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黄金の双剣士  作者: ひろよし
四章:王宮にて
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第83話:王様との晩餐

「そろそろお食事の時間ですが、どうされます?」

「そうね、折角だからみんなで頂きましょう。

 フィルもいい?」

「構わない」


時間もだいぶ経過し、気が付けば夕食の時間となっていた。

宮廷魔術士長とは言えそうそう王族と食卓を共にする事は無い。

王族は王族で、フィルニイリスは魔術士団の団員と、あるいは与えられた個室で食事を取るのが常だが、本日は特別。


「当然レキ君も一緒よ?」

「へっ?」


王族たるフランの、いや、もはやフロイオニア王国の恩人であるレキを迎えての食事。

共に旅をしたフィルニイリスにも参加してもらい、レキを中心に旅の話を聞きながら食事をとるつもりなのだ。


「ミリスはどうする?」

「流石にミリス様は難しいと思いますよ?

 騎士団の皆様も離さないでしょうし」


急な提案という事も有り、騎士団の皆と一緒であろうミリスは不参加となった。

もっと早く伝えておけば参加も叶っただろう。

王妃の提案という事もそうだが、何より一緒に旅をした仲間なのだから。


もちろん王族として命令すれば嫌でも参加するだろうが、それは王妃として行いたくなかった。

ミリスには申し訳ないと思いつつ、レキ達は仲良く王族専用の食事の間へと向かった。


「失礼致します。

 王妃様、並びにフラン様をお連れいたしました」

「うむ、入れ」


フラン専属の侍女であるリーニャの案内で、レキ達は食事の間へと入る。

食事の間には、国王ロランが既に着席していた。


「それと、王妃様のご提案によりフィルニイリス様、そしてレキ様もお連れいたしましたがよろしかったでしょうか?」

「ほう。

 折角だ、道中の話をゆっくり聞かせてもらおうではないか」

「はい」


ロランの許可を得たリーニャがレキとフィルニイリスを食事の間へと誘う。

フィルニイリスは平然と、レキは食事の間にも興味があるようで、部屋中をキョロキョロと見渡していた。


「レキ君の席はフラン様の隣ですね」

「うむ、ここじゃ」

「うん」


リーニャに促され、レキがフランの隣に座る。


「いきなりで申し訳ありません、陛下。

 是非ともレキ君とお話したかったもので」

「ははっ、構わん。

 レキ殿と話をしたかったのは私もだ。

 むしろ手間が省けたというものだ」


仲の良いレキとフランを横目に、王妃であるフィーリアが国王ロランに謝罪した。

王妃であろうとも、国王に無断で勝手な行動は許されない。

王国で一番偉いのはあくまで国王。

王妃はその伴侶であり、権力はそれほど与えられていない。


もっとも、今回の行動に関してはそれほど問題があるわけではない。

レキは王族であるフランの命の恩人であり、更には先ほどの御前試合を経てロラン自らが庇護下に入れた少年である。

そんなレキと食事をするという行為は、友好を深めるのにちょうど良かった。


「レキの狩ってきた魔物も美味かったが、城の食事も負けてはおらぬぞ。

 レキよ、覚悟するが良いのじゃ」

「なんの覚悟?」

「ほっぺが落ちる覚悟じゃ」


そんな国王や王妃をよそに、何時にもましてご機嫌なフランが王宮の食事について自慢し始めた。

別段フランが作った訳ではなく、食材もフランが用意した訳ではないが、いつも自分が食べている食事をレキにも食べて欲しいのだ。

同年代の子供と食事を共にする機会の少ないフランである。

友人であるレキとの食事は、それだけで楽しいのだ。


五人がそれぞれ席に付き、給仕が食事を運び始めた。


「あれっ、リーニャは座んないの?」

「はい、侍女ですから」

「?」


道中はリーニャも一緒に食事をしていた為、レキはそれが当たり前だと思っていた。

だが、侍女であるリーニャが王族と一緒に食事をする事は本来ならありえない。

魔の森から王都までが特殊だっただけで、侍女は王族の食事の世話をする為に同席するのである。


魔の森を出てから王都までは一応身分を隠し、フランとリーニャは姉妹という設定だった為に食事を共にしていたが、それも終わった。

これからは王族であるフランとその侍女という立場に戻る。


そう、旅は終わったのだ。


王宮に戻ってきた以上それが当たり前で、知らぬのはレキだけ。


「むぅ、今日くらい一緒に食べれば良いのにのう・・・」

「ダメですよフラン様。

 旅の間だけという約束でしたでしょ?

