第21話「魔法少女になりたくて」
りりか5歳回想ーー
裕福な家庭と思われるリビングでりりかは魔法少女モノのキャラクターのコスプレをしながら、
大型テレビに映る魔法少女たちの活躍に目を輝かせていた。
近所の公園に行っては、泣いている女の子を庇って男の子たちを懲らしめる日々を過ごしていた。
ヒロインに憧れ、正義感の強いりりかは、女の子たちの中心的存在だった。
ある日、りりかが楽しみにしていた魔法少女モノの番組が放送される時間に官僚をしていたりりかの父が不正を
して逮捕されたとのニュースが差し代わって放送される。
その日よりりりかの生活は一変する。家の玄関には父や一家を誹謗中傷する貼り紙や落書きがされるようになった。
正義のヒロインになりたかったりりかは、正反対に犯罪者、悪人とレッテルを貼られ、周りの同級生たちからいじめられる日々。
小学生、中学生と転校を繰り返したが、ネットに拡散された情報からすぐ特定されていじめを受けるの悪循環を繰り返していた。
中学3年生の春、クラス替えで色めき立つクラスメートたちの中で、りりかは教室の窓際の隅でひとりポツンとしていた。
風貌もボサボサした長い黒髪で目元が隠れ、どこか陰のある印象にクラスメートたちからは、"魔女"と、敬遠されていた。
うつむきがちに歩いていた帰り道、りりかに差し伸べられる手。
その手にはマジカルコンパクトが握られていたーー。
***
桐川コーポレーション 桐川トウカの研究室
解析データに目を通している桐川トウカ。
「桐川博士!」と織田ラルフが入ってくる。
「お尋ねしたいことがあります。魔法少女たちの持っている変身アイテム、アレを作ったのは
桐川博士ではないんですか?」
「何かと思えば、そのようなくだらない推理を聞かせるためにわざわざ来たのか?」
「教えて下さい!彼女たちの変身に必要な力の根源はなんなんですか?」
「(ため息をついて)知らん」
「そんなハズはッ⁉︎」
「……アレを作ってくれと、依頼されたが断った。間宮ヒトとかいう男にな」
「間宮?」
「その男は種子と言っていたか、緑に光る生命エネルギーを持ち込んで女子を魔法少女にさせるアイテムを作ってくれと頼んできた。
だが、断った。元からあるエネルギーを応用して力を生み出すのは私の主義ではない。根源であるエネルギーすら1から生み出すのが私の主義だ
コネクトシールもそうだったろ」
「確かにそうですが、だとするとあのアイテムを作ったのは……」
***
魔法少女たちがアジトにしている廃ビル
マジカルコンパクトで、西の魔法少女あかりと通話をしているりりか。
「マジカルエネルギーが集まらない⁉︎」と、驚嘆する西の魔法少女あかりの声が
マジカルコンパクトを通して響く。
「クトゥルーの数が足りない……生活安全部たちに殆どを倒されて御柱を作るために
必要なエネルギーが得られない」
「クトゥルー予備軍の人間はいないわけ?」
「目を付けている人間たちはいるが、まだ覚醒には時間が掛かる」
「だったら覚醒を早めちゃいなさいよ。その魔法だってあるじゃない」
「ふざけないでッ、被害に合う人間がたくさん出てしまう」
「いいじゃない。被害に合う人間が多ければ多いほど私たちに助けられたときに生み出すマジカルエネルギーも多くなるわ」
「できないッ!」
「不器用すぎるのよ。あんた」
「それで構わない……」
***
夜の公園
ボロボロの服装で歩く柊紫月。
そこに、すずめ、マヤ、アイリ、なでしこが現れる。
「また、1人でお出かけ?」
「……私の勝手だ」
「私たちと一緒にいる以上、勝手な行動は慎みなさいよ」
「そうだぜ。クトゥルーの奴をぶっ倒すなら俺たちも混ぜろよな。ズルいんだよ」
「マヤちゃんッ!」と、諌めるアイリにテヘペロで戯けるマヤ。
「紫月ちゃん、みんな心配して言ってくれているのよ」
「そうですよ。何かあれば助け合うことができます」
「放っておきなさいよ、なでしこ。勝手に1人で戦って勝手に死ねばいいのよ。惨めにね」
「そんなヘマはしない。徒党を組まないとまともに戦えないお前たちとは違う」
「なんだとッ!」と、紫月の胸ぐらに摑みかかるマヤ。
「よしなさい」と、りりかが現れる。
「柊紫月さん、あなたの力が必要よ。改めて協力を願うわ」
握手のための手を差し出すりりか。
