41.ハーブ調達
アレクシスたっての願いで、茶会のお茶にはアメリアのハーブティーが選ばれた。さすがに自家製ハーブティーが王族の茶会に出るなど思ってもみなかったのでアメリアは時間を取って温泉街にハーブを調達しにいく。
まさか部屋の鉢植えから引っこ抜いてきたハーブですなどとも言えないのでその辺りはうまく誤魔化しながらだ。
昼下がり、静かな御用邸と違い温泉街はとても賑やかだ。温泉にまつわる土産物から高原産ハーブの店まで店も多種多様にある。
その中でもハーブを取り扱う店にアメリアは入ると、茶会用のハーブを選び出す。
「お姉さんちょうどよかった。今はかなり安くなってるからお買い得だよ」
いらっしゃい、と声をかけた店番がアメリアに早速宣伝をしていく。
「へえ、今年はいっぱい育ったとか、そういうのですかね」
「いやいや、新しい商人がいつもの倍以上はハーブを卸してくれてね。おかげで薬草もハーブもたくさん売れるようになったんだよ」
こういう高原では環境の影響でそこまで大量にハーブが取れるわけではない。どこか群生地でも見つけたのだろうか。
「高原の薬草やハーブをその商人に任せたら今年はいつもよりずっと集まってね。おかげで売るものにはちっとも困らないよ。だから買ってってお姉さん。今ならハーブティー用のセージも安いよ」
宣伝文句を聞き流しながらアメリアはセージではなくラベンダーの束を買う。ラベンダーは香りからも落ち着けるし、安眠効果もあるリラックスするには最高のハーブだ。
茶会の時、少しでもコーネリアスの緊張をほぐしてあげたい。そんな願いもあってアメリアはこのハーブを使ったハーブティーを入れようと思ったのだ。
御用邸に帰ると、庭に珍しくアレクシスが出ていた。よくよく見ればルルと遊んでいる。くるくると動きまわるルルを撫でたり、抱き上げたりとすっかり仲良しそうだ。
「あ、アメリア!」
庭に入ればいち早くルルが気づいてアメリアの元に駆け寄ってくる。自分の腕からするりと抜け出したことをちょっと残念がるアレクシスに、アメリアはお辞儀をして挨拶した。
「殿下、ごきげんよう」
「アメリアさん。おかえりなさい」
「ただいま戻りました。コーネリアス様は?」
「修練が終わったからって部屋に戻ったよ。緊張しているみたいだから、励ましにいってもらえると兄としても嬉しいな」
「ええ、そうさせていただきますね」
「アメリア〜、アレクシスったら面白いんだよ。僕のこと黒焦げシチューくんって呼ぶんだ」
「だって、君がまるまってるのを見たら本で呼んだシチューのおばけにそっくりで……」
ルルがおかしげにいえば照れくさそうにアレクシスも笑って見せる、もうすっかり二人は仲良しになっているようだ。国王の偵察からこちらルルはひまさえあればアレクシスと遊んでいて、もうアメリアが主人なのかアレクシスが飼い主なのかよくわらかない状態である。
「だからって王子を呼び捨てにするのはやめないさいよ。もう、私の使い魔なんだからもっとらしくしなさいよね」
「だって抱っこがうまいんだもん、寝ちゃいたくなるのもわかっちゃうなぁ……」
「抱っこが下手で悪かったわね」
「アメリアも居心地はいいんだけどさ。僕もちょっとは遊びたいの〜」
全くマイペースな使い魔だ。元が猫から使い魔になったのだ、そういう気性は猫とほぼ変わらない。
「まったく、王子に失礼のないようにしなさいよね
「わかってまーす。アレクシス、僕がみつけた裏道教えてあげる!」
そのままぴょんと捕まえる暇もなくルルは庭の裏手に駆けていき、アレクシスも挨拶もそこそこにそれを追いかけていってしまった。