 けじめは付けませんと」

「私も今日くらいはと思うのですけど」

「なりません王妃様。

 他の者に示しがつきませんから」

「ふむ、それでこそリーニャだ」


一緒に食事するのが嫌な訳ではない。

フランは当然、王妃であるフィーリアもフランの世話を含めてリーニャには感謝しており、むしろ同席して欲しいくらいだ。

他ならぬリーニャ自身がそれを良しとしない為、なかなか実現しないのだが。


「しめし?」

「私以外にも侍女はたくさんいますからね。

 私だけ特別扱いは良くないのですよ」

「ふ~ん」


フラン付きの侍女であり、王妃であるフィーリアの覚えも良いリーニャはある意味特別な存在だが、それに甘えるわけにはいかないとリーニャ自身が己を律している。

そんなリーニャだからこそフラン付きの侍女に選ばれ、国王ロランからの評価も高いのだ。


リーニャの言う事を理解したわけではないが、リーニャがそう言うのだからとレキも納得した。

リーニャのいう事には間違いないと、全幅の信頼を寄せているのである。


レキの信頼度はリーニャが一位で次点がミリス。

フランは友達だが信頼という意味で普通であり、フィルニイリスは頼りにはなるが魔術関連で暴走しがちなので信頼度は若干低い。

と言っても今上げた四人は基本的に信頼しており、彼女達の言う事なら大抵の事は信じてしまうだろう。

嘘をついていたとしても、それは必要な嘘だと無条件で許してしまう程度には信頼しているのだ。


「今回はフランの無事を祝う食事であり、フランを助けてくれた恩人を歓迎する食事でもある。

 リーニャと食事を共にするのはまたの機会だな」

「姫はともかくレキならいつでもリーニャと食事できる。

 その時は私も一緒」

「にゃ!

 フィルだけずるい。

 その時はわらわも絶対呼ぶのじゃぞ」

「姫は王族だからダメ」

「にゃ~!」


ロランが仕切り直し、フィルニイリスが余計な事を言ってフランを焚き付けながら、夕食は賑やかに始まった。


「本来ならば宴でも開かねばならんのだがな。

 流石に間に合わんのだ。

 とりあえず本日のところは我慢してもらおう」


王族と限られた者のみの食事ではあるものの、並べられた豪勢な料理にレキが目を輝かせる。

魔の森では魔物の肉をただ焼いた物と、そこらに生えている野草や小屋の裏手の野菜という名の毒草がレキの食事だった。

料理とは言えないものではあったが、魔素の影響の為か素材が上等な事もあり、何より食べられるだけで十分だった。


エラスの街で食べた食事は、レキにとって実に三年ぶりとなるまともな料理だった。

辺境の街にある一般的な食堂の料理。

フラン達からすれば質素と言えるものだったが、レキからすれば十分豪勢だったのだ。

そもそもがちゃんと調理された、料理と呼べるものを食べるのが三年ぶり。

大変感激し、それ以降街での食事はレキの楽しみの一つとなっていた。


だが、今目の前に並べられた料理は、そんな街の料理とは一線を画している。


瑞々しい色とりどりの野菜を使い、調味料等でしっかり味付けされた豪華なサラダ。

長時間煮込まれ、具材が一体となったスープ。

街では見る事が稀な白いパン。

様々な香辛料で丁寧に味付けされ、絶妙な火加減で焼かれた肉。


それらがレキの前にドンと並べられ、レキに食べられるのを今か今かと待っている。


「うわぁ~」


並べられた料理を、レキが涎を垂らさんばかりに見つめる。

その様子は、まさに餌を目の前にして待てと命令された動物のようだ。

もちろんレキは動物ではない為、命令されるまでもなくちゃんと食べて良いと言われるまで待つつもりである。

今も行儀よく両手を膝の上に乗せ、「いただきます」の合図が聞こえるまで耐えている。

若干手に力が入っているように見えるのは、おそらく気の所為だろう。


「ふむ、一先ずは満足頂けそうかな?」

「わらわはレキの作る料理の方が好きじゃぞ」

「あらあら、そんなことを言っては料理長が悲しみますよ?

