第20話「サラの歌」
市街地 大通り
車道の車を破壊して暴れるクトゥルーモンスターたちと
果敢に戦う魔法少女の4人
なでしこは、新たに手に入れた武器マジカルナックルから繰り出すパンチで
クトゥルーモンスターたちを次々に倒して行く。
活躍するなでしこの姿に驚く、マヤ、アイリ、すずめ。
「すっげぇじゃねぇか!」
「レベル3になったなでしこちゃんは強いわねぇ。私たちもうかうかしてられないわ」
「や、やるじゃない……」
なでしこは、仲間に褒められて頭を掻きながら照れている。
***
魔法少女たちがアジトにしている廃ビル
床に置いたマジカルエネルギーから光の柱を伸ばして見つめている、りりかの姿がある。
「まだ、マジカルエネルギーが足りない……これでは御柱が」
「何をもたもたしているの?」と、魔法陣からピンクの魔法少女が現れる。
「西の魔法少女が何の用⁉︎」
「あなたたちが遅いから様子を見に来たのよ」
「大きなお世話よ」
「時間が無いのは事実だわ。御柱建築を急いで」
「この街にはすでにヒーローがいる。御柱を構築するための人々の希望や憧れを得るのはたやすいものじゃない」
「なら、あなたにピンクの魔法少女は早かったのよ」
「何ですって!」
「私たち魔法少女の目的は人々をクトゥルーに支配されない存在へと進化させること。
そのためにドルスとスメラギの2つの島に跨って五芒星を結ばないといけない。あと一つなのよ。これ以上遅れるのだったら
私たちがこの街に侵攻してヒーローもクトゥルーも倒してこの街の人々の希望や憧れを手に入れてあげるわ」
「はしたないわよ。あかり」と、魔法陣からもう一人のピンクの魔法少女が現れる。
「アイナ⁉︎」
「チッ、ドルスの魔法少女」
「りりかたちは、魔術協会やヒーロー、私たちが予期せぬクトゥルー以外の勢力とも戦っていた
のよ。もう少し見守る必要があるわ」
「手ぬるいのよさっさとそのヒーローたちから出番を奪っちゃいなさい」
「警告はした!だが奴らはクトゥルーさえも倒す……」
「(ため息をついて)この子をピンクの魔法少女に任命したのは、ドルスの魔法少女、あなたよ。責任は取りなさい」
と、あかりは魔法陣の中に消える。
「すまない……アイナ」
グッと堪えるりりかをアイナは抱きしめて頭をさする。
「いいのよ。あなたなら大丈夫。だからあなたにこの街を託して私はドルスに行けた。紫月を頼りなさい。
あの子は最強の魔法少女になれる素養がある」
「柊紫月が……」
***
地下にあるライブハウス
シンガーソングライターのサラのワンマンライブが催されていた。
ライブが終わり、物販を求めるファンの列ができている。
本日の主役サラと握手する火条アルテと火条ツカサ。
「今日の歌もよかったですよ。サラ」
「ありがとう来てくれて。アルテ、ツカサ」
「ああ、次のもまた行くよ」
「嬉しい。来月には今より大きなステージでやるの。念願だったメジャーデビューだから少し緊張。
だけど歌いきる。絶対に来てね」
「うん、絶対。約束します」
ツカサは、アルテのテンション高く喜ぶ姿にサラと出会ったころを思い起こす。
「(俺たちとサラとの出会いは1ヶ月前、アルテと買い物をしにショッピングモールの前を歩いていたら
サラが路上でギターを手に歌っていた。立ち止まって聞いているのは俺とアルテだけだった。
サラの歌声に聞き惚れたアルテが歌い終わったサラに話しかけて俺たちは意気投合した)」
***
回想
「あなた素敵です。次はどこでやるの?」と、サラの手を取って話しかけるアルテ。
元皇女のスキルでグイグイと迫ってくるアルテに「え?え?」と、困惑するサラ。
***
「明日は、駅近のハウスでライブあるから来てね」
「明日もね」と、笑顔で手を振って列から離れるアルテとツカサ。
***
雑居ビルの4Fにあるサラの所属事務所
ギターの弦を弾いているサラ。
会議室と札が貼られた扉から社長とマネージャーが出てくる。
「サラ、聞いてくれ」と、神妙な表情のマネージャー。
社長が口を開いて「今度、うちからメジャーデビューさせるのはお前ではなくアニェーゼで行く」
「え?……じゃあ来月のイベントは……」
「もちろん、アニェーゼだ。」
「!」
「すまない。サラ、うちは社運を賭けてこれからアニェーゼに注力してプロモーションをかけていく。理解してくれ」
「どうしてですか⁉︎ 理由を教えて下さい。なぜ私の歌ではダメなんですか?」
