10話『絶望と意志』
ブックマークが増えてると嬉しいですねw
あれは、やばかった。
俺が十分に満足したので、そろそろ終わらせるか?と聞いたら……
「……らめぇ……やめないれぇ……」
そう言われて気絶するまでモフっていたのだが、その後が問題だ。
フィエナが可哀想なので詳しくは言えないが、簡単に言うと事後にしか見えない感じだ。
寝る前に生活魔法で綺麗にしておいたので、大丈夫だったが。
「……ん〜……ご主人様……?ちゅ〜……」
横にいるフィエナの頭を撫でていたのだが、起こしてしまったようだ。
それを謝ろうとしたら、いきなり深い方のキスをされた。
可愛いので好きなようにさせていると、だんだん目が覚めてきたらしく離れていく。
「……おはよ。……それと、ごめんなさい。」
「おはよう。全然気にしなくていいぞ、初めてしたけど良かったし。」
初のディープキスにしては、痛かったりは無くて良かったと思う。
「それじゃ、飯をあっためて来る。」
昨日の生姜焼きがまだ残っているので、それを朝食にする。
「……そっちじゃ、無いのに……」
何となく分かってはいたので、あえてそっちには触れなかった。俺も止めればよかったな、とは思っているが別に嫌な事は全くなかったからだ。
という訳で、普通に食事を終えた俺達は緊張感のある空気になっている。
それもそうだろう、ここに連れてきたやつを今から倒しに行くんだから。
これまでのボス部屋等とは違い、どれくらい強いのか完全に未知数。
最善を尽くすためには、改めて自分のステータスを確認しておくべきだろう。
Lvが上がる回数が多過ぎて、途中から確認していない。
スキルも増えて、中々壊れてきた自分のステータスを開く。
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ステータス
名前:星乃渚紗
性別:男
種族:人間
年齢:17
職業:剣聖Lv71
レベル:126
HP 1400000/1400000
MP 740000/740000
STR 234000
VIT 176000
AGI 360000
DEX 270000
INT 210000
【所持スキル一覧】
通常スキル
『身体操作Lv5』『女神の加護LvMAX』
『女神の寵愛LvMAX』『気配察知LvMAX』
『気配隠蔽Lv3』『思考加速』
『アイテムボックス』『HP自然回復LvMAX』
『MP自然回復LvMP』『MP増加LvMAX』
『危機察知Lv5』『状態異常耐性』
『消費MP軽減LvMAX』『瞑想Lv2』
魔法スキル
『生活魔法』『火魔法Lv3』『風魔法Lv3』
『闇魔法Lv3』『魔力操作LvMAX』
『空間魔法LvMAX』『重力魔法LvMAX』
『身体強化LvMAX』『魔刃Lv6』
『回復魔法Lv7』
武術スキル
『縮地Lv6』『刀術LvMAX』『剣術Lv6』『天駆Lv4』
ユニークスキル
『取得経験値二倍』『スキル獲得難度1/10』『無限収納』『特殊隠蔽』『モフモフLv4』
耐性スキル
『物理耐性Lv3』『全属性耐性LvMAX』『毒無効』『精神耐性Lv6』
補正スキル
『魅力補正Lv2』『立体機動補正Lv2』
『全能力補正LvMAX』
エクストラスキル
『神眼Lv2』『必要経験値1/2』『限界突破Lv1』『魔力視Lv2』
職業固有スキル
『神聖剣術Lv1』
【称号】
『女神の加護』『女神の寵愛』『転生者』
『フィエナの主』『モフモフを愛する者』
『鋼の男(精神的に)』
所持スキルポイント:1492
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そうか、Lvって100が上限じゃなかったんだな……というか、上限あるのか知らないけど。
今のところ、AGIがダントツの1位だな。
それは良いとしてもDEXがSTRを超え始めたのは、職業の関係だろうか?
INTもVITより高いし、もしかしたら大器晩成型みたいな感じなのかも知れない。
ちなみに剣聖のスキルは刀じゃ使えなかったが、AGIにかなり補正が入るので変えないでいた。
次はスキルだが、未だに使っていない『限界突破』というものがある。
これは、「リミットブレイク」をキーにステータスを引き上げるらしい。
使用者のINTと込めた魔力の量によって、かなり効果が変わると。
これに関しては、とても重要なのでLvMAXまで上げておく。
残りSP
1492→1418
舐めてかかれないだろうと、スキルの大量取得を始めようとしたその時、ドアが吹き飛んだ。
出発できるように着替えだけはして、ソファーに座っていたのは正解だった。
「せっかく予想以上の早さだって喜んでたのに……こんな近くで待たされたから、つい来ちゃったよ!」
いや、来るんじゃねえよ!
