3-2
酒鬱は危険だ。酒が抜けると何もかもが嫌になる。酒は飲んでも飲まれるなというがまさにその通り。俺は飲まれてしまってるから辛いのだろう。
思えば自分が楽しいとかかっこいいとか思う事は全部やってきたな。部屋を間接照明にしたり、公園で一人黄昏たり、写真撮ったり。
結局俺がやってたことって何でもないことだ一人で完結するような、俺だけの世界を作っていたようなものだ。でもその分自分は楽しんでいたと思う。俺は人よりも一人の世界は楽しんできただろう。その分失ったものと、寂しさは大きいが。
公園の近くのカフェ、そこでする読書は月並みだが自分がおしゃれになった気分になって楽しい。ありがちな「かぶれてる」ことを嫌っていた高校時代の自分が今の俺を見たら倒れるんだろうな。
「お久しぶりですー! 今日は何飲まれるんですか? いつもの?」
もう顔を覚えられるほど通ってしまったのか。自分でも恥ずかしいが常連さんって扱いをされるとなんだかうれしいものだった。
「いつもので。」
「はーい、ありがとうございます。席までお持ちしますね」
彼女が笑顔でそういうと俺はなんとも言えない気分になる。店員さんの笑顔でも、笑顔を向けられると勘違いしそうになる俺のチョロさは本当に何なんだろうか。でもこれは俺だけじゃないだろう。そう思いつつ本を開いた。
「お兄さん、こちらコロンビアのブラックです。あ、あと隣座ってもいいですか?」
「え、あ。まあ大丈夫ですよ」
「やった。これで上がりで。大学で見たときから話してみたかったんですよ。ちょっと待っててくださいね」
勘違いしそう、ではなく正確な理解をしそうの間違いだったようだ。店員さんに隣の席座っていいですかなんて言われた日にゃ勘違いしない男がいるだろうか。否。絶対勘違いする。
「お待たせしましたー」
彼女はパタパタと小走りでこっちにきて、嬉しそうに手を振って隣に座った。かわいい。