「……」と、沈黙するマネージャー。
「社長、お願いです。デビューは待ちますからあのホールで1曲だけでも歌わせて下さい。前座でもいい
歌なら負けない自信があります。歌が歌いたいんです」
「のぼせ上がるな!お前程度の奴はこの世界に5万ともいる。集客力はアイドル路線のアニェーゼが遥か上だ。
この世界は実力ではなく人気。いかに客から金を落とさせるかだ」
「……」
「サラ、お前の歌からは金は生まれない。それが理由だ!」
「!」
***
同 応接室
ソファのクッションに顔をうずめるサラ。
「歌が歌いたいかい?」と、間宮ヒトが入ってくる。
「誰?」
「ファンからのちょっとしたプレゼントだ。このギターを君にあげよう。君の歌が人の心を奪う」
サラは、ヒトの取り出したそのギターに引き込まれるように見つめる。
***
次の日の夜 駅近のライブハウス
複数の地下アイドルグループが出演するライブイベントに
サラも出演している。
ステージで歌うサラ。
客席からアルテとツカサがペンライトを振っている。
他のアイドルのファンの男たちも一緒にペンライトを振ってサラのステージを賑やかに盛り上げる。
30分後ーー
ライブハウスから虚ろな目をしたファンの男たちがゾロゾロと出てくる。
駅前に移動して来た男たちは、奇声をあげて暴れはじめる。
取り押さえにきた警察官に殴り掛かったり、近くに立て掛けてあった看板を振り回したりして暴れている。
建物の屋上からその様子を傍観するりりか、マヤ、すずめ、アイリ、なでしこの魔法少女たち。
「これもクトゥルーの影響……」
「近くにルルイエ空間があるはずだよな」と、辺りを見渡すマヤ。
「見て!」とすずめが指を指す。
その先に「よせ!」と、暴れる男たちを制圧しているファイヤーアーマーとローズファリテの姿。
「どうしちまったんだこいつら」
「生活安全部……」
「相変わらず早いな」
***
4日後ーー
魔法少女たちがアジトにしている廃ビル
壁に周辺の地図を貼ってブリーフィングをしている魔法少女たち。
「連日の人が暴徒化する事件、印をした4つの地点で起きている。いずれもそれぞれの近くのライブハウスで
地下アイドルたちのライブに参加したファンたちだ」
「暴れに暴れたらそのままお寝んね。未だに意識が戻らない。そいつら叩き起こす魔法があれば事情聞けるんだけどよ」
「マヤちゃん、乱暴はダメよ」
「はーい」
「おそらく、クトゥルーが取り付いているとしたら出演しているアイドル」
「歌で、人の精神を狂わせてるのね」
「だけどどいつも推してるアイドルは別々だったぞ」
「目星はついている。いずれのライブに唯一必ず参加している演者がいる」と、りりかは地図にサラの写真を貼る。
***
ライブハウス
ステージ裏
出番を終えて戻ってくるアニェーゼ。
「アニェーゼちゃん、おつかれ」と声を掛けるサラ。
「あら、サラさん。おつかれ本番これから?」
「うん」
「私はレコーディングの打ち合わせあるから一足早く帰るね」
「……」
***
次の日 夕方 駅の構内
線路上のトラブルによる電車の遅れを伝えるアナウンスが聞こえてくる中、サラが腕時計を見ながら
走ってくる。
「うわッ!まずい。タクシー探さなきゃ」
「あなたが、歌手のサラね」と、サラの目の前にりりかが現れる。
「何?……」
「あなたはクトゥルー。成長する前にあなたを倒さなければならない」
「なんなの……」
不気味に感じたサラは反対方向に走って逃げる。
「待ちなさい」
***
ライブハウス
「サラがまだ来てない⁉︎」と、驚くアルテとツカサ。
マネージャーが2人にサラの遅刻を伝える。
「お友達の君たちなら何か知っているかと。何か連絡とか来てない?」
顔を見合わせるアルテとツカサ。
「探して来ます」と、ライブハウスを飛び出す。
***
「はぁ、はぁ」と息を切らしながら走るサラ。
りりか、マヤ、アイリ、すずめ、なでしこに追われている。
「なんなの」と、路地裏に入ってゴミ箱の陰に隠れる。
スマホを取り出すと、アルテから「どこにいるの?」と、通知が来ている。
SOSの返信を返そうとするが、焦りから違う文字ばかりタップしてしまい
もどかしくなるサラ。
そこへ「見つけた!」と、マヤに発見され再び逃げる。
路地裏を飛び出すと目の前にりりか、アイリ、なでしこ。後ろからはマヤ、すずめが来て
挟み撃ちになるサラ。
「観念しなさい」と、りりかがマジカルコンパクトをかざすと、頭上から銃弾が注がれる。