 折角フランの為に腕を奮ったと言うのに」


普段からフランは実に美味しそうに食事を取るのだという。

そんなフランの様子を伝えられ、王宮の料理人達は毎日その腕を存分に振るっている。

料理に妥協するつもりはないが、美味しそうに食べるフランになら振るいがいも出るというものだ。


そんなフランとの食事は、国王や王妃も毎日楽しみにしている。


ここ数十日の、フランのいない食事のなんと味気ないものか。

それはまるで、生きる為にただ栄養を取っているようなもの。

今日の食事は、ようやく戻ってきた楽しいいつもの食事だった。


そんな者達の心情など露知らず、フランは道中レキが用意してくれた食事の美味しさや楽しさを語り始めた。

目の前で捌かれるが故に毒味の必要がない焼きたての肉。

森を出てすぐは調味料すら無い状態ではあったが、それが逆に新鮮であり、何より肉その物の味がして美味しかったのだと言う。

最初の街で調味料を購入してからは、リーニャが味付けをする事で更に満足のいく食事となった。

お城の料理は料理で美味しいが、たまにはそういう食事も良いとフランは言う。

そこに嘘偽りはなく、つまりはどちらも美味しいと言うことだ。


フランがいろいろと手伝った事も、移動やらなんやらで疲れていたという事もあるのだろう。

何より、普段は同席することのないリーニャ達と、新たな友人であるレキと共にする食事。

それこそがフランにとって一番の贅沢だったのかも知れない。


「それでな、レキがまたどこからともなく」

「姫、話はそこまで。

 レキが空腹で倒れそう」

「にゃ!」


おそらくはフランも、久しぶりの両親との食事が楽しいのだろう。

知らず知らず饒舌となるフランだったが、フィルニイリスの言葉に慌ててレキを見た。

お隣のレキは、先程からじっと何かを耐えるようにただ座っている。

若干前のめりな姿勢と、先程よりも強く握りしめられた手は何かを物語るようであり、何より料理からフランに向けられたジトッとした目はまさに口程に何かを語っていた。


「レ、レキ?」

「お腹・・・空いた」

「にゃ!

 す、すまんのじゃ!」

「・・・うん」


コレが忠誠心の高い動物であれば、それでも黙って耐えたのだろう。

だが、残念ながらレキは忠誠心の高い動物ではなくフランの友達にして恩人である。

目の前に並べられた料理は、そんなレキを持て成す為に用意された料理。

今まで見た事のない豪勢な料理を目の前にして、王宮に着いていきなり模擬戦をさせられて空腹の絶頂にいたレキは、実に良く耐えていたのだが・・・そろそろ限界だった。

耳を澄まさずとも聞こえてくる腹の音は項垂れている少年から。

涎と共に不満の声が口からも漏れ出し、フランを見るその目はどこか悲しそうでも恨めしそうでもある。


お預けを食らった動物がそこにはいた。


そんなレキを見てようやく己の失態を悟ったのか、先程までは喜々として語っていたフランが今度は必死になってレキに謝罪を始めた。

だが、レキが欲しいのは残念ながら謝罪の言葉ではない。

そこに気づかずフランはなおもしゃべり続ける。


「わらわとて何も食べさせたくないわけではないぞ。

 でもな、レキと共に食べた料理があまりにもじゃな!」

「フラン、レキ君への謝罪はそこまで」

「にゃ!

 で、でも母上」

「謝りたい気持ちは分かりますが、そうしてフランが話せば話すほどレキ君のお腹が」

「にゃ!

 レキ!?」

「・・・う~・・・」


母親に諭され横を見れば、そこにはいよいよ限界が近いのか、言葉もなく唸るレキがいた。


「レ、レキ・・・?」

「・・・」

「にゃ~!

