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自宅警備員=ニートではない  作者: 七城 七瀬
第一章 希望に溢れる三千世界
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プロローグ~この世界に救済を~

 いきなりだが、自宅警備員という言葉を聞いたことがあるだろうか。


 世間一般では家に引きこもっている人、いわゆるニートと呼ばれる人たちをかなりポジティブに言い換えたインターネット発祥の俗語だ。

 いやいや、人類はどんだけニートをユーモラスに捉えてるんだよ。

 現実から目を背けるのも大概にしとけよ。背けたくなる気持ちもわかるけどさ……。


 学校に行くこともなく、職にも就くこともなく、いい歳して親の金で生活し、空腹時床をドンドンするようなやつとか見たくないのも当然だ。生きてる価値がないし、親の脛をかじるどころかしゃぶりつくすような存在だし。


 自宅警備員という言葉が発祥した時期は明確ではない。気が付いたらもうすでにあったと言うべきだろう。ネット流行語でもランクインしたこともある。一部の人種にはかなり浸透した言葉だ。だがしかし、それが褒め言葉ではないことくらい誰にだってわかるはずだ。かっこよく言っているようだが言えてない。はっきり言ってただのゴミだ。人として扱うのもおこがましい。二次元美少女見てブヒブヒ言ってるただの萌えるゴミだ。

 そして、時に自虐的に使い、ピエロを演じる言葉でもある。


 俺も昔は使っていた。主にネトゲで。はっはっはっはっは……はぁ……。

 そう、何を隠そう俺も自宅警備員だった。

 

 数年前の日本ではゴミだ、クズだ、カスだ、チリだ、出来損ないだと言い放ち、俺ら自宅警備員を拒んだ。

 もう一度言う。


 数年前までは、と。


 働かなくても家にいるだけで自宅を守っているというわけのわからない理論で、薄暗い闇の中でひっそりと生きている俺らを嘲笑う人たちや、後ろ指を差す人たちや白い目で見る人たちはもういない。

 否。

 もう、生きてはいない。

 これも否。

 もっと正確に言うと、半分生きていて半分死んでいる。社会的に死んでいるという意味ではない。それだと話が自宅警備員の話に逆戻りだ。

 本当に半分生きていて、半分死んでるんだって。夢じゃないから。妄想でもないから。

 その証拠に今日も自宅周辺からはうめき声が聞こえる。ついでに銃火器の音も鳴り響く。遠くで轟くけたたましい爆音のせいで俺は目を覚ました。


 おい、誰だよ……朝っぱらから爆弾なんて投げたやつ。普通のやつなら発狂してたぞ。

 むくりと起き上がり、目をこすりながら部屋のカーテンを開けると、朝の眩しい日差しに目が眩む。

 今日もいい天気だ。雲一つない空模様はどうしてこうも心を落ち着かせるのだろうか。

 そして外をうろつく数体のゾンビたちが目に映る。今日も病的に元気だ。朝見るゾンビはどうしてこうも心を曇らせるのだろうか。


 発砲音と爆発音が一日の始まりを告げる。バイオレンスな日常だ。

 蠢くゾンビが俺を夢の世界から現実へ連れ戻す。


 これが今の世間の形。日々移り変わる世間はとんでもない変化を遂げた。一体世間はどこに向かおうとしてるのだろう、俺にはわからない。わかりたくない。

 やっぱり自宅警備員が生まれたのって世間が悪いからだ。間違いない。


 まぁ、こんなことを考えてもどうしようもない。俺が成すことは決まっている。

 グレーの軍服に身を包み、家を出る。本物の自宅警備員に転職した俺、九条理人(くじょうりひと)は強い思いを抱き、今日も愛用の日本刀を腰に下げ、戦場に赴く。


 俺は今日も、自宅を守っている。


お読みいただきありがとうございます。

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