そう叫びたい気持ちは分かってくれるだろう。
しかし、ここは異世界であってゲームのダンジョンでは無いのだ。
自分の作ったダンジョンの部屋なんかに閉じ込められるわけはない。ずっと同じ部屋にいた事で、俺が気づかなかっただけで。
「もう少し、待っててくれると助かったんだがな……」
そう愚痴を零しながら、フィエナを離れたところに運ぶ。
「それにしてもすごいね!どうやってこんなに早く来たの?湖の水龍とかは森で色々探し回ってるはずなんだけど……」
「本当はそういう攻略法があったのか……まあ、俺は普通に跳んだからな。」
3人以上だったなら探していたかもしれないが、フィエナだけなら抱えていけばいい。
「と、跳んだ?じゃあ、一撃で倒したんだ!それなら、僕と少しは戦えるかもねー。」
何やら勘違いをしている。
しかし、一撃で倒せて『戦えるかも』?今の俺ならもしかしたらいけるかもしれないが……スキルを取れなかったのは痛いな。
話を聞いてくれるやつなら有難いんだが。
「なあ、少しだけ待ってくれないか?準備させて欲しい。」
「えー、ダメだよ。ダンジョンで敵と会ったら、戦闘開始が基本でしょ?」
じゃあ、今話してるのは良いのか?と思うが、そこは子供の思考なのかも知れない。
何か手はないか考えていると、勝手に名乗り始めた。
「僕はシグマ、殺すために君をここに呼んだのさ。……それじゃあ行くよ?耐えてもらわないと面白くないから、頑張って!」
何か言う暇もなく、攻撃をしてくるシグマ。
ギリギリ黒薔薇を抜くのが間に合って、防ぐのは間に合った。しかし、俺は必死で耐えているのにシグマは余裕の表情。
『縮地』で離れ、シグマが体制を崩している間に『身体強化』『魔刃』『限界突破』を発動する。
「リミットブレイク!」
先程の何倍も力が溢れてくるように感じるが、これでもシグマは余裕なまま。
「お〜強くなった!もう少し力を入れても、平気そうだね?」
嬉しそうに笑いながら同じように攻撃してくる。……同じなのは攻撃の仕方のみだったが。
「くそっ、どんだけ余力残してるんだこの野郎!」
吐き捨てるように言ったのだが、シグマは答えを返して来る。
「ん〜、今で4割くらいかなぁ。」
これは、マジで死ぬかもしれない。
限界突破を使った状態でやっと反応できるような攻撃が、4割。つまりは、これを2.5倍したのが本来の実力ということだ。
ついでに言うなら、シグマは身体強化等は使っていないのでそれ以上かもしれない。神眼でステータスを見ようとしても、弾かれてしまったので確認する術はないが。
「こんなに耐えられる玩具は初めてだよー!」
「誰が、玩具だ!」
馬鹿正直に突進してくるシグマの攻撃を何とか避けて、反撃する。だが、それも笑顔のまま普通に避けられてしまう。
ならば魔法はどうかと思ったが、シグマの攻撃が速すぎるせいでそんな暇はない。
そんな風に、防戦一方のまま時間が過ぎること15分程。突然、シグマの動きが止まる。
「うーん、ちょっと飽きてきたかも。ちょっと、面白くしてみようか?」
「……え?何!?」
そんな言葉と共に指を鳴らすと、後ろからフィエナの驚く声が聞こえる。
ばっと振り返ると、そこには天井から吊り下げられて魔物に囲まれるたフィエナが居た。
「……や、いや、来ないで……」
何も出来ないフィエナは、いやいやと首を振って怯えている。
「おい、お前……何のつもりだ!」
「大丈夫だって、障壁があるからさ。2分で解けるから、急がないと食べられちゃうけどね!」
シグマを倒して、フィエナを助けなきゃいけないって事か?そんなの、間に合うわけ……
「ほら、邪魔しないであげるから助けに行きなよ。」
「は?一体どういう……」
どういう事だ?と聞きたいところだが、高みの見物をさせてもらうと言うことかもしれない。
それなら、と走って向かう。2分以内に倒さなければいけないので警戒はしつつ攻撃する。
