第3話「組織」
ここまでのあらすじ。
異世界に飛ばされ、救済を求めるべくギルドへ向かっていた木道優魔は、一本の路地裏へ引き寄せられるように入っていった。そこへ突如現れたローブ姿で顔を深く隠している謎の3人組。その内の1人が素顔を見せると、この世とは思えないほどの美しい美少女だった。
フロリア・ネビロス・ティターニャ。
彼女は静かに自身の名を告げた。
年齢は恐らく俺と同い年ぐらい。もしくは少し年下だろうか。先ほどの大男とは違い、背丈も一緒ぐらいの彼女を見れば見るほどその容姿は美しい。髪が靡くと、ほんのり甘いフルーティーな香りが鼻をくすぐり心地よさを感じる。
「ほら、あなた達も自己紹介して」
後ろで微動だにしない2人組に放った言葉だった。顔を少し後方へ傾け、先程俺に向けられた笑みは一瞬にして消え去る。
その言葉通りにフロリアの後ろに居た1人。小柄でまるで子供かと思わせるその背丈の人物がゆっくりフードに手をかけた。
「レヴィ・バアル・アラサーン。よろしくね。主様」
その姿は本当に少女であった。中学生?いや、小学生ぐらいの小さな女の子。真っ赤な髪が特徴的だが、その色に威圧感は感じなかった。淡い赤色の短髪が、寝起き直後のように毛先が四方八方に向いている。成長すれば誰もが振り向くような美女になること間違いなし。と思ってしまう整った顔立ち。
「よ……よろしく……ね」
たどたどしい初めましての挨拶となってしまった。
一本の線をなぞるような平坦で抑揚のない声。
感情をどこかへ置いてきたようなその表情は、不思議と嫌悪感はなく、聞き入ってしまう。
「レヴィ?あなた誰に話しかけてるのかわかってるのかしら?私たちの前に居られるのは……」
フロリアは眉間を少し狭くし、吐き捨てるかのように注意を放った。
「わかってる。主様」
フロリアの言葉を遮る。表情を1つ変えないレヴィは、月色に輝く黄色の瞳を真っ直ぐ俺に向け続けた。
「わかってるのならもう少し話し方ってものがあると思うのだけれど……」
「まぁまぁ……その辺にしといたらどうですか?木道優魔様のことになると、冷徹な司令官とは程遠くなるんですから」
もう1人。可愛いらしい声色とは裏腹に、芯が通った強い意志を感じさせるその声。フロリアの後ろにフードを深く被った人物が素顔を見せた。
「申し訳ありません……木道優魔様。お見苦しいところをお見せいたしました……クレア・メフィストフェレス・オーリーと申します」
ピョコンとフードから現れたエルフの耳。
その耳にかかる肩まで伸びた陽光を、そのまま糸状にしたような眩い金髪。しっかり手入れされたブロンドヘアーの毛先は反り上がり、誰もが振り向くであろう美女。
フロリアはクレアに逆らうことなく、レヴィとの会話を終わらせ、少し不満な様子な表情でクレアを横目に見ていた。
クレアはフェイスラインから少しはみ出す大きな銀縁の丸メガネを人差し指でクイッと上にあげる。透明すぎてレンズが入っていないかのような錯覚を生み出す魔のガラスの奥には、鮮やかな紫色の瞳が輝く。
「俺の名前……知ってるのか?」
「もちろんですよ!フロリアからもあった通り、私共はあなた様をずっとお待ちしておりました。あなた様が進む道に私の生と死を添えさせてくださいませ」
紫色の瞳が見えなくなるほど目を閉じ満面の笑みを浮かべるが、その発言には強い意志が伝わってくる。
その隣でレヴィも無音でコクリと頷いてた。
「そ、そっか……ありがと……」
ドン引きだ。
俺の顔のあらゆるパーツが引きつっているのが自分でもよく分かる。
何なんだこれは……ドッキリなのか?新手の詐欺か?
ここまで尽くしてくれる意味が理解できない。
確かに絶世の美女3人にここまで言われたらもはや異世界召喚勝ち組コースだろう。
あんなことやこんなことのムムムな状況……は一旦置いとくとして、今後の生活が困窮することなく、不便という言葉とは程遠い生活を送れるのではないだろうかと想像を掻き立てる。
だがしかし!
こんな高待遇とイコールしてそれ相応の災難が待っているのが現実だ。
実際俺が就職した広告代理店がいい例だ。残業なし!完全週休2日!副業あり!なんて謳っていても、蓋を開ければ、残業あり!週1日休み取れればいい方!副業なんて甘ったれるな!という内容だったわけで……
まぁ俺が仕事できないのがいけないのだが……
しかしこの3人と離れたとしても、俺には行く宛もなければこの世界の知識すら全くない……
風のふくまま気の向くままにってことか。
「……木道優魔様?なにか至らない点があったでしょうか?」
フロリアの瞳が揺れ、その端正な顔立ちはわずかな迷いを浮かべながら俺を気にかけてくれた。
「あ、いや!なんでもない!」
「そうでしたか……では木道優魔様、早速本題にうつらせていただければと思います」
「本題……?」
「はい……私達の組織についてです」
フロリアの表情が一変し、真剣な顔付きになる。
その緊張感を紛らわすかのように俺は唾を飲み込んだ。
太陽に雲がかかり、暖かった気温は少し肌寒さを感じる。
日差しが隠れ、雲によって現れた薄暗い景色が、これから話される内容に光がないことを示してるかのような演出をしていた。
「クレア?人払いの結界は?」
「もう唱えております」
フロリアの考えを常に把握しているかのようだった。
フロリアは一歩前に進み、それが会話の開始かのような合図に見えた。
「我ら、『フロンティア』についてお話いたします」
第3話「組織」を読んでいただき誠にありがとうございます!第1話に引き続き、第2話でも評価をいただいて本当に嬉しく思います!1人でも多くの方に読んでいただいていると思うと執筆する活力が沸いてきます!引き続きよろしくお願いします!
次回更新予定:6月18日(木)




