アナザーストーリー six
《別世界》
【雨宮】side
まずはこのどでかいカプセルを運べる物を用意しないと。
どうやら通貨は同じらしい。カードは使えないが現金は使用可能だった。俺は自由度の高いミニバンを買った。後ろを弄ってカプセルを運べるようにする。上出来だ。
こっちに来てから純白の身体が何かに反応してる。微かな光が一直線に何処かへ向かっている。
ここから近いかはよくわからないが、行ってみよう。
廃ビル……それも屋上が沈下してやがる。危険な匂いがするな。
純白の身体は心配だが俺はこの世界を知らなさすぎる。不本意だが純白を連れてこの世界の情報収集をすることに。
「へぇ……こっちでも大村ってのが殺されてるのか。しかも未解決ときた。」
そっくり過ぎる。レポートにゃ能力が存在しない世界としか書かれていなかったが、いくらなんでもおかしいだろ。
ただ、本当に能力は無いらしい。少しレベルの高い馬鹿が起こした事件等の類は見つからなかった。こっちの馬鹿は重火器や拳で馬鹿やってるらしい。
政府や新聞社、王手企業のコンピュータをハッキングしたが、欲しい情報無し。だが、知りたくなかった情報は見つけてしまった。
「なんで、こっちに居るんだよ。母さんッ」
俺と同じ琥珀色の目。それに日本人離れしている金髪に真っ白な肌。都市伝説サイトには王手企業の社長秘書が超能力者だとかなんとか書かれてるが、あの氷のピアスは母さんが俺と一緒に作ったオリジナルの物だ。こっちに存在する訳がない。つまり本物。
ある日突然消えた母さん。ということは、母さんは純白より先にこっちに来ていた事になる。
「なるほどな」
純白の「間違えた」から解った前例は母さんだったのか。だから昔からかくれんぼだの探検ごっこをしていた。レポートは完全に純白の字だったが母さんにばれないように書き写していたということだろう。母さんの体質を考えると当然の選択だ。なんせ絶対記憶能力だもんな。俺も嘘を滅多に付けない。一個だけ、今でもばれていない嘘があるが。
母さんとコンタクトをとる。きっと門前払いで終わるだろうが、念のため。母さんの能力は最強クラスだ。
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[件名]母さんへ いや、ママへ
[本文」貴方は俺の事を憶えておいででしょうか?俺は捨てられたとばかり思っていましたが、親父は全てわかっていたようです。
貴方が俺たち家族から危険を遠ざける為の避雷針になってくれていたこと。そして消えた理由。
今、純白の身体を連れてこちらに居ます。興味がありましたら是非、お返事を。
お待ちしております。
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これで良しっと。母さんのPC、タブレット、スマートフォンにこのメールを送っておいた。これで返事があればいいが。
2秒後、【Amazing Grace】が聞こえた。
いくらなんでも返事早過ぎ。
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[件名]Re:母さんへ いや、ママへ
[本文]十分後、私の部屋にて。
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短いな。流石母さんだ。
母さんの会社はわかってる。行けない距離じゃない。十分間は試してるんだろうな。俺が本物か。
この場合、一般人にばれないように能力を、それも俺本来のモノを使えということ。なら、障害物を溶かせばいい。見られないように。
到着。母さんは何も言わずに車に乗った。……いろいろ聞きたいんですけど。
会話がない。沈黙。だが、
「何故このようなことをしたのですか?私にこのようなメールを送るなど。そもそも、貴方は誰ですか?」
「しらばっくれないでよ。母さん。あの地下の装置を使って来たんだ。息子の話くらい信用してよ。」
「ならどうしてここに来たか、教えてくださいます?」
「純白の魂がこっちに飛んだ」
母さんは黙っているが、表情は暗い。
「理由はなんとなく解った。俺はあいつを取り戻したい。そして」
「ーープロポーズしたい。でしょう?」
……最後の嘘もばれてたし。
「疑う必要はありません。貴方が私の可愛い息子であるということは、メールの口調と昔のお手紙の口調、そして性格を考慮すれば99%本物です。不安要素を排除するため、手荒いことをしてもらいましたが。」
「……も、もうすぐつくからなッ」
「はい。」
久しぶりの母さんとの会話は、調子が狂う。母さんは笑顔に見えた。
「ここの屋上。なんか危ない感じがする。」
「私もだから大丈夫。行きましょう。」
「えッ?ちょっと待ってくれよ!」
「待ちませんよ?ウフフっ」
《屋上》
「よう、待たせたようだな。」




