28話『仲間達の実力』
遅くなりました。
面白い内容が思いつかなくて……
「わぁ……この馬車全然揺れませんね?」
「あー、うん。これな、魔法でクッション性のある空間を作ったんだよ。……意味わかんないよな」
首を傾げながら頷くシャル。
お忙しい事で。むしろ、横に振ってるように見えるな。
「ま、それは気にしなくていい。自慢できるような事でもないからな」
特に何もせずに使える力とか、罪悪感が半端ない。まあ、それでも使わせて貰うけどな。
それから数十分程で、噂の場所に着いた。
ワイバーンが出ると聞いてるせいか、少し不気味だ。というか、フィエナはさり気なく隠れるな。
――バサッバサッ
翼の音が聞こえる。
そっちに目を向けると、早速ワイバーンが来ていた。どうやって飛んでいるかは気にするな。ファンタジーだ。
「どうやって倒しますか?」
エニファにそう聞かれて、少し考える。鑑定してみると、どの仲間でも一体一なら勝てるステータスだ。
「よし、どうせまだ居るし、一人づつやるぞ」
「えっ?そんなにいる?」
居る。気配察知で囲まれているのは分かっていた。一体だけ変なのが混じっているが。
軽く10体以上だ。体長は7m程。
「他は俺が抑えておくから、まずはシャルから行こう。後にすると緊張でガチガチになってそうだし」
「は、はい!頑張ります!」
既にガチガチではある。
そんな状態で戦っても、勝てるか微妙なところなので、少し声をかける。
「安心しろ。何かあってもちゃんと守るから。俺だけじゃない、他の皆もいる。」
そう言われたシャルは、皆を見回して頷いて貰うと、目を閉じて深呼吸した。
「……頑張って来ます!」
今度はいい感じの緊張感で、肩に力が入りすぎていない。先程は、観察力に優れている訳では無い俺でも、分かりやすく緊張していた。
「……私は……足場に……」
何やらフィエナが呟いでいるのだが、シャルの方を見ていたせいで、聞き逃した。
そして、シャルは行動を起こす。
シャルの真っ黒な炎が、ワイバーンに迫る。
それを回避するワイバーンだが、シャルの攻撃は続けて放たれる。
「グォォォ!!」
「あわわっ」
ワイバーンは翼で風を起こし、シャルをよろめかせた。すかさず攻撃する。
しかし、
「私はこっちですよ?」
最初の黒い炎を出すタイミングで、幻惑魔法を使っていたシャルは、ワイバーンの後ろに。
それに慌てて尻尾で攻撃しようとするワイバーン。
「残念でした」
しかし、それもまた本物では無い。
本命は、
「さよならです」
上からの特大炎。
もがくワイバーンだが、シャルの炎から逃れる事は出来ない。大きすぎて。
普通に戦っても勝てたとは思うが、シャルは確実に仕留める為、幻惑魔法を駆使した。
それはいい。
だが、
「よくやった。でもな、消し炭にされると討伐部位とか取りようが無いんだよな……」
「あ!ご、ごめんなさい!」
「いや、いいよ。シャルの炎で追加のワイバーンも寄って来たみたいたし」
なお、全て重力魔法の餌食だ。邪魔はさせない。そして、一体だけ解放する。
「次は私かな?」
「それでいいんじゃないか?」
2人が頷いたのを確認して、ワイバーンへと向かうシエラ。シエラの真面目な戦闘は見た事がない気がする。盗賊戦は速攻で終わっていたのでノーカンだ。
「ふふっ……さあ、かかってくるといいよ」
そう言って腰のレイピアを抜くシエラ。
接近戦をするつもりらしい。
そう思っていたのだが。
ワイバーンが目の前に来た瞬間、その頭に岩が落ちる。
「「「「え……」」」」
「はい終わり!」
体制を整えようとするワイバーンの首を、スパッと斬ってしまうシエラ。
「何で微妙な顔してるの?勝ったのに……」
不思議そうな顔をしないで欲しい。
剣で戦う姿を見れると思っていたのに。
「まあ、いっか。次はどっちがやる?」
ワイバーンを死体を回収しながらそう聞く。
「では、私が行っても?」
「……ん、いい。」
という訳で、エニファの番だ。
「あ、そうでした。……んしょ……」
何かを思い出して服を脱ぎ出す。
それは、狼の姿になれば、服が破れてしまう事だ。
脱いですぐにいつもの服があると思ったのだが、数秒だけ全裸状態になっていた。
すぐに服が現れたのだが、エニファ以外の視線が集まる。
「「「「見た(ました)?」」」」
「……悪い。割とガッツリ見た」
今のを見ていないというのは無理があるので、潔く白状する。誤魔化しても仕方ないというのもある。
「別に主は良いですよ?」
俺に絶対服従みたいなところがあるエニファは、人の姿でも、俺に見られるのはいいらしい。ちなみに、他の男に見られるのは気持ち悪いそうだ。
「グォォォ!」
「ほら、ワイバーンが呼んでるぞ」
「では、行ってきます」
神狼の姿になりつつ歩いていく。
さて、どう戦うのやら。
まずは、雷魔法で牽制。
そして、雷を体に纏う。
その姿は、ジン〇ウガのようだ。
先程から学習しないワイバーンは、またしても突っ込んでくる。勿論、即死だ。
エニファのスキルである守護ノ雷は自動迎撃してくれるのだが、その威力は反則的だ。
それに加えて、エニファ自身が放った雷魔法も合わさり、こんがり焼くことに成功。
「終わりました!」
「おつかれ。思ったより、まともな戦闘にならないな」
「まあ、あれ飛んでるしね」
「……じゃあ、任せて」
フィエナには、何か作戦があるらしい。
無音でワイバーンの下まで歩いていく。
……暗殺者?
