その⑬ ~ キミの来た道 ~
穏やかな寝顔の青年を見つめながら
彼女はそっと、ささやきました。
「想い出の箱」 開けるわね、
キミの歩んだ道、見たいから、、、、、
未来へつながるその箱を
彼女はそっと、開けました。
吸い寄せられるように、彼女は箱の中に入ってゆきました。
青年のキミがいる。
赤いシクラメン咲く冬の道、
立ちすくむキミがいる。
夢破れて立ちすくむ
それでもキミは歩き出す
夢かなえるため歩き出す。
少年のキミがいる。
霞み草咲く秋の頃、
夢見心地のキミがいる。
やっぱりキミは歩き出す
夢掴むため歩き出す。
幼い頃のキミがいる。
向日葵咲く夏の頃、
何かに傷つくキミがいる。
傷つきつまずき転んでも
それでもキミは歩き出す
恐れることなく歩き出す。
赤ちゃんのキミがいる。
ミヤコワスレの咲く春に
穏やかな寝顔のキミがいる。
何も知らずに眠ってる
彼女は、赤ちゃんにそっと囁きました。
キミに逢うために 生まれて来たのよ、、、、、
涙が一滴、 赤ちゃんの頬に落ちました。
赤ちゃんにサヨナラをして
彼女は箱から出て来ました。
そこには、 同じ寝顔の青年がいました
彼女はまた、囁きました。
生まれて来て良かったわ
キミに逢えたから、、、、、
涙が一滴、 青年の頬に落ちました。
彼女と青年は
曼珠沙華の花のよう、、、、、
花は葉を想い、葉は花を想う、、、、、