 す、すまんのじゃ!

 す、すぐ食事にするのじゃ。

 父上!母上!良いか!?」

「良いも何も待たせたのはフランだろう?」

「そうですよ、可哀想なレキ君」

「にゃ!

 フィ、フィル」

「意地悪な姫は放っておいて、明日からは私と一緒に食事をしよう。

 私とならこんなに待たされずに食事にありつける」

「にゃにゃ!

 リ、リーニャ?」

「ふふっ、なんでしたら明日からは王宮の侍女達と一緒に食べましょうか?

 女性ばかりですがそれも楽しいかも知れませんよ?」

「・・・うにゃ~」


とうとうフランを見る事すらしなくなったレキである。

それでも顔を覗き込んでみれば、返ってくるのは無言の抗議。

何も言わずともその表情がすべてを語っていた。

そんなレキにフランが慌てて食事を始めようと両親に確認を取れば、二人はフランが悪いと切り捨てた。

フィルニイリスはおろか頼みのリーニャですら、フランを助けるどころか除け者にしようとする始末である。


本気でフランをないがしろにするつもりは無いが、これもまた久しぶりの親子の会話なのだろう。

悪乗りするリーニャやフィルニイリスも楽し気だ。


「さて、いい加減食事にしようか。

 フランもいつまでも落ち込んでないで、ほらお祈りをするぞ」

「にゃ~・・・」


フランがしっかりと反省したのを見計らい、ロランが食事を促す。

凹みつつも食前のお祈りは欠かさないのか、フランもしっかりと祈りを捧げようと顔を上げた。


「・・・おいのり?」


と、同じく食事の言葉に反応して顔を上げたレキが、聞きなれない言葉に反応した。


「ん?

 ああ、レキ殿は食前の祈りはしたことないか?

 まぁこれは王侯貴族の間でのみ行われるものだしな」

「私達も王宮での食事の時くらいしかしませんしね。

 レキ君が知らないのも無理はありませんよ」

「道中は身分を隠す必要があった為祈りは捧げなかった」


聞きなれない単語に首を傾げたレキに対し、ロランとフィーリア、そしてフィルニイリスが応えた。


「祈りの意味を説明しても良いが、まずは食事にしよう。

 いい加減レキ殿は限界だろうからな」

「うん」

「お祈りに関しては私達の真似をしてくれれば良いから。

 祈りの言葉も言う必要は無いし」

「祈りは感謝。

 心のなかで感謝をすればそれが祈りになる」

「うん」


説明を受ける余裕、いや聞く余裕のないレキを見て、ロランが食前の祈りを始める。

フィーリアやフィルニイリスも頷き、皆黙って両手を組み目を閉じた。


「我らが母、偉大なる創世神よ、我らが友、大いなる精霊よ、あなた方よりもたらされし大地の恵みに感謝し、この食事を我らが生きる糧といたします。

 用意された食物に、産み育てた大地に、調達し調理した者たちに感謝を捧げ、今宵我らが生きる糧を得ることに感謝を捧げます。

 全てのものに感謝を」

「「「感謝を」」」

「・・・」


ロランが祈りの言葉を紬ぎ、フィーリアとフィルニイリス、フランが感謝を捧げる。

その横では、良く分からないままにレキが、とりあえず皆の真似をしながら心のなかで「ありがとうございます」と感謝した。

途中、創世神やら精霊やら気になる単語が出てきたのだが、限界に近いレキの頭には届いていない。

目は料理に、鼻はその臭いに、口の中は涎で、頭の中も料理で一杯のレキの耳は、「食べてよし」以外受け付けていないのだ。


「良し、それでは食事にしよう。

 レキ殿も遠慮なく食べてくれ」

「うん!」

「ちなみに、おかわりもたくさん用意してあります。

 ですから遠慮なく申し付けてくださいね、レキ君」

「うん!!」


待ちに待った「食べてよし」に、レキが目の前の料理を食べ始めた。

それは「食らいついた」と表現して良いくらいの勢いだった。

幸いにして母親からちゃんと躾を受けてるレキは最低限のマナーは守っている為、掻っ込んでいるようでもそれほど下品ではない。

それでも食べる速度は相当なもので、リーニャの言ったおかわりの言葉に頷くと同時に、空になったスープ皿をリーニャに差し出していた。


「「・・・」」

「にゃ!

