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第三十五話

作戦会議の続きからです。どうなることやら。

「鈴蘭が話してくれたんだけど……実は春也と幼馴染なんだって」


 私の言葉に、花梨と梨子が目を見開いて何度も瞬きしてる。


「えーーーー!? そうなの!? 花梨、初めて聞いたよ、そんな話!」

「私も初耳です……あの二人が幼馴染だったなんて」


 よほど驚いたんだろう。花梨はおどおどしてるし、梨子は口をあんぐり開けたままポカーンとしている。


「家の事情で話せなかったんだって……私のようにお母さんのことでいろいろ悩んでいたみたいで。お母さんの命令で友達も作っちゃいけないって言ってた」

「なんで!? なんで友達作っちゃいけないの!? 意味わからないよ! どうしてなの、麻奈!」

「いやいや、それ聞かれても私には分からないよ! それに今日初めて聞いたし! そこまで踏み込んで話そうなんて思えなかったというか、聞いてよかったのか分からなかったし!」


 私がそう答えると、花梨は考え事をし始めた。

 一方梨子は思いつめたような表情で顔をしかめる。


「あの方もあの方なりにご苦労なさったんですね……」

「梨子……」


 梨子に話しかけるか悩んでいると。


「決めた! 私、紫藤鈴蘭さんと友達になる!」


 「え?」と、私と梨子は同時に声を出した。


「花梨? 急にどうしたの?」

「花梨、言いたい事は分かりますが今は……」


 花梨はすっと立ち上がり、私と梨子の方を向いた。


「だって悲しいじゃない! 友達は作るな、だなんて! 友達は邪魔、だなんて! 実の母親にそう言われるなんて……悲しいじゃない! 何で母親にやりたいことを制限されながら過ごさないといけないの!? 学校ではせめて楽しく過ごして欲しいじゃない!」

「鈴蘭さんずっと友達が欲しかったみたいだし、花梨がそう言ってくれるなら喜ぶんじゃないかな」


 学校で友達一人も作れず過ごすなんて寂しい。明るい性格の花梨となら、良い友達になれると思う。


「それなら私も一度お話してみようと思います。私のことを気にかけてくださって、お世話になりましたし……改めてお話してみたいです」

「梨子……。うん、そうだね。鈴蘭さん色々悩みながら過ごしてきたみたいだし、色々話せるといいね」

「はい、少しでも鈴蘭さんの力になれるようお話してみます」

「じゃあ、話ってそれだけだったの?」


 と、花梨がにゅっと会話の輪に入ってきた。

 そうだ。忘れかけてたけど、まだ話したことあったんだ。


「ううん。あと春也のことは『気にせずそのまま話しかけた方がいい』って。『邪険に扱う時こそ仲直りしたいと思っている人だから』って言ってた」


 私の言葉に、梨子と花梨は微妙な顔で傾げていた。なんか言いたげな表情をしてる。


「鈴蘭さんがそう仰るならそうなのでしょうけど……」

「聞いた話からすると正攻法でいっても上手くいかない気がする……」

「うん、私も今もそう思っているんだけど、鈴蘭さんが言うには『わざと嫌われるようにしている』らしいの」


 梨子が片手を顎に当てて考え込む。


「なるほど……幼馴染の鈴蘭さんがそう仰っているならそうなのかも知れませんね」

「もしかして何かあるのかな。わざと嫌われるようにして近づけさせない理由とか」

「その可能性はありそうですね。麻奈に対してのあの態度は納得いきません。異常過ぎるほど拒絶するなんて、何かあるとしか考えられませんね」


 理由……そこまでして突き放す理由があるというの? そんなに私を突き放したいの……?


「そうだ、春也君が拒絶する理由を知る為にも春也君の友達とかに話を聞いて情報収集をしようよ! 何か分かるかも!」

「それは名案ですね。春也君本人に直接聞いたとしても、あの様子からして話してくれないと思いますし。麻奈もそれで良いですか?」


 確かに、闇雲に春也に話しかけた所で状況は進展しない。それなら梨子や花梨の言う通りに情報収集をした方が手っ取り早そう。


「うん、私もそれで構わないよ」

「では話もまとまったことですし、本日は――」

「はいはーい! 花梨はまだありまーす!」


 え、花梨? まだ気になることあるの??