一撃で倒せるが、数が多くて焦る俺。何とか間に合って、解けると同時に最後の一体を倒すことが出来た。
「良かった……大丈夫か?」
フィエナを吊り下げていたロープを切って、立たせてやる。
「……ん、大丈夫。ご主人様ありが――」
その言葉は最後まで続かなかった。
「フィエナ……?」
目を見開いたかと思ったら、今度は口から血を吐き出す。
……いや、それだけじゃない。その腹部からは、剣が突き出ているのだ。
「あははは!残念でしたぁ!」
「この!!」
黒薔薇を振るうが、既にシグマは遠く離れた場所にいる。俺は、急いで回復魔法のLvをMAXまで上げる。そうすれば、フィエナの傷は治るはずだ……本来ならば。
「何で……何で塞がらないんだよ!」
そこに、実に不愉快なシグマの声が聞こえてくる。
「ただの魔法じゃ治らないよ?傷の修復を妨害する術をかけたからね!ちなみに〜、僕が死んでも解けないからっ。はははっ!」
「戦いたいんじゃなかったのか!?」
戦いに来たんだと、そう思っていた。でも、それは大きな間違いだったようだ。
「確かに、戦うのは好きだよ?でもね、人が絶望している表情を見るのは大好きなんだよねぇ!」
どうして、こんな事になったんだ?
俺がこの世界に来たから?
俺がフィエナを買ったから?
俺が……?
違う、あいつがやったんだ。考えろ、この状況を打開する方法を!
その瞬間俺の中は、怒りとフィエナを助けたい気持ちの2つだけが支配していた。
どうしたらいいんだ!と、ギリギリと音がなる程に歯を食いしばって必死に考えを巡らせる。
「もうすぐ死んじゃうね?可哀想に……助けてもらえないみたいだね?」
そんなことはさせない、絶対に助ける!
「ご主人……様、もう、いいから……逃げ、て……」
「ダメだ!俺は絶対に諦めない!!」
その意志に呼応するように、道が開け始めた。
『意志を一定以上確認。職業【理の覇者】を解放します。』
『【理の覇者】を自動的にセットします。』
勝手に変えられた理由や、意志によって解放される職業とは何なのか。
それを疑問に思う暇もなく、『選定』が始まる。
『あなたは、何の為に力を欲するの?』
――急に、何なんだ。一体誰だ!
『落ち着いて。私は、この職業にあなたが相応しいかどうかをテストしているの。答えによっては、状況を打開する力が手に入るわ。』
――なに?……なんの為に、だったか?そんなの決まってる、理不尽から守る為に。
シエラと話していた時のように、考えが勝手に読まれていく。
『それは、全ての人をって事かしら?』
――違う、他人は入ってない。俺の身近な存在だけだ。
『そんな利己的な考えでいいと思うの?』
――全てを守る、なんて出来るわけが無い……俺の側にいるやつだけで精一杯だ。言うとしたら偽善者か、ただの馬鹿だ。
『じゃあ、最後に1つ質問。神も超えるような力をあげるって言われたら、どうする?』
――嫌だな、面倒だし。それにそんな力を持ったら、調子に乗ってフィエナを傷つけてしまいそうだ。
『あはっ、私好みの臆病な回答だわ。でもね、そんなこと考える人は力に呑まれたりしないものよ?』
――それでも、俺には必要無い。
『本当に臆病なのね。でも、そんなあなたが気に入ってしまったの。』
――まさか、さっきのが冗談じゃ無かったとか言わないだろうな?
『そのまさかよ。大丈夫、あなたなら問題なく使いこなせるから。力が馴染むまでは動いちゃダメよ。それがあればそこの子供なんてただの雑魚に早変わりするわ。それじゃあね。』
結局誰なのか分からないまま、声は遠のいて行った。それと同時に、俺の全身が不思議な感覚で満たされていく。
そして、俺が絶望しない事に痺れを切らしたシグマが喋り出す。
「あれぇ?中々諦めないなぁ。……仕方ないから僕がその子を殺してあげるよ!」
いきなり出てくるシグマ。
いや、そうしないと勝てちゃうかなって……ここからが本当のチートですから。
それと、次はフィエナ視点を挑戦してみますので!