紫月は「お前たちは弱い」と、りりかの手を払いのけて行く。
りりかは「くッ」と、歯を食いしばって堪える。
***
次の日の市街地
肉塊のような奇妙な形をした大型クトゥルー"ムナガラー"が、触手を鞭のように振るって周辺のビルを破壊している。
ビルの中にいた人たちは、触手に捕まってクトゥルーの中に次々に取り込まれていく。
そこへ、りりか、アイリ、マヤ、すずめ、なでしこの魔法少女たちが駆けつける。
「どうなってやがんだ!ルルイエ空間食い破るほど急成長するなんて。この前といいどうかしているぜ」
と、マジカルハルバートで触手たちを切り落としてゆくマヤ。
「なんとかしないとみんな食べられちゃう」と、マジカルアローで触手に捕まる人たちを助けるアイリ。
「行きましょう!」と、りりかの掛け声で全員、触手を飛び越えながらクトゥルーの本体に向かって突き進む。
クトゥルーの体に取り込まれている人たちは、「熱い」と苦しみながら、藁をもすがる形で魔法少女たちに助けを求める。
「(私たちは求められている。これが魔法少女よ)」
その様子をビルの屋上から眺めている間宮ヒト。
ニヤリと、笑みを浮かべながら「これはサービスだ」と、種子ばら撒く。
次々に種子から生まれるモンスターに「雑魚共が出て来やがった!」と、マヤたちは各々の武器で戦う。
「私も手伝うわ」と、そこにドルスの魔法少女アイナが現れる。
「アイナ!」
「アイナ姉さん!」
「戻って来たんだ」
「みんなお久しぶり。さぁ戦いましょう」
「(一斉に)はいッ!」
アイナは、こちらの顔を見て立ち竦むなでしこに、「なでしこも頑張っているみたいだね」と、頭を撫でる。
なでしこは照れながら「は、はい。私はアイナさんに魔法少女にして頂きました。だからもっと強くなります」
「そのいきよ」
アイナは、りりかがまだ赤の魔法少女だった頃に、チーム率いていたピンクの魔法少女。
4ヶ月前、ドルスに御柱を建てるためにチームをりりかに託して、スメラギ国を離れていた。
りりかが空を見上げると、キラキラと光る星屑たちが集まって来ている。
「マジカルエネルギー!これなら御柱が」
その時、数発のミサイルがムナガラーの体に直撃して怯む。
りりかが、ミサイルが飛んで来た先を見やるとトラックモードのグランドザウラーが向かって来る。
コンテナのハッチが開いてソードアーマーとローズファリテが駆るソードライダーとローズライダー
そしてライドファイヤーが飛び出す。
クトゥルーモンスターの群れの中をソードライダーに跨ったソードアーマーは無双ブレードで
次々に斬り倒してかき乱していく。
後に続くローズファリテもローズライダーに跨ったまま、拳銃型の武器ローズマグナムでモンスターたちを撃ち抜いていく。
***
「破獣合体!」と、叫んでライドファイヤーはトラックモードのグランドザウラーに飛び乗って合体シークエンスに入る。
ウェスタントラックのシャーシ部分がせり上がり、胴体から腰にかけての部分に変形。
コンテナガワが開き背中の羽となる。
トラックのフロントから運転席にかけてが2つに割れて肩から腕に変形する。
胸にはティラノザウルスの顔を模った意匠が付いていて胸が開いてライドファイヤーが
中に乗り込むと顔が展開。
「グランドザウラー!」と叫ぶと青と白のボディーカラーのマッシブな機体が完成する。
グランドザウラーは、ムナガラーの前に降り立つ。
***
生活安全部の登場に現場が混沌とする中、紫月もやって来る。
「柊紫月!今頃何しに来たのよ」
「ロード・スクリーム、今日こそ負けない」
そう、紫月が睨んだ先に、「なんで僕だけ徒歩」と、ゴルドガレオンがトボトボと、やって来る。
ゴルドガレオンは"やれやれ"と剣型の武器ガレオンソードを引き抜く。
紫月はギアコマンダーを翳してアーマードギア=サムライアームズに変身する。
「これは侮ってはいけないようだね」
ゴルドガレオンとサムライアームズは、凄まじい勢いで剣先をぶつけ合う。
ゴルドガレオンが剣を振り払うと、バク転でかわすサムライアームズ。
サムライアームズのアクロバティックな動きを使った剣さばきに翻弄される。
2人が鍔迫り合うとサムライアームズの背後から大きなエンジン音を上げソードライダーが迫る。
