第二章 閑話休題
雨はやまない…
その日、蓮見恋は生徒会室へと呼び出された
用件は伝えられていないそれどころか自分一人で来るように言われた
生徒会室に近づくに連れて心音が大きくなる
なぜ自分が呼び出されたのか その答えは薄々勘づいていた
生徒会室の前で立ち止まり深呼吸する
それからゆっくりとノックした
「失礼します…」
中からの返答はなかった
ただこのまま立ち止まったままだと何かに押しつぶされそうで意を決して中に入る
そこにいたのは生徒会長の大道寺司ただ一人だった
「急に呼び出して悪かったな」
「あ、いえ その…今日は一体、どういったご用件でしょうか?」
恐る恐る尋ねると会長は一枚の紙を差しだしてきた
A4のプリントぐらい大きさの紙切れには画像が印刷されていた
見覚えのある三人…つい最近入部したばかりの一年生三人が音楽室に入る瞬間だ
端のほうにある日付は新入生歓迎会の翌日で…
「これはどういうことだ?」
「あ、その…」
悪い予感は的中した
生徒会長が自分を呼び出した理由、それは体験入部の禁止期間中に体験入部を行なったことへの追及だった
「これはその…事故といいますか すみません…」
「あの時言ったはずだ 新入生歓迎会での騒動にはこちらの過失も多少なり含まれる、故にそちらの幽霊部員の提案を飲んで体験入部の一定期間禁止をペナルティにすると」
「そう…でしたね…」
生徒会長の話していることは全て事実だ
そして今回の件に関しては伝達ミスがあったとはいえ完全に自分たちが悪い
せっかく惠の説得でペナルティを軽くしてもらったのに理由はどうであれそれを無視したのだ、もはや言い訳はできなかった
「それで? 俺も鬼じゃない、言い訳ぐらいは聞こう」
「あ、えっとですね これは完全に部長である私の伝達ミスが原因でして私意外の部員は悪くないんですよ…」
せめて自分一人のせいにしてこの件に関する処罰や罰則を最小限に食い止める
今の私にできるのはそれぐらいで…
「連帯責任という考えもできるが?」
「あ、えと それは…」
連帯責任…なんて便利な日本語何だろう
その言葉一つでさっきまで覚悟していた自分一人の処罰なんてやすやすと打ち砕かれる…
「本来なら廃部もやむなしなんだがな…」
生徒会長はため息をついてこちらを見た
「こんな盗撮まがいな方法で得た証拠で脅すのもどうかと思ってな」
「それじゃあ…」
今回は厳重注意で済まされる…なんて淡い期待を抱いてしまった
でも現実はそこまで甘くなかった
「この写真に写っている三人はこの時点で部員だったんだろう?」
そう言って生徒会長はもう一枚の紙を渡した
さっきと同じくらいの大きさの紙だ
そこには桜水高校部活動創設・入部申請書と書かれていて…
「これって」
「この写真が撮られたのと同じ日付だ 正式な部員だったなら体験入部にはならないはずだ だがもしそれが一年生の意思を無視して生徒会の設けたペナルティの抜け道を突いたのなら大問題だろうな」
もちろんそんなことはない
あの時、三人は少なくとも自分の意思で決めてくれた
でもそれを証明する手段はどこにもなくて…
「だからこの三人が正式な部員として認めるために試験を行なう」
「試験…ですか?」
「そうだ 二週間後、新入部員だけでライブをしろ 一曲だけで構わないそこで誰一人、逃げることなくやり遂げたなら今回の件には目を瞑ろう ただしもしライブができないようならこの入部届は無効、音楽部の進入部員はゼロで今年で廃部とする」
思わず息をのむ
「そんな無茶苦茶な… 二週間でライブなんて」
「別に観客を集める必要も成功させる必要もない、ただやり遂げるそれだけが条件なんだ もし本当に自らの意思で入部したならそれぐらいできるだろう?」
「それは…」
なにも言い返せなかった
確かに生徒会長の提示した条件はかなり甘い
しかもそれで今回の件を見逃してもらえるならチャンスでしかなくて
「分かりました 二週間後、らいぶをやります」
恋は生徒会長の前で堂々と言い切ったのだった
「あーーーーーーーーーーーーーー やっちゃった…」
生徒会室を出て恋は悶えた
そもそもまだ完全にメンバーが揃っていないンバンドにライブをさせるなんて
しかも全員、未経験なんて無謀すぎる…
改めて自分が余計なことをしたのだと気がついて地面に倒れこんだ
「とにかくやってしまったことはしょうがない…」
過去は変えられない
もし過去を変えられるならもっとずっと前、去年の文化祭直後に戻ってる
でもそれができないから雅先輩はもういない
過去は変わらないそれはあの時、嫌というほど思い知った
だからこそこの先の未来で後悔しないように生きるしかないんだ
「とりあえず蓬ちゃんたちにこのことを知らせないと…それから」
今、自分にできることをするために恋は走り出した
第二章閑話休題 (了)