「……落とす」
そう呟いた直後、木に隠れて、ワイバーンから見えなくなる。木から出ても、気配隠蔽により見えなくなった。
すると、突然木に登り始めた。
「まさか……」
そして、1番上に着くと、未だにフィエナを探しているワイバーンに、
「……ふっ!」
飛びかかった。
ここまで来れば流石にワイバーンにも気づかれるが、気にせず切りに行く。
だが、流石に回避された。
そのまま地面に落下するかと思われたフィエナだが、飛んだ先に別の木があった。
これは、偶然ではなく、フィエナがそうなるように角度を調節して跳んだのだ。
俺の速さで翻弄するスタイルとは違い、木に隠れて後ろから襲っている。
ここだけ聞くと、犯罪者っぽいな。
そうやって何度か続けていると、致命傷では無いものの、ダメージを与えられている。
しかし、いい加減イラついていたワイバーンは、周りの木を薙ぎ倒し始める。
だがそれは、フィエナへの反応が遅れるという事でもある。そして今、後ろから跳んできたフィエナに気づいていない。
「……勝ち」
その勢いのまま、こっちに落ちてきた。
当然、衝撃を与えないようにキャッチする。お姫様抱っこで。
「お疲れ様。いい戦い方だったな」
どう見ても、暗殺者やら忍者の戦い方だが、ちゃんと戦っていたのは事実。
フィエナも、一撃で消し炭に出来たのだが、それをせずに頑張ってくれたフィエナ。
「……ご褒美に、少しこのまま……」
「ずるい……」
「フィエナさんだけ……」
「だ、大胆です」
シャルだけは赤くなって見ていた。
「じゃあ、残りは俺が殲滅するか」
フィエナを抱っこしたままなら魔法……いや、ちょっと試しにやってみよう。
魔力を放出。
それをそのまま物質化させる。
出来るかどうかは知らない。
だが、
「……剣?」
「おう、剣だな。魔力の」
『スキル【幻影刃】を取得しました』
しかも、ユニークである。
透明な魔力の剣。魔力である為、空中でも自由自在に操れる。これだけでもチートだ。
「切れ味も良いみたいだな」
試しにそこのワイバーンを切ってみたら、かなりすんなりいけた。そのまま他のワイバーンも倒していく。
「わー、こんなにあっさりと……」
「お兄ちゃんが強すぎます……」
2人が遠い目をしているが、一般人からすれば全員別次元の強さだと思う。
それに、これは職業の力だ。俺のでは無い。
チートを貰えて嬉しいと思う気持ちもあるのだが、頑張った結果じゃない分、申し訳なくなる。
「……気にする事、ない。才能だって、与えられたもの。それなら、その力はナギサのもの」
随分と俺に都合のいい話だ。
でも、フィエナが俺の為にそう言ってくれた。
表情を見ただけで考えてる事も察してくれた。
「ありがとう、フィエナ……」
「……ナギサ」
自然と頬が緩む俺。
2人は見つめ合い、ゆっくりと顔が近づいていき……
――オオオオオオ!!
触れ合う寸前に、謎の咆哮が響いた。
目を向ければ、遠くから飛んでくる巨体が。
軽く10mはある。
やがて、俺達の前に降りてくる。
『貴様らか。我が配下を殺したのは』
「……ワイバーンの事か?それなら合ってるけど、それ以外なら知らないぞ」
念話が飛んできた事に驚いた俺だが、冷静に返答する。
『ならば、貴様らにも死んでもらおう。我が名は火竜イグニス。消し炭にしてくれる!』
「は?急展開過ぎるだろ……」
急いでフィエナを降ろし、全員戦闘態勢をとる。これは、追加報酬を貰う必要がありそうだ。
無難に戦闘させておきました。
理由は、ランクアップの為にです。
にしても、唐突な竜の登場。
次回、どうなるんでしょうか