 横で梨子が呆れた顔でため息を吐いていた。


「はぁ、また花梨ですか……。で、今度はなんですか?」

「そういえば、鈴蘭さんとのバレンタイン勝負はどうなったのかなーって」

「あー……」


 見事に私と梨子の声が重なった。

 あの時って確か、渡そうとしたら先生から病院に連絡があってそれどころじゃなかったような……。


「ねぇねぇ、チョコ渡せたの? どうなの?」


 これは答えるべきなんだろうか。有耶無耶になってしまっているけど、確かなのは渡せなかったという事実があるだけだ。


「渡せたか渡せなかったと言えば、渡せなかったかな……あの後色々あってそれどころじゃなくなったし。結局渡せなかったから自分で食べちゃったけど」

「えー!? なんで!? もったいない! せっかく作ったのに! ねぇ、なんで!?」

「えーと、それは……」


 理由は母が倒れてそれどころじゃなくなったが理由なんだけど、花梨は忘れたのかな。私が言った方がいいのか迷っていると。


「はぁ、花梨……それは勝負が決まる前に、麻奈のお母様が倒れて大変なことになったからですよ。もう忘れたんですか?」


 梨子ありがとう。助かったよ。

 花梨は「あ……」と気まずそうな声を漏らした。


「そういえば…………そう、だったね……。麻奈、ごめんね」


 私は「ううん」と首を横にふった。花梨は普段からこういう子だ。あまり気にしたことがないし、その性格のおかげで何度も助けられているから気にしていない。


「大丈夫だよ、気にしていないから」

「ですが、花梨の仰ったように春也君にチョコ渡さなくて良いのですか?」

「それは……」

「それならもう一回チョコを作ったらいいんじゃないかな? そしてもう一度チョコを渡す! これでどう!?」


 フフンとドヤ顔でかっこつける花梨に対して、梨子は冷めきった目で見つめていた。というか、めっちゃ呆れてます……。


「花梨、春也君の状況を先程聞いたはずでは? あの状況でどうやって渡せと?」


 確かに、梨子の言う通りあの状態で渡そうとしても邪険に扱われて相手にしてくれなさそう。

 花梨は数秒考え込んだ後、真面目な顔に変化したと思ったらこちらを見てくる。


「うん、だから情報収集して、渡しても大丈夫な状況になったら渡せばいいんだよ。じゃないと、このままにしたら平行線のまま関係が変わらないじゃない。付き合うにしろ、振られるにしろ、どっちにしても前を向くためにも告白はするべきだよ」


 不機嫌になったのか、膨れっ面な顔でムッとしている花梨。

 花梨の言葉を聞いて、私の中に何か思いつく。隣を見やると、梨子も何か気が付いたみたいな顔をしてる。


「花梨……そうですね、花梨の言う通りですね。前に進む為にもチョコを作るべきですね」


「でも私、本音で告白なんて無理だよ。やろうとしてもなかなか思うようにいかないというか、難しいというか……」

「それなら手紙を書いてチョコと一緒に手渡すというのはどうでしょう?」

「て、手紙?」

「今時手紙を書いて手渡すって、梨子って古風な考え方だね~!」


 あ、今度は梨子が不機嫌になってしまった……眼鏡の位置を整えながらため息を吐いた。


「古風で結構です。スマホが主流の現代だからこそ、本心を伝える手段としてうってつけだと思うんです。特に本音が言えない麻奈には合うんじゃないかと」


 花梨、梨子、私の為にそこまで考えてくれるなんて……。私は思わず涙がこぼれそうになる。


「花梨に梨子、私の為に色々考えてくれてありがとう……私、もう一度チョコ手渡してみる!」


「そうそう! その調子だよ、マナ!」

「春也君の状況把握してから行動開始ですね」

「うん、明日から春也の友達とかに聞いて回ってみるよ!」

「花梨も春也君知っていそうな子に片っ端に聞きまくるよ!」

「私は男子テニス部のマネージャーとして、春也君と仲良さそうな人達に尋ねてみます」


 花梨が勢い良くベンチから立ち上がった。その瞬間、花梨の鞄がベンチから転げ落ちていったけど、本人は一切気にしている様子はない。


「よし、今日の作戦まとまったね! ではこれにて第一回作戦会議をお開きとします! 解散!」

つい投稿を忘れるので予約投稿を覚えました。便利だなと最近やっと実感しました。

次回もお楽しみに。

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― 新着の感想 ―
いよいよいろいろと動き出しますか。 うまくいくといいですねぇ……ええ、ホントに。
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