↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
179/179

第四章 コミュ障陰キャぼっちにも青春はありますか? 第二十一節

一度着いた炎は消えない


燃え尽きて灰となるまで止まらない


その灰を抱く者は騎士かあるいは…

「それでなんのつもりなの?」

扉を開いた瞬間、目の前に座っている人影に告げた

椅子に座り優雅に紅茶を飲むその姿は悔しいけれどまるで幻想的だった

芸能活動をするほどの相手だからある意味では当然かもしれない

けどだからこそ胸の奥がざわついた

「ちゃんと気づいてもらえてよかったです」

囁くようなその一言で離れかけていた思考がもとに戻された

「それでどういうつもりなの?」

ノートを広げてその端を指で指して言った

「このあと一人で残って下さいって… まさか私だけ補習でもするつもりだった?」

そんなことはないと分かっていながらもわざと軽口を言って相手の様子を伺った

しかし

「まあそんな所でしょうか… あなたには補習が必要そうでしたから」

「なっ…」

軽く目を伏せながら言った彼女のの言葉に戸惑いながらも内心ではホッとしていた


「あっそ… でもアタシのせいでライブ出られないとかありえないからやるけどさ」

「あなたは蓬のことが好きなんですよね?」

「……」

思考が止まった

用意していたセリフが急に使い物にならなくなった感覚

自分のセリフは思い浮かばないのにこの後の展開ばかりが想像できてしまって

「以前からあなたとは何度もこんなやり取りをしてきました そしてあなたが蓬のことをどう思っているのかも知っている」

淡々と今まで彼女と話してきたやり取りを端的に並べられる

「けれど今日のあなたの言動を見て気になってしまったんです」

「……なにが?」

絞りだすように言葉を繋ぐ

けれどその問いかけに対する答えは始めから分かっていた

分かっっていながら理解ろうとしなかった


「あなたは蓬に気持ちを伝えないんですか?」


きっと一分にも満たない沈黙だった

けれど私にはそれがまるで永遠にも無限にも思えるほど長く、重たくて…

「あの時交わした勝負の件は一度白紙にしたはずです もしあなたが本気だったなら蓬に想いを伝える機会はあったでしょう」

その沈黙を破るように彼女は言った

言い訳ならいくらでもできた事故のことやそのせいで部活で集まることが減ったこと、蓬がどこか落ち込んでいて上手く声がかけられなかったこと…

でもそれは言い訳であって言い訳でしかなかった

彼女の言う通りもし本当に自分にその気があったなら、本当に自分が蓬のことを好きで彼女に想いを告げる覚悟があったなら…

目の前の少女に先を越される前に動いたはずだ

でもそれをしなかった、できなかった、できるわけなかった…

だって…


「怖いんですよね、蓬に断られるのが」


その言葉は私が自分からも隠そうとしていた本当の言い訳を暴くものだった


「…別に否定はしない」

どんな言葉を使っても違う、黙っていてもこれ以上隠すのは無理だと諦めた

「私もあなたのその気持ちが分からないわけではないです」

「…どういう意味?」

「そのままの意味ですよ 私だって蓬に想いを告げて断られるのが怖いんです」

表情も声色も変えずに答えたその言葉はまるで信用できなかった

しかし彼女はそこで止まることなく続けた


「本心を悟られないように、冗談みたくただ勢いにまかせて言うのがやっとだったんです」


そう言った彼女の表情はいつもより少しだけ儚く見えた

演技でも嘘でもない本心からくる不安と恐怖

彼女自身から見えたそれを私は知っていた

だからこそ彼女が本気で蓬を好きでいるのだと改めて理解させられてしまった


「アタシに勝ち目ないじゃん…」


ため息のように言葉が洩れる

自分でも実際に口に出していたなんて気が付かないほど自然に出た言葉だった

容姿も性格も才能もその全てが自分より優れている彼女に勝てるわけがないと、蓬に対する気持ちだけなら勝っていたつもりなのにそれすらも負けていたことに


「もう一度、勝負しませんか?蚊帳ノ蓬にどちらが告白するのかを賭けて」


「…いいよ 受けてあげるその勝負」


勝ち目がないことを言い訳にはしたくなかった

だって…


「その代わり、アタシ達のバンドは負けないから」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。