すれ違い様にソードアーマーは無双ブレードでサムライアームズ
の背中を斬りつける。
「背後から!そんな士道に背くやり方を」と、声を荒げるゴルドガレオン。
「勝つためには手段を選ばない」
「(くッ)」
「(それにしてもなんだあのアーマードギアは?俺たちのものとも、理事長のところのもの(ゾーンシリーズ)とも違う。
いったい誰が)」
***
飛んで来たAGX-Ⅱツヴァイキャノンはグラビティキャノンに変形してグランドザウラーの右肩にドッキングする。
ムナガラーにグラビティキャノンの標準を合わせるとトリガーを引いて強力なエネルギー弾が発射される。
「やめろッ!」と叫ぶりりか。
ムナガラーは強大な光線に撃ち抜かれ消滅する。
燃え上がる炎を背に悠然と構えるグランドザウラー。
上空に集まっていたマジカルエネルギーも消滅する。
目を見開いたまま呆然とするしかないりりか。
「やっぱロボットには敵わないなぁー」と、その場にヘタリ込むマヤとすずめ。
***
辺りは瓦礫が散乱して、クトゥルーに取り込まれてケガをした人たちの救護をする救急隊や消防でごった返している。
取り込まれていた人たちは、グラビティキャノンが発射された前後でアイナの魔法で救出されていた。
瓦礫をどかして行方不明者を捜索している生活安全部一同の前にりりか現れる。
「生活安全部、貴様たちが何をしたか分かっているのか⁉︎」
「お前たしか、りりかとかいう魔法少女」と、ファイヤーアーマーが答える。
「貴様たちのせいで人々がクトゥルーの脅威から免れる術を失ったんだぞ。
私たち魔法少女の目的はマジカルエネルギーを使って、人々をクトゥルーに
支配されない存在へと進化させること。だが、貴様たちがそれをぶち壊した!」
「進化?そんな魔力も魔法も聞いたことがない」と、シューティングアーマーは反論する。
「簡単よ。みんなクトゥルーの影響を受けずと戦うことのできる私たち魔法少女と同じ存在なるの」
「男も?」
「そうよ」
「遠慮するよ……」
「私は……私は、みんなを守るために戦う魔法少女になりたかった。だけど誰かを傷つけずに人を守れないというなら私はッ!」
突然、ケガをした人や救急隊員の背中に魔法陣ができて苦しみだす。
駆けつける魔法少女たち。
「どうしちゃったの」と、動揺するすずめ。
「これは、クトゥルーの覚醒を早める魔法よ」と、アイナが答える。
「りりかちゃんがこれを?」
「お前、いったい何を!」
「一度クトゥルーが覚醒したら、依り代となった人間ごと殺すしかない。だけど、ここにいる数百人の命で数十億の人が救われるなら」
と、りりかは涙を流しながら訴える。
頬をつたった、りりかの涙はマジカルスティックに落ちる。
その時、りりかは眩い光に包まれ「マジカルアップ!」と叫ぶ。
「あれはレベル7の光」と、驚くアイナ。
りりかは魔法少女モノでよくあるパワーアップを遂げようとしている……。
そして光が弾け、そこに現れたのは、天使のように眩いコスチュームに身を包んだ魔法少女……
ではなく、黒く人外の姿をしたモンスター。
手の爪は鋭く伸びて、口には牙、頭部にはツノが生えている。
その姿に言葉を失う生活安全部と魔法少女一同。
だが、沈黙を破る拍手の音を"パチパチ"と響かせながら前に出てくるアイナ。
「おめでとうりりか。美しいわ。あなたこそ最強の魔法少女であり、最強のクトゥルーよ」
「クトゥルー⁉︎」
「アイナ姉さん、どういうことですか⁉︎ レベル7の魔法少女がクトゥルーって」
「言ってなかったかしら、魔法少女の力の根源はクトゥルーを生み出す種子よ。
毒を以て毒を制する。あなたたちがクトゥルーだからクトゥルーの影響を受けずに戦うことができるのよ」
「じゃあ、人間を私たちと同じ魔法少女に進化させるってことは……」
「そう、人間を新種のクトゥルーに進化させるということよ」
「クトゥルーだと! アイナは、俺たちを騙していたのかよ!」
「騙してなんかいないよ。理屈は同じでしょ」
「てめぇ!」
「そうだ、第六天魔王。安心して魔術師会の規制には違反していないから」
「君はいったい何者なんだい?」
「ああ、僕か」
アイナが光に包まれ、その光が弾けるとそこに現れたのは間宮ヒト。
「間宮ヒト!」と、驚くアイリ。
「そういえば、あんたの変身前の姿、見たことなかった」と、マジカルハルバートを手に取るマヤ。
