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理を統べる転生者~獣耳少女(嫁)を守ります~  作者: ナギ@にわか
白猫姫とおかしなご主人様
12/30

11話『ついイラッとして殺ってしまった。反省も後悔もしている。』

フィエナちゃん視点は、なんかやりたかっただけなので変だったら言ってください。

 私、フィエナは王女であり奴隷だ。

 城から1歩も出してもらえない生活が嫌だった。不自由はないし、欲しいものだって貰える。

 だけど、本当に欲しい自由だけは手に入らなかった。そんなある日、少しだけでもいいから見てみたいと城から抜け出して街を歩いていた。だが、そこを見知らぬ男に捕まってしまい、奴隷にされた。

 奴隷になってからは、不自由な事が物凄く多くて、辛くて、泣きそうになった。あまり感情が表情に出ないせいで売れずに、殴られ、蹴られもよくあった。そんなある日、馬車で移動中に盗賊が襲って来た。とはいえ、護衛の人が倒すだろうと気にしてはいなかった。

 しかし、1人は殺されて、もう1人もボロボロ。変態貴族に売られる前に死んでしまうことが、良いのか悪いのかは分からけど、出来ればもう少し生きていたかった。


「……なんで、私なの?」


 別に私じゃなくたって良かったはずだ。何で普通に過ごしたいだけなのに、贅沢を望んでる訳でもないのに、こんな目に遭うんだろう。

 世界に、神様の選択に絶望していた私の耳に、先程とは違う声が聞こえてくる。

 助けが来た?でも、若そうな声だし期待はできない。とは思いつつ、気になった私は顔を覗かせてみる。

 その目に映ったのは、真っ黒な少年が5人の男を相手に無傷で勝つ姿。

 カッコよかった。剣が使えて、魔法も戦闘に使えるなんて普通は無理。

 けれど、これから死ぬ私には関係の無い話。


 馬車が出発してしばらくすると、レドガーに言われて盗賊から助けてくれた彼にお礼を言いに行く事になった。でも、獣人の私が近づいても殴られて終わりだと思う。

 しかし、助けられた事に感謝しているのも確かなので怯えながらも話しかける。


「……その、さっきは……あなたのおかげで、助かった…」


「………」


 何も言わずに手を伸ばしてくる彼。きっと殴られるんだと思った私は、ギュッと目を瞑る。

 でも、その手は優しく頭を撫でていた。正確には、耳ではあったけど。


「あ、あの?」


 呼びかけても、触った手はそのままで返事がない。

 力加減が絶妙で、偶に少しだけ強めに擦ったりされると耐え難い快感が押し寄せてくる。

 だけどお礼を言わなければならないので、変な声が出そうになるのを抑えながら質問する。


「ど、どうして、耳を…触るの?…ふにゃぁ…」


 堪えきれずに声が出てしまった私ではあったが、ちゃんと返事はしてくれた。


「そこに猫耳があったからだ!」


 キリッとした顔をして、微塵も忌避感を抱いた様子もなくそう言う彼。ちょっと変な人だけど、優しそうだから話をしてみよう。


 それが、私と彼の出会いだった。

 そして、それが最後のはずだった。


 けれど彼は、変態貴族に売られるはずだった私を連れ出しに来てくれた。


 必死に説得しようとする彼に、助けてと言ってしまう。すると普通なら断るはずの懇願を、守ってやると、大丈夫だと、任せろと力強く頷いてくれた。私に普通の生活をさせる、と。知らないはずなのに欲しいものをくれると。

 そんな人が現れるなんて思ってなかった、このまま死んでしまうのだと思っていた。


 だから、物語の主人公みたいに優しい『ご主人様』を好きになってしまうのは仕方の無いことだ。

 突然ダンジョンに連れてこられたけど、そのおかげでご主人様に好きだと言って貰えた。


 2人で、早くここを出ようと言って笑いあったのだ。


 なのに、どうしてこうなってしまったの?


 今の私は、瀕死の重体だ。

 背中から貫通している傷が見える。痛い、怖い……言葉が思うように出せない。


「もうすぐ死んじゃうね?可哀想に……助けてもらえないみたいだね?」


 自分がやったのに、ご主人様が悪いみたいに言わないで欲しい。ご主人様はちゃんと助けようとしてくれてる。

 でも、私を置いて逃げればもしかしたら助かるかもしれない。ならばと、必死に声を絞り出す。


「ご主人……様、もう、いいから……逃げ、て……」


「ダメだ!俺は絶対に諦めない!!」


 1人で逃げてくれないのが悲しいのと同時に、凄く嬉しいと思ってしまうのはいけない事だろうか?


