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第二章 コミュ障陰キャぼっちでもバンドは組めますか? 第三十節

生まれるということはいつか死ぬということ


始まるということはいつか終わるということ


この物語はついに動き出し


いつか来る彼女の死へと歩み始める

「それでその二人は音楽室で待ってるの?」

「そうなの 綾乃と蓬も連れて来るよう言われてさ」

そう話しながら私たちは音楽室に向っていた

真凛の話では校内を回っていたらその二人組に声をかけられてバンドに入りたいという旨を伝えられたという

それから残る二人のメンバーつまり私と綾乃を連れて音楽室に来るように言われたらしい

「それでその二人ってどんな人なの?」

「それがまだ二人には詳しく説明するなって言われてさ… 一応、男子だよ」

「男子…」

共学かつ生徒数が少ない桜水高校でバンドを組む場合、男子が一緒になる可能性も頭には入れていたけれど、いざそれが現実になろうとすると少しだけ躊躇ってしまう

「蓬? 大丈夫?」

「ああ うん 大丈夫…」

同じクラスの男子とすらまともに話したことがないからかなり緊張してしまう

それでもせっかくバンドに興味を持ってもらえたんだ

このまま真凛や綾乃がいいならバンドに入ってもらえるように愛想よくしないと

そう自分に言い聞かせて音楽室の扉を開けた

防音用に作られた二つ目の扉を開くとその先に立っていたのは


「お、やっと来た 驚かせてごめんね 朝霧さんと蚊帳ノさん」


天城廻兎くんと大倉龍弥君だった


「あ、えと もしかして真凛が言ってたのって…」

「俺達だよ」

「そうなんだ…」

天城君の返答に少しだけ安堵する

同じ男子でもまったく知らない人と少しでも知ってる人だったら断然、後者のほうがいい

天城君は遠足の前日、私と真凛がトラブルに巻き込まれた時にも助けてくれたし悪い人ではないのは確かだと思う…

それに大倉君とも少しだけ面識はあるし(怖いけど)悪い人ではなさそうかな…

「それにしてもまさか二人だったとはね~」

「あれ? もしかして綾乃も二人のこと知ってるの?」

「まあ うん 同じ小学校だったから」

「え!?」

思わず真凛と私の声が重なった

真凛も私も二人とは多少の面識はあったけど綾乃と二人は今回がはじめましてだと思ってた

でもまさか同じ小学校に通ってたなんて…


「でもどうしてバンドに入るなんて言い出したの?」

「蚊帳ノにベースとドラムがいないことを聞いたからだ」

「へ!?」

思わず声が出た

確かに大倉くんにベースとドラムをやってくれる人を探してるとは言ったけど…

でも彼自身は中途半端なバンドに入る気はないって言ってたから私たちのバンドには興味がないと思ってた

『どうして急に気が変わったの?』なんてコミュ障を極めてる私に言えるはずもなくて

でもこの問に対する返答は天城君が答えてくれた

「まあもとからコイツ、バンドしたかったらしくてさ なーんか俺の知らないうちにベースも始めてたしね そんでちょうどそこにバンド組みたいけどベースとドラム探してるって真凛や蚊帳ノさんが言ってたからそれに乗っかったってわけ」

「そうなんだー てことは廻兎はドラム?」

「未経験の素人だけどね まあ龍弥のことも心配だしついでに入れてもらおうかなと」

天城くんの説明のおかげで二人が私たちのバンドに入る理由は分かった

けど問題は……


「アタシは二人がバンドに入るのかすぐには決めないほうが良いと思う」


大倉くんと天城くんのバンド参加に異議を唱えたのは意外にも真凛だった


「どうして?」

「綾乃には悪いけどそこの二人、特に大倉はバンドができればどこでもいいんでしょ? たしかにウチらのバンドはベースがいなくて探してたけどそんなしょうがないから入ってやるみたいな理由で入られるのはなんていうか…」

真凛はそこで言葉に詰まった

でも確かに真凛の言いたいことはなんとなく分かる気がした

そもそもメンバーが見つからなくて困ってた私たちにそんなこと言う権利はないのかもだけど でも私たちのバンドに興味を持って入りたいと思ってくれる人が見つかるように頑張ってたわけで…… つまり


「適当な穴埋め感覚で入られるのは気分が良くない…か」


大倉くんはそう呟いた


「そういうこと 別にアタシだってあんた達がこのバンドに興味があって入るなら歓迎するけど どこでもいいから入るみたいな考えならやめてほしい」

「確かに真凛の言いたいことも分かる…かな」

綾乃も真凛の意見を肯定した

「私だってさっきまでメンバー募集のチラシとかバンドの方向性とか雰囲気とか色々考えてそれで同じ気持ちで進める人を探してたから… だからいくら龍弥や廻兎でもこのままバンドに入ってもらっても長くは続かない…と思う」


綾乃にとっては真凛と大倉くんとの間で板挟みになってるはずなのに…

ちゃんと自分の考えで話せるのはすごいな…

「そうか なら……」

「じゃあ とりま、お試しってのはどう?」

大倉くんの言葉を遮って天城くんが言った

「お試し?」

「そうそう 俺と龍弥は他のバンドメンバーが見つかるまでのサポートってことにしてさ、それなら真凛も半分ぐらいは納得できるんじゃないの?」

「まあ それなら…」

天城君の提案に真凛は納得したようだった

「でも二人はそのあとどうするの?」

「新しいメンバー見つかったらちゃんと抜けるしそのあとは自分らでバンド組むかもね

まあお互いに未経験者が多いってのもメンバー集まらない理由かもだし、仮バンドで経験積ものもアリじゃないかな?」

「なるほど…」

さっきまでのピりついた空気はどこへやら、天城君の提案でかなり良い方向にまとまり始めた 天城くんの陽キャレベルが高すぎる… もはや聖人

「蚊帳ノさんもそれでいい?」

「あ、はい…」

「じゃあ ひとまずそーゆーことで これから短い間だけどよろしくね」

「よろしくお願いします…」

こうして私たちは『一年生バンド(仮)』を組むことになったのだった

でもまさかこの後、あんなことになるなんてこの時の私は思ってもいなかった



第二章 コミュ障陰キャぼっちでもバンドは組めますか? (旧題反転)


改題  コミュ障陰キャぼっちにだってバンドは組める! (了)

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