「間宮?そうかこれで合点がいったよ」
「第六天魔王、そういえば若き日の君の父上にも僕の計画を邪魔されたことがあったね」
「桐川コーポレーションに持ち込んだ種子とかいう生命エネルギーはいったいなんだ?」
「教えてあげよう。あれは偉大なる我が父アザトースが生み出した大いなる力さ。僕の計画はこの世界の縛り、
つまり理というなの3すくみから抜け出す可能性を持った人間から新種のクトゥルーを生み出すこと。
かつて滅んだクトゥルーは忌々しい神と悪魔を超える絶対的な存在となって復活する。そしてそれを統べるのはこの僕」
「間宮ヒトッ!」
「ああ、僕の名前はニャルラトホテプ。この世界の支配者になる存在さ」
武器を手に取り生活安全部と魔法少女は間宮ヒトを取り囲む。
「これだから人間は。まあいい。マジカルアップ」
間宮ヒトは、再び魔法少女アイナの姿に変身する。
「せっかくだから木田君の落し物も使うか」と、木田春馬が使用していたギアコマンダーを取り出して
「変身」と、魔法少女のコスチュームの上からアーマードギア=クライシスゾーンを装着する。
「魔法少女ギアと言ったところかな」
マジカルスティックを禍々しい刀身のマジカルソードへと変化させ装備する。
「行くぜ」と、ファイヤーアーマーの合図でクライシスゾーンに攻撃を仕掛ける。
クライシスゾーンは、次々に向かってくる魔法少女とアーマードギアをいとも簡単なように
あしらいながらマジカルソードで斬りつけていく。
斬られたマヤ、アイリ、すずめ、ローズファリテ、ファイヤーアーマーはたった一太刀で
倒れ動けなくなる。
武器を構え警戒をするゴルドガレオン、ソードアーマー、シューティングアーマー、なでしこ。
その時、りりかクトゥルーが雄叫びを上げて巨大化する。
「さすがだりりか。お前の苦悩なる叫びで人間を進化に導くんだ」
背中の魔法陣の光が強くなって一段ともがく人々。
「やるしかない」と、駆け出すシューティングアーマー。
待機させてあったAGX-Ⅱツヴァイキャノンに乗り込む。
「クトゥルーに効くのは魔力。炎滅魔法しかない」
起動して立ち上がるAGX-Ⅱツヴァイキャノン。
「僕は、生まれつき使える魔力や魔術が嫌いだった。なぜ存在するのか分からない力よりも自然の物理法則によって
生み出される科学の力に魅せられた。大好きな化学を学びたくて人間界にやって来て、科学の力で魔法以上の力を生み出す
桐川博士を尊敬している。博士の作った結晶体AGX-Ⅱ。君を否定するようですまない。だけど今は人を救うために
魔力を使わせてくれ」
AGX-Ⅱの持つバスターライフルとツヴァイキャノンの銃口に魔法陣が展開する。
バスターライフルとツヴァイキャノンから次々に発射される光線で苦しむ人たちを撃ち抜いていく。
苦しんでいた人たちは憑き物が取れたかのように苦しみから解放される。
「あとは魔法少女りりか。君だ」
AGX-Ⅱツヴァイキャノンは、りりかクトゥルーに銃口を向ける。
その時、AGX-Ⅱを背後から一筋の光線が貫く。
さらに第2射、第3射が、AGX-Ⅱの脚や肩、腕を貫いて地上に落下する。
上空には両手に大剣を持った巨大ロボット=ヴァナディス・ソードエディションの姿がある。
コックピットで操縦するのは、紫月。
「許せ」と、大剣が縦に割れ砲身が伸びると高エネルギーの光線が発射され、
撃ち抜かれたりりかクトゥルーは、爆散して砂となる。
装甲が外れAGX-Ⅱのコックピットが露出。中に入るシューティングアーマーはフルフェイスのヘルメットの右半分が割れ
額から血を流すラルフの顔が確認できる。
シューティングアーマーは、朦朧とした意識の中で、ヴァナディスの肩に見覚えのあるロゴマークを発見する。
「あれは……」
***
回想
桐川コーポレーション
「ヘイムダル社……。おそらくその企業が魔法少女の変身アイテムの開発を引き受けただろう」
「ヘイムダル……」
「うちの競合さ。今度、国際軍に導入される巨大ロボを巡って、うちのAGXシリーズと競い合っている最中だ」
***
「ヘイムダル社……」
飛び去って行くヴァナディス・ソードエディション。
ファイヤーアーマーたちは「ラルフ!」と、大破したAGX-Ⅱに駆け寄って行く。
つづく