 その後ご主人様は俯いたまま顔を上げない、死神は痺れを切らしてしまったようで。


「あれぇ?中々諦めないなぁ。……仕方ないから僕がその子を殺してあげるよ!」


 そう言って、ゆっくりと歩き出す。

 せっかくご主人様に、好きって言って貰えたのに……これからは自由な人生だと、2人の生活が始まるんだと思って、楽しみにしてたのに。


「そしたら、きっといい顔をしてくれるよね?大丈夫、後で同じ所へ送ってあげるからさ!」


 ――誰か、助けて……ご主人様だけでいい。だから、お願い……


 でも、死神の足音は止まることは無かった。


「ほら、死んじゃうよ?君の大切な人。」


 死神は、そう言って笑いながら剣を振りかぶる。


 ああ、終わり……なんだ。本当に少しだけだったけど……凄く、幸せだったよ……ご主人様。


 そんな風に、諦めて目を瞑る私だったけれど……この時の私は分かっていなかった。

 ご主人様は、どんな時でも……


 ――ドゴォン!!


 ……諦めたりなんかしないってことを。


 奴隷商でも、ダンジョンでも、私が欲しかった言葉を言って救ってくれた。普通なら無理があると、諦めてしまうような事ばかり。

 与えられた力だとかは関係ない、確かな心の強さを感じていた。今もまだ、何も終わってない。

 信じた人の温もりは、すぐ傍にある。


 だから、諦める必要なんて無い。


「俺のフィエナを殺させる訳ねぇだろうが」


 ほら、やっぱり聞こえて来た。

 私のご主人様で、大好きな人の声が。


 ☆


「……ご主…人様、大丈、夫……?」


 馴染んで来た力を使って、ギリギリ……本当にギリギリでシグマを殴り飛ばす事に成功して、崩れた壁の中で生き埋めになっている。

 そして、抱えているフィエナからそんな言葉がかけられた。

 返事をしたいが、その前に傷を治さなければ。


 理の覇者の固有スキルだろうか。何かは分からなくとも、フィエナにかかった術とやらがよく見える。

 固く細い糸が、無数に傷口に張られているような見た目だ。

 魔力を指先に纏わせて、素早く解いてみる。どうやら、見えてしまえば楽に解除出来るらしい。

 術が無くなったのを確認して、ハイヒールをかける。すると、今度は綺麗に治すことが出来た。


「……ありがとう……また、一緒にいられる?」


「ああ、もちろんだ。それと、もう大丈夫。遅れて悪かったな。」


 フィエナは何で急に強くなったのか、とかは聞いてこない。ただ「……頑張って来てね」とだけ言って、邪魔にならないように下がる。


「良くも、やってくれたね!」


「うるせぇよ。フィエナを苦しませたんだ、生きて帰れるとは思うなよ?」


 瓦礫の中から出てきて叫んでくるシグマに、悪役が言うようなセリフを返す。

 最初と同じ突進をしてきたが、今となってはただの馬鹿にしか見えない。謎の声が言っていた、『雑魚になる』っていうのは本当だったらしい。

「うるせぇよ」と同時に上に蹴り飛ばして、落ちてきた所で背中を踏みつける。


「うぐっ……どうして、急に強く……」


「教えない。それよりも、何で俺たちをこのダンジョンに連れてきたのかを吐いてもらおうか。」


 いつもよりも低めの声でそう言う俺。しかし、シグマは立場が分かっていないようだ。


「な、なら、僕も教えてなんてやら無――ガハッ」


 ふざけた事を言い始めたシグマの腹を蹴り「答えるよな?」という意味で、ニッコリ笑う。


「お前なんか……油断しなければ……」


 ブツブツと文句を言って答えようとしないシグマだが、次の一言で青ざめることになる。


「んじゃ、もういい。そこまで知りたい訳でもないし、死んでもらおうか。」


 無論、ブラフだ。

 知りたいに決まっているし、全力で吐かせるつもりだ。だが、お子様脳のシグマにはそんな事は分からなかったのだろう。


「わ、分かった、言うから!……そこの獣人のお姫様を殺すように言われたんだ。」


 俺は、誰に言われたのかを当然聞く。


「そ、それは……」