思わず悲鳴をあげるりりかたち。
「やっと見つけた。魔法少女!」とシューティングアーマーが飛び降りてくる。
「君たちに聞きたいことがある!」
「クッ生活安全部」
「マジカルアップ」と魔法少女に変身するりりかたち。
「君たちのその力は一体なんだ?魔力由来の人間の魔法少女は禁じられている。
本来なるべき魔界出身者が魔法使いになれない事態を生まないために岩盤規制が敷かれているんだ、君たちがなれるはずがないんだ!」
「は? 何を言っているの?意味がわからない!」
「魔術師会の認定によって年間に生まれる魔法使いの人数を制限している。これは魔法使いの賃金、安定した就職先確保のために設けられた制度だ。
既得権益と言われても仕方ない。君たちが本当に魔法使いの卵である魔法少女であれば大問題なんだ!」
「夢のない戯言はヤメロ!訳のわからないことで私たちの夢を壊す気か⁉︎」
「事実だ! 君たちの力の根源はなんだ⁉︎」
「魔法少女は夢と希望そして憧れよ」
「バカな!」
クラックションの音ともに魔法少女たちにライドファイヤーが突っ込んでくる。
「轢き殺すつもり⁉︎」
「そんなタマじゃねぇだろ」と、ライドファイヤーとローズファリテが降りてくる。
「これで私たちと生活安全部との対立は明確になったわね」
「行くよラブリーハリケーン」と、りりかのマジカルスティックから大量のハート飛び出す。
触れると爆発するハートをかわす3人。
「クトゥルーを守るならツカサと言えども戦います」
「なでしこ⁉︎」
なでしこから繰り出される連続パンチに翻弄されるファイヤーアーマー。
「ちょっと待って」と、ローズファリテが割って入る。
「ツカサ、この女はなぜあなたに馴れ馴れしいのですか?」
「ひっ!」
「私が倒します」と、ローズファリテとなでしこの戦いが始まる。
マジカルハルバートで斬りかかるマヤを銃撃で退けるシューティングアーマー。
「ぎゃはぁ!」
その場に膝を落としたマヤの背後からアイリのマジカルアローによる一矢が放たれる。
「しまった!」
シューティングアーマーが避けられないタイミングで放たれた矢。
閃光によってシューティングアーマーに届く手前で間一髪斬り落とされる。
「ソードアーマー!」
現着したソードアーマーは第2矢を放とうとするアイリの懐に素早く飛び込んで剣撃で彼女を倒す。
「きゃああ」
「次はあんたか?」とすずめに狙いをさだめる。
怯えた様子で後ずさりするすずめ。
「来ないならこっちから」とすずめに斬りかかるソードアーマー。
しかし、側面から柊紫月が刀による突きでソードアーマーは弾き飛ばされる。
「ぐはッ!」
「柊紫月⁉︎」と驚くすずめ。
「セーラー服の魔法少女⁉︎」と態勢を持ち直すソードアーマー。
紫月は間髪入れずに凄まじいスピードの剣さばきがソードアーマーを襲う。
受け止めるの精一杯のソードアーマーは、隙を狙って薙ぎ払う。
だがその瞬間、無双ブレードが折れる。
「何⁉︎」
紫月の容赦ない剣撃がソードアーマーに炸裂する。
変身が解除され、その場に倒れる直江尊。
「斬る」と、紫月は尊の首に向かって刀を振り払う。
「?」と刀に抵抗を感じる紫月。
本来なら既に尊の首は胴体を離れ転がっているはず……。
剣先を見やると紫月の刀は尊の首の寸前で一本の剣によって受け止められていた。
その剣を握るのはゴルドガレオン。
危険を察した紫月は飛び下がってゴルドガレオンとの間合いを離す。
今度は別の剣撃技で挑むがゴルドガレオンはあっさりとそれを受け止める。
「(一太刀で受け止めた!!バカな私は一瞬で三太刀くわえたはず……)何者だ⁉︎」
「ロード・スクリーム」
「!」
「君もスクリーム流の使い手だね?その剣さばきまさに一門の四天王のもの。誰に師事を仰いだ?」
「後輩、そこをどけ。その女は俺が斬る」
「直江さん。君の剣では彼女に届かない」
「何⁉︎」
「君の技こそスクリーム流であれ、まがいものの剣では彼女には敵わない。彼女は本物だ。
まぁ、直江という名から君にその剣を授けた人物は察しがつく。あの男は勝つためにスクリーム流を利用した。
ろくに技を極めようともせず、卑怯な手段に用いて汚した。そのような者が授けた剣がスクリーム流であるわけがない」
「言わせておけば、父を!」
「彼女の剣に敵うのは、スクリーム流家元である僕の剣」
「家元だと……」
「スクリーム流の家元に10代の嫡男がいるなんて話は聞いてないぞ」
