみだった。
それとも絶望だったのか。
自分でも分からない。
ただ一つだけ分かる。
許せない。
⸻
アパートを出る。
雨が降っていた。
またあの日と同じ雨だった。
だが今のWは逃げる少年ではない。
雨の中で静かに呟く。
「ローズ..」
雨が激しくなっていく
その声には感情がなかった。
「全部奪い返す。」
⸻
数日が経ったある日
雨が降っていた。
静かな雨だった。
人気のない工業地帯。
壊れた倉庫の裏で、Wは泥だらけになりながら穴を掘っていた。
ー数時間前
俺はローズの経歴など調べまくっていた。
あいつの女性関係とか、特にな。
元カノを装って工場に呼び寄せた。
そしてローズとの決着は終わった。
怒鳴り声もなかった。
派手な銃撃戦もなかった。
ただ長年積もった憎しみが爆発し、二人は争い、そして最後にはローズは動かなくなった。
Wは震える手を見つめる。
「終わったんだ…」
そう思いたかった。
だが心は少しも軽くならない。
雨だけが降り続いていた。
⸻
穴を埋め終えようとした、その時。
ザッ――
背後で靴が水たまりを踏む音。
Wの全身が硬直した。
誰もいないはずだった。
ゆっくり振り返る。
そこに立っていたのは黒いコートを着た男だった。
長身。
鋭い目。
濡れた髪をかき上げながら煙草をくわえている。
Wは顔を知っていた。
WMC最高幹部。
組織内でも恐れられている男。
名前はロイゼ・クライシスだ。