「あー、手が滑って切り殺しちゃいそうだなぁ……」


 黒薔薇を握った手を、シグマの首の上で揺らす。完全に脅しだが、敵だから問題無いはずだ。


「……… 名前は、ゲルゼン……魔族の男で僕を育てたんだ。」


「魔族に育てられた……ふむ、それが本当だとして何でフィエナを狙う。」


 ここに来た時は、てっきり俺を狙っているものだと思っていた。フィエナを狙っているのなら、俺と会う前にすれば良かったんだから。


「詳しくは知らないけど、脅威になるからって……それで、盗賊の男達を使って襲わせてたんだど……君が倒してしまったようだし。」


 俺がテンプレだと思っていた盗賊は、こいつが雇ったやつらだったと。


「だから仕方なく、君たちが通った時に反応する仕掛けを作って置いたんだ。」


「で、森で見つけた俺たちをここに連れてきたと。」


 フィエナが脅威に、ね。怪しいのは、ユニークスキルの『???』だろう。

 それ以外は至って普通のステータスだったからな。


 と、考えていると俺の足から抜け出したシグマが話しながら攻撃してくる。


「だから、僕が死んでもそこのお姫様は殺されるのさ!君の目の前で無残にねぇ!」


 先程よりも早くなっている。魔力からして、身体強化だろう。

 だが、しかし……


「なんつった、お前?ふざけんじゃねぇぞ」


 思わずイラッと来た俺は、黒薔薇を振り下ろす。すると、タイミングが悪く、シグマの首に吸い込まれるようにスパッと逝ってしまった。


「「……あ」」


 本来であれば肩をスパッとやるつもりが、変な受け方をされたせいで首にズレてしまった。

 最終的には殺すつもりではあったが、覚悟のない一撃で仕留めた事に罪悪感が募る。

 どうしよっかなぁ、と思いつつ後ろを振り返る。しかし、フィエナはすぐ側まで近寄って来ていた。


「……詳しくは、聞けなかったけど……終わったんだから、もう帰ろう?」


「まあ、それもそうだな……つっても、どうやって帰れば良いんだ――」


 俺が首を傾げたのと同時に、俺の視界は一瞬だけ暗闇に包まれた。次に光が戻ってきたかと思えば、今度は地面が遠いという状況に混乱する。


「フィエナ、大丈夫か!」


「……ご、ご主人様……い、一応?」


 飛ばされる前俺の腕を掴んでいたが、今もそのまま掴んでいた。このままでは落ちた時にフィエナが助からないので、お姫様抱っこで抱える。

 そして、『天駆』で斜め下に跳んで落下速度を緩めていく。

 地面から数百メートル程で、完全に止まることが出来た。そこからは、階段を下りるようにして行った。


「これは、戻れたって事で……良いのか?」


「……ん、多分。元々居た森とは違うみたいだけど。」


 確かにどう見ても違う場所だし、離れた場所に見えた街も大きかった。

 考えてみた結果、シエラに連絡してみた。


『どうしたの渚くん!怪我したの!?』


 1秒と経たず出てくれるのは良いんだけど、凄い慌てぶりだ。


「違う、出る事に成功したんだ。だけど、場所が分からないから教えてもらおうかなってな。」


『それなら良かった……えーっね、そこは……君が居た街から100kmくらいにある、アルシミナって国だね。それで、街の名前はイルメラって言うの』


 別の国まで来たのか……いや、それは良いんだけどな。それよりも気になることがある。


「そこは亜人……というか獣人は平気か?」


『うん。この国自体が亜人差別は無いし、大丈夫だよ。……というか、どうして全然連絡してくれないのかな?』


 責めるような口調に、つい慌てて言い訳のようになってしまう。


「えっと、それはだな、大変だったし仕方ないって言うかさ……」


『フィエナちゃんとイチャイチャする時間はあるのに?』


 くっ、見られていたのか……と、黙る俺にシエラはため息をつく。


『はぁ、ホントにしてたの?……冗談だったのに。まぁ、良いけどね…そろそろ行けるし。』


「え?どこにって……もう切れてるな。」


 カマかけてただけなのは驚いたが、行けるってなんだ?


