この世界は本当にどうかしている
俺が自宅警備員となり半年が過ぎた頃、世界は終わりかけた。人間をゾンビに変えてしまう謎の疫病が蔓延し、瞬く間に世界各国に広がっていった。噛まれたらゾンビ化するという漫画とかでよくある鬼畜仕様。もう地球はおしまいだとみんな口を揃えて言った。
だけど終わりは来なかった。全然終わらなかった。
俺らが、自宅警備員がいたからだ。
家で自堕落に生活し、危険な外に出ないゴミカスがゾンビになっているわけがないから。
世界人口の四割がゾンビと成り果てた後、国のお偉いさんたちは俺らに目をつけた。
政府は世界中にいる自宅警備員をかき集め、ゾンビに立ち向かう戦士を育てようとした。
無駄だったけどね!
そりゃそうだろ。こっちもこっちで生きる屍やってるんだから。死んだ人間と生きる屍を戦わせようとするとかマジ頭おかしい。自宅警備員の働かない精神を舐めてもらっちゃ困る。
そもそもそんな活動的で社会を愛しているのなら、とっくに職に就いている。自宅警備員たちは疲れることはしない。みんな思っていることだろうけど、人間はこぞって疲れることをしたがる生き物だ。その心理を逆手にとり、自堕落に過ごそうとする存在が生まれたのも納得できる。相反する存在が生まれるのは自然なことなのだ。つまり自宅警備員とは、世界が生んだバランサーということになる。日々忙しく過ごしている人類の代わりに休んでいるだけだ。休息代行者なのだ。俺らが自堕落に過ごすことで均衡を保っている。よって働くことは悪。無職は正義。働いたら負けという考えは変わらない……はずだった。
ほとんどの自宅警備員たちは政府から言われた一言で掌を返した。
それは「親にゾンビになられたら君たちどうすんの? 飢えて死ぬつもり? まともな人間がゾンビになると君たちが好きな漫画もラノベもアニメもゲームも生まれないよ」だった。
これに関しては自宅警備員にとって死活問題だ。もうすでに社会的に死んでるけど。
そしてゾンビたちを全員を殲滅させた暁には、死ぬまで遊んで暮らせるよう国から資金を援助されるという条件で自宅警備員をガチガチのソルジャーに育て上げた。そして本当に自宅警備員という職業を作った。作らざるを得なかった。
正式名称は自他宅保護兵。
みんなが帰る居場所を守りつつ、ゾンビを殲滅するという職だ。当時はわけがわからなかった。そして今もよくわかない。
本当に世界はどうかしている。
ゾンビ化してない人間たちは地下のシェルターにこもり食料生産とゾンビ化の原因の解明に取り組んだ。もう彼らは俺らを引きこもりだと笑えない。
そして現在。
俺は近寄るゾンビを斬り捨て道を歩いている。太陽が昇っている時間帯に出歩くなんて、昔の俺では考えられなかった。今斬ったゾンビがリア充の成れの果てたと思うとメシウマ。
血飛沫を華麗に躱し、最前線に向かう。
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