その18
「まっ、確かにクライセン公がこんなに雑な漏らし方をするとは思えないな」
オーマは、エイリックが出て行ったのを見て、そう言った。
(あたし、そんな事、言ってませんが……)
サラサは、オーマが如何にもサラサが言ったといった感じに言ったので、抗議したかった。
だが、あまりにも子供っぽく感じたので、それは心の中に止めておいた。
オーマの方は、それを見透かしていたのは言うまでもなかった。
「そもそも亡命者を一々公表する必要性自体がないからな」
オーマは、ニヤリとしながら発言を続けた。
(いや、ですから……)
サラサは、ムズムズしていた。
「それ故に、他国に漏らすメリットもあまりないと思われる」
オーマは、更にニヤリとしながら続いていた。
「……」
こうなると、サラサは諦める他なかった。
オーマが言っていることを思わなかった訳ではなかったからだ。
「確かにフランデブルグ伯は、上級貴族ではあるが、シーサクの中枢部にいた人物ではないから、尚更だ」
オーマは、最後まで続けてしまった。
「……」
サラサは、全て言われてしまったので、黙っていることにした。
(何も、こんな駆け引きめいたものをしなくても……)
2人のやり取りを見て、ヤーデンはやれやれと思っていた。
「で、閣下、目星は付いていらっしゃるのですね」
ヤーデンは、サラサが黙ってしまったので、仕方がなく、そう発言した。
まあ、自分がそう言わないと話が進まないからである。
「出所は、連合の情報部だろうな」
オーマは、促されるままそう断言した。
「確かに、そうでしょうね。
計画の段階から、連合が関わっていたのは納得は出来ます」
ヤーデンは、呆れながらも総参謀長としての姿勢は崩さないでいた。
そして、
「しかし、秘密裏に終わらせなかったのは、何故でしょうか?」
と追撃を忘れなかった。
「公表することにより、リーランとシーサクの対立関係を深める狙いがあるのだろうな」
オーマは、意外にも険しい表情になった。
彼自身、こう言ったやり方が好きではないことを示唆していた。
「それと、リーラン、シーサク、両国に混乱を引き起こしたいのだろう」
オーマは、そう付け加えると、更に険しい表情になっていた。
と言うよりは、虫唾が走るといった方がいいかも知れない。
「混乱とは、具体的にはどのようなことになるのでしょうか?」
ヤーデンは、更に質問を重ねた。
無論、議論を深める目的の為である。
「さあ、そこまでは分からないな……」
オーマは、今度は苦笑いしながらそう答えた。
「……」
ヤーデンの方は、オーマの答えに拍子抜けしてしまった。
「だが、こう言った案件は、必ず混乱をもたらす。
直ぐに現れることもあれば、後になって現れることもある。
こればっかりは、予想が付かないさ」
今度は、オーマがヤレヤレしていた。
「!!!」
ヤーデンは、オーマの言う事に納得した。
そして、確認の為に、サラサの方を見た。
見られたサラサとしては、ここまでだと感じたのだった。
「仰る通りかと思います」
サラサは、オーマの意見を全面的に肯定した。
となると、この場の空気としては、今後、波乱が起きる可能性があるという事で一致した。
とは言え、ラロスゼンロの件といい、亡命騒ぎの件といい、どちらも何も出来ないもどかしさは残るのであった。