「……どうだった?」


「あ、ああ、場所は確認できたぞ。アルシミナって国で、街の名前はイルメラらしい。」


 フィエナは知らないようだが、行ってみれば分かるはずだ。亜人差別が無いなら、別に何処でも大した問題は無い。

 行けるっていうのが何かは気になるが、分からないものはしょうがないだろう。


 そうして、歩き始めて数分してからフィエナが尋ねてきた。


「……やっぱり、シグマを倒したから……戻ったの?」


「多分そうだろう。でも、あんな上空に放り出されるとは思わなかったよなぁ。」


 コクコクと頷く様子を見るに、その事が言いたかったんだろう。あれは、『天駆』が無ければ俺でもダメージを受けていたはずだ。フィエナであれば即死は免れなかった。

 それでも戻れたことには変わりないので、良かったと思う。


「……死んでも、迷惑な子供。」


 殺されかけた本人だからな、そう言いたくもなるだろう。俺も色々聞く前に、イラッと来て殺っちゃったしなぁ。


 街は数十分程で見えてきた。

 ちなみに、途中でボロボロになっている服に気づいた俺達は違う服に着替えている。

 フィエナは前の服で、俺は……謎素材のズボンににTシャツ、黒のパーカーだ。

 異世界に来てまでする格好では無いが、落ち着くので良しとしよう。

 実際俺は殆どダメージを受けていないのだが、魔物の血とか、フィエナの血がついているので着替えた。


「はい、次の人身分証見せて。……そっちの女の子は奴隷なのか?」


「ん?ああ、そうだな。それがどうかしたのか?」


 ここでは差別は無くても、奴隷自体は問題ないはずだ。


「いや、奴隷にしては随分と綺麗だと思っただけだ。……よし、通っていいぞ。」


 フィエナが美少女なのに奴隷は関係ない気がするが。と考える俺の目に1人の奴隷が見えた。

 フィエナと見比べる事で理解する。

 綺麗と言っていたのは、容姿の話ではなかったのだ。普通の奴隷は体が汚れていて、服もボロボロなのが当たり前。なのに、風呂に入って綺麗にしていたり、高い服を着ているフィエナ。確かに、奴隷なのか?と聞きたくなる気持ちも分かる。


「奴隷から解放した方がいいよなぁ。」


「……え……?」


 俺が呟いた言葉に、フィエナは立ち止まってしまう。何か問題があっただろうか。


「……す、捨てるの?」


 どうやら、解放するのを捨てられるという事だと勘違いしたらしい。


「……な、何でもするから、捨てないで……」


 何で捨てると思うのか。ちゃんと、想いを交わしたと言うのに。

 だが俺が喋ろうとしたのを遮って、フィエナの後ろから男が現れる。


「じゃあ、俺様が貰ってやるよ!」


 と、フィエナ腕を掴もうとしているが、


「いや、ダメに決まってるだろ。」


 俺がそれを許すはずも無く、フィエナを引き寄せて回避する。


「おい、俺様が貰ってやると言ってるんだ。よこせよガキ。」


「悪いが、さっきのはこいつの勘違いでな。あんたには悪いが、捨てる気なんて全く無いんだ。」


 睨んでくる男に、話し合いで解決しようとする。勘違いは誰にでもある事だからだ。


「ンなこたぁ知らねぇさ。俺様が欲しいっつってんだから寄越せ。死にたくなきゃな!」


 相手の実力も分からないのだろうか。

 いや、普通の人には分からないのが当たり前なのだろう。俺も、魔力視と神眼が無ければ分からないし。……達人は、分かるのだろうか?


