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番外編:結婚後②  離れない理由——ほどけていく夜の中で

浴室から上がって寝室へ入ると、バルスがベッドに腰かけたまま、分厚い本を読んでいた。

私はベッドに上がり、その隣に座る。

――いつもみたいに、腕の中に入りたい。

そう思って、少しだけ視線を向ける。

きっと疲れてるよね。

でも、でも……甘えたい。

一人でそんな葛藤をしていると、すぐに気づいたのか、バルスは本を閉じて脇へ置いた。

「疲れたか?」

そう言いながら、何のためらいもなく私を腕の中へ引き寄せる。

「うん、へへ」

思わず、しまりのない笑みがこぼれた。

そのまま彼の胸に顔を埋める。

大好きな匂いと、少し高い体温に包まれて、体の力が抜けていく。

この国は夏でも、日中は20度後半ほど、夜は10度後半まで下がる。

だから、バルスの腕の中はとてもあたたかくて、それ以上に安心できる。

彼は軽く私の頭を撫でてから、抱きしめたまま、また読書を再開する。

バルスが家にいるときは、大抵こうして腕の中に収まったまま、満足するまで甘えて、そのまま眠ってしまう。

そのせいで、最近は――

彼の腕の中じゃないと、なかなか眠れなくなってしまった。

目を閉じて、ページをめくる音をぼんやり聞く。

今日は朝から忙しかった。

灯火祭の出店準備で、食事亭の手伝いに追われていて、気づけば1日が終わっている。

バルスもまた、警備の打ち合わせで3日ほど城に詰めていた。

お互い忙しくて、まともに顔も見られていなかった。

だから――

少しくらい、甘えてもいいよね。

眠いけど……でも……

私は彼の、本を持っていない右手をそっと取って、自分の頬へ引き寄せた。

――構って、の合図。

その様子に、バルスは視線を落とす。

「眠たそうだな?」

「うん……まぁ……はは」

自分でも分かるくらい、気の抜けた声が出る。

「明日、お祭り楽しみだねぇ」

そう言って顔を上げると、返事の代わりに、軽く唇が触れた。

「明日はミドリも早いんだろう。もう寝た方がいい」

「うん」

へらっとした笑みで頷くと、今度は頬と額に、優しく口づけが落ちる。

そのまま体を横たえようとされて――

「もう少し、もうちょっとだけ……」

思わず首に腕を回して、引き止めた。

だって、3日ぶりだ。

バルスは小さく苦笑する。

「分かった」

布団をかけ直してから、もう一度抱き寄せてくれた。

「もう寝ろ」

その声に、素直に目を閉じる。

大きな手が髪を撫でる感触を感じながら――

私はそのまま、眠りに落ちていった。

――――――――――

相当疲れていたのだろう。

すぐに腕の中で寝息を立て始めたミドリを見つめながら、バルスは小さく息を吐いた。

……我慢しているというのに。

疲れているだろうからと、必要以上に手を出さないようにしているのに――

どうしてこうも無防備に甘えてくるのか。

幸せそうに眠るその顔を、少しだけ恨めしそうに見下ろす。

思考が変な方向へ向きそうになり、軽く首を振る。

そして、そっと額に唇を押し当てた。

起こさないように体を横たえ、腕を抜こうとして――

ミドリの両手が、しっかりと自分の腕を抱え込んで離さない。

引き抜こうと思えばできる。

けれど、それをする理由が見つからなかった。

小さく息を吐いて、力を抜く。

……まったく。

そう心の中でぼやきながら、もう一度だけ彼女の寝顔を見下ろす。

こんなふうに無防備に甘えられて、抗えるわけがない。

腕を取られたまま、目を閉じた。

温もりに包まれながら――

やがて、バルスもまた眠りに落ちていった。

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