 わらわも負けておれん!」

「リーニャ、この肉はなんの肉?」

「それはオーク肉ですね。

 残念ながらレキ君に頂いた肉より数段劣りますが」

「味付けで勝ってる」

「ふふっ、料理長に伝えておきます」


黙々と、だが凄まじい勢いで食べるレキに、ロランとフィーリアが呆気に取られていた。

一方、レキの大食漢ぶりを知る者達はと言えば、フランはレキに相変わらず対抗意識を燃やし、フィルニイリスは我関せずと食事を始める。

レキのおかわりを用意しながらフィルニイリスの質問に答えるリーニャも慣れた風だ。


「おかわりっ!」

「わらわもっ!」

「はい」


レキがスープに続いてサラダと肉料理をおかわりすれば、フランも負けじとスープの皿を差し出す。

サラダをおかわりしない辺り、フランの好き嫌いが見てとれた。


「調味料は偉大。

 でも魔の森のオークは十分美味だった。

 今度はあの肉を調理して・・・」

「フィルニイリス様はいかが致します?」

「サラダを」

「はい」

「おかわりっ!」

「にゃ!

 わ、わらわもっ!」

「はいはい。

 それとフラン様はサラダも食べないとダメですよ?」

「うにゃ!?」


まんべんなくおかわりをするレキに対抗すべく、比較的量の少ないスープでフランは対抗する。

何を勝負しているのか不明だが、負けられない何かがあるらしい。

そんなフランを窘めつつ、レキのおかわりに応じるリーニャは流石だ。


「・・・よっぽどお腹が空いていたのね」

「そういう問題か?」


その様子を、若干引きつった様子のロランと、笑顔のフィーリアが見守っていた。


道中の話をレキも交えて語ってもらおうと考えていた二人だが、レキの食いっぷりに声をかける事が躊躇われてしまった。

同時に、ほっといても喋るだろうと思われていたフランもまた、そんなレキに対抗せんと食事に集中しており、話すどころではなさそうだ。

フィルニイリスは初めから我関せずとマイペースで食事を進めるし、侍女である以上リーニャに会話を振るわけにもいかない。


どうしてこうなったとロランは思う。

だが、レキの空腹の原因は王宮についていきなり試合をさせたロランにもある為、ロランに何かを言う資格は無い。

一国の王や王族との食事であるにもかかわらず、そんな王族を無視してひたすら食べ続けるレキは間違いなく無礼だが、まだ子供のレキにそんなこと言っても仕方ないだろう。

何よりレキはフランの恩人であり、今回の食事のゲストでもあるわけで、こうなればレキが落ち着くまでそっとしておくしか無いようだ。


「おかわりっ!」

「わ、わらわは・・・」

「あまり食べ過ぎるとお腹を壊しますよ?

 レキ君と違ってフラン様は本日あまり動いていませんから」

「にゃ~・・・」


そんなロランをよそにレキの食事はなおも勢いを増し、ついにはフランが追いつけずに離脱した。

と言っても、肉料理を中心に満遍なく絶え間なく食べ続けるレキと、苦手なサラダをスープや水で流し込みつつ、合間に肉料理をつまむフランとでは、量といい速度といい初めから勝負になどなっていない。

そもそも勝負すらしていないのだが、そこは子供の良く分からない意地があった。


「ワインおかわり」

「私もお願いね」

「はい」


そんな二人を微笑ましく見守るフィルニイリスとフィーリア。

ロランと違いフィーリアは早くもレキの食事ぶりに慣れたようで、ゆっくりとマイペースで食事を始めていた。


先日までフランの事が心配で食事が喉を通らなかったフィーリアである。

レキに負けた(?)らしく不満げな顔をするフランを見ながら、久しぶりの楽しい食事を満喫していた。

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