「き、君。あいつはBランク冒険者なんだ。可哀想だとは思うけど、大人しく従った方がいいよ。」


 そういって話しかけてくる見知らぬ男性。優しさから言ってくれてるのは分かるのだが、フィエナを諦めろと言われて軽くイラッとする。


「問題ないよ。あの程度なら何とかなる。」


「俺様に勝てるとでも思ってんのかぁ?ヒョロいガキのくせに。」


 煽るように言ってくるが、この男は根本的に間違っている。


「何言ってんだ?ステータスが高ければ見た目はリーチの差くらいにしかならないだろ……」


「……ふふふっ、確かに。」


 俺に呆れられ、フィエナに笑われてしまった男は致命的な一言を言ってしまう。


「このクソガキがっ!目の前でその女犯されてぇのか!――ヒッ!?」


『スキル【殺気】を取得しました。』


「なあ、死にたいのか?」


 フィエナに対してちょっとふざけた事を言われると、切れてしまうのは短気過ぎるかもしれない。

 スキルになった俺の殺気によって、男の心は折れたようだ。


「聞いてるんだから、答えてくれないか。」


「わ、悪かった……許してくれ……」


 ステータスの差があるからなのか、俺が思っている以上に切れていたのか。


「二度としなければ別にいいさ。じゃあな……」


 そう言って、後ろを振り返る俺。しかし、少し歩くと街の人の悲鳴が上がる。


 ――バキンッ


「何で人の善意を無駄にする訳?」


 やりそうだとは思っていたので、黒薔薇を抜く準備をしていた。剣を折って、男は蹴っておく。


「じゃ、もうやるなよ。」


 そう言って歩き出したが、フィエナが心配そうな顔だ。奴隷解放の話だろう。


「さっき言ったのはな、フィエナが奴隷じゃない方が良いだろうと思っただけなんだよ。」


「……そう、だったの?……でも、奴隷のままでもいい。」


 気にしない、という事だろうか?

 不便な事もあるだろう。と、言う前にフィエナが話し出す。


「……奴隷って事は、私の全部がご主人様のものって……証だから……」


 そんな事を俯きながら言ってくる。

 人によっては重いと考えるかもしれないが、俺としては凄く嬉しいし可愛いと思う。

 しかし、奴隷ではなく、1人の人間として傍にいて欲しいと思う気持ちもあるので折れる訳にはいかない。


「うーん、この話は後にしようか。まずは、行く場所を決めないと。」


「……ん、分かった。」


 ぽんぽんと頭を撫でながら、そう言って話を終わらせる俺。先程から歩いてはいるが、適当に進んでいるのでいい加減に目的地を決めたい。


「……先に宿で寝たい……丁度そこにある、し。」


 その言葉通りに、見える所に宿が見える。正直俺も疲れていたので、そうしたい所だ。


「じゃあ、そうするか。」


 ドアを開けて入ると、視線が集まる。


「あの子可愛いな……」


「あの男……死ねばいいのに」


 主にフィエナが可愛いと言うものと、俺に対する嫉妬の2つだ。

 俺のフィエナをジロジロ見るなと言いたくなるが、一々気にしていてはもたないだろう。

 カウンターの所まで行くと、同い年くらいの女の子が出てきた。


「いらっしゃいませ、コモリの宿へようこそ。本日はお食事でしょうか?お泊まりの場合はこちらのお部屋が空いていますよ。」


「宿泊の方だ。……フィエナ、部屋はどうする?」


 空いてる部屋は、1人部屋2つと2人部屋。

 コモリが小森や子守り、それとも引き籠もりに変換されるのか気になりつつ部屋決めをする。

 というか、何故女の子はキラキラした目で見てくるんだ?


「……普通に、2人部屋がいい。」


「そうか。……という事だから2人部屋を、とりあえず1泊頼む。」


 何故女の子は頬を染めるのだろうか。……ああ、年頃の男女が同じ部屋に泊まるからか。

 ハングラーの街では、女の子として見られていなかった為にそんな反応はされなかった。

 俺達はダンジョンでずっと一緒だったせいでそんなに気にしていないが、それも良く考えればおかしいだろう。

 

「ここでは、お風呂もありますがどうします?15分で100ミルとなりますが。」


 風呂はゆっくり入りたいので、一眠りして起きるくらいに2時間程とる。俺とフィエナが1時間づつ入れるようにした。


「では、お部屋にご案内します。」


 着いた先は、かなり清潔感のある整った部屋だった。ハングラーとはかなり差がある。


「えっと、ぼ、防音になっていますのでどうぞお(くつろ)ぎ下さい……」


 赤くなりつつ、寛いでいない想像をしていそうな女の子がそう言って去っていく。


「ここは普通にベッドが2つだな。……それじゃ、すぐに寝るとしよう。」


「……そうする。」


 余計なことは考えないようにして、ベッドの上で横になる。そして、フィエナも横になる。……俺のベッドで。


「ここで寝るのか?狭いと思うけど。」


「……一緒が、いい。」


 それならいっか、と目を閉じる。

 それにしても、普通の宿で寝るのはこれで2回目だというのが驚きだ。だが、これからは安全な場所で寝れるのだから喜ぶべきだろう。

 そんな事を考えながら、眠りについたのだった。

殺っちゃったぜ☆

まあ、ここで全部言われても面白くないので。

次回は、渚くんが夢を見ます。

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