「さぁ?」
大きな爆発音ーー
爆発音と同時に激しい揺れが襲う。
「何なの?」と、りりかが振り返ると
遠くの方に巨大クトゥルーモンスターの姿が確認できる。
「ルルイエ空間を一気にぶち破る程の急成長を遂げたというの⁉︎」
「あれはライブハウスの方角⁉︎」
「間に合わなかったか……」
「ツカサ、さっきから何が起きているの?」とライドファイヤーの陰に隠れているサラ。
「あれはアニェーゼってゆうアイドルだ」
「アニェーゼちゃん⁉︎」
「クトゥルーはこの子じゃなかったの⁉︎」
「ああ、暴れてた奴らはどいつもライブ会場に出入りしてた。そしてそのライブ全てに出演してたのはサラだけだった。
だけどな同じ日にアニェーゼって子は宣伝のために、ゲリラで路上ライブを行なっていたんだぜ」
「どうしてその子じゃないってすぐにわかったの?」
「サラの歌が好きだからさ。俺たちもサラのライブを毎日見に行ってたんだ。その俺たちが何ともない。簡単だろ」
「おのれ、生活安全部……」握った拳を震わせてファイヤーアーマーを睨むりりか。
そのやりとりを建物の非常階段から見ているヒト。
「僕の誘いを断る娘もめずらしい……」
***
回想
事務所の応接室でのヒトとサラ。
「お断りします」
「?」
「とても惹かれるギターだけども、私、今使っているこの子じゃないと調子が出なくて」
***
ライブハウスの控え室
マネージャーが血相かいて入ってくる。
「社長!逃げて下さい。外が大変です」
すると背中から血を流して倒れている社長の姿を発見する。
「(身体を揺すって)社長、社長、社長ッー!」
***
回想
口論をしている社長とアニェーゼ。
「お前がどこに営業をかけたが知らないが間宮さんという方の意向でお前を優先した。
だが、実力はサラの方が上だ。この先、生き残れるかはお前を次第だ。私は将来、大きなステージに立っているのは
サラだと今も思っている」
「実力もかわいさも売れるだけの力を持っているのはこの私よ。弱小事務所にここまでお金を落としてやったんだから
指図するなッー!」
アニェーゼの背中から触手が生えてくる。
***
アニェーゼクトゥルーは触手を使って周りの建物を破壊していく。
***
ファイヤーアーマーが「グランドザウラー!」と叫ぶとグランドドリルを機首にしたジェットモードの
グランドザウラーがフライトモードのAGX-Ⅱツヴァイキャノンと一緒に飛んでくる。
「ファイヤーアーマー行こう!」
「よっしゃ!一気に破獣合体だ!」
ライドファイヤーはジェットモードのグランドザウラーに飛び乗って合体シークエンスに入る。
機首部は、グランドドリルが外れ脚へと変形。後部は腕、胴体に変形して人型になる。
胸にはティラノザウルスの顔を模った意匠が付いていて胸が開いてライドファイヤーが中に乗り込むと顔が展開。
「グランドザウラー!」と叫ぶと青と白のボディーカラーのマッシブな機体が完成する。
グランドザウラーは、アニェーゼクトゥルーの前に降り立つ。
「グランドザウラー!グラビティキャノンを使って」
「いけるのか?」
「ああ、ちゃんと(グランドザウラーを)改造済みだ」
「行くぜ」の掛け声とともにAGX-Ⅱツヴァイキャノンはグラビティキャノンに変形してグランドザウラーの右肩にドッキングする。
アニェーゼクトゥルーは悲鳴のようなさけび声を上げてグランドザウラーを怯ませる。
「なんて音だ」
「高い音波で周りを破壊するつもりだ」
「一気に決める!」と、アニェーゼクトゥルーにグラビティキャノンの標準を合わせるとトリガーを引いて
強力なエネルギー弾が発射される。
アニェーゼクトゥルーは強大な光の中に消滅する。
燃え上がる炎を背に悠然と構えるグランドザウラー。
数日後
路上でギターを弾きながら歌うサラの姿がある。
「ドルスに行くんですって」と、声を掛けるアルテとツカサ。
「2人ともありがとう。私の歌を気に入ってくれた人がいてね。亡くなった社長が紹介してくれてたみたいなの」
「そうだったのか」
「しばらく会えなくなっちゃうけど、大きなステージに立てるようになったら必ず2人を招待するね。
その前にこの街に歌が流れるほど有名にならなくちゃいけないけど」
「すぐ叶いますよ。その夢」
「ありがとうアルテ」
手を振って去るサラ。
「(俺たちは、サラの歌がすぐにまた聞けると信じて見送った。俺たちはサラの素敵な歌が全世界に広まることを確信している」
つづく




