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第二部 地上という魂の学校  第一章 帰るべき場所

霊界を旅した健一は、これまでとは違う視点で「生きる」ということを見つめ始めます。

美しい世界もあれば、苦しみに満ちた世界もあった。


そして、そのすべてを旅したからこそ、健一は一つのことに気づきます。

魂にとって、本当の学びの場所はどこなのか。

愛すること。

許すこと。

誰かを思いやること。


それらを学ぶ場所は、遠い霊界ではなく、今、自分が生きている「地上」なのかもしれません。

第二部「地上という魂の学校」。

第一章「帰るべき場所」から、新たな物語が始まります。

朝日がカーテンの隙間から静かに差し込んでいた。

鳥のさえずりが聞こえる。


健一はゆっくりと目を開けた。

見慣れた天井。

見慣れた寝室。

夢だったのだろうか。


そう思いながら体を起こす。

しかし胸の奥には、あの光が残っていた。

地獄界で感じた重苦しさ。

五次元界の優しい風。

七次元界の静寂。


そして、言葉では表せない創造主の愛。

すべてが現実だった。


健一は静かに窓を開ける。

朝の風が部屋へ流れ込んだ。

以前と同じ風。

同じ空。

同じ街。

だが、不思議なことに世界が違って見えた。


向かいの家で母親が子どもの手を引いている。

新聞配達の青年が笑顔で会釈をした。

庭には一輪の朝顔が咲いている。


どれも以前からあった光景だ。

それなのに、健一の胸は熱くなった。

「命は……こんなにも美しかったのか。」

そのとき、台所から妻の声が聞こえた。

「あなた、朝ごはんできてるわよ。」

以前なら、

「あとで行く。」

そう返事をしていたかもしれない。

しかし今日は違った。

「ありがとう。」


自然にその言葉が口から出た。

妻は驚いたように振り返る。

「どうしたの?」

「いや……。」

健一は少し照れ笑いを浮かべた。

「ありがとうって、ちゃんと言ったことがなかったなと思って。」

妻は戸惑いながらも微笑んだ。


「変な人。」

その笑顔を見た瞬間、健一は胸が締めつけられた。

(この笑顔を、私は何度見逃してきたのだろう。)


朝食の食卓。

湯気の立つ味噌汁。

焼き魚。

漬物。

何気ない家庭の風景。

健一は箸を持ちながら思った。


(霊界では、このような何気ない時間を懐かしむ魂が大勢いた。)

老人は家族に会いたいと泣いていた。

地獄では謝れなかったことを悔やむ魂がいた。


五次元界では、人のために生きる喜びを学んでいた。

それなのに、自分は。

目の前にある幸せを当たり前だと思っていた。


健一は静かに味噌汁を口に運ぶ。

「おいしい。」

妻は少し笑う。

「今日は本当にどうしたの?」

健一も笑った。

「やっと気づいたんだ。」

「何に?」

「幸せは、大きな奇跡じゃない。」

「毎日の中にあるんだって。」

妻は首をかしげた。


意味は分からなかった。

しかし、その日の健一の表情は、何年ぶりかに穏やかだった。


会社へ向かう途中。

満員電車の中。

以前と同じように人々はスマートフォンを見つめている。


疲れた顔。

無表情な顔。

イライラしている顔。

健一は一人ひとりを見つめた。

(この人にも魂がある。)

(この人にも守護霊がいる。)

(この人も、いつか霊界へ帰る。)

そう思うと、不思議と腹が立たなかった。


駅で誰かに肩がぶつかった。

以前なら舌打ちをしていたかもしれない。

しかし健一は笑顔で言った。


「大丈夫ですよ。」

相手は驚いた顔をして頭を下げた。

たったそれだけの出来事だった。

それでも健一の心には、小さな光が灯った。

妖精の言葉がよみがえる。


「愛は、小さな行動から始まります。」

________________________________________

会社へ着くと、朝礼が始まっていた。

部下の一人が資料を落としてしまう。

部屋に紙が散らばる。


以前の健一なら、

「何をやっているんだ。」

そう叱っていただろう。

しかし今日は違った。

健一は黙ってしゃがみ込み、一緒に資料を拾い始めた。

部下は驚き、何度も頭を下げる。

「申し訳ありません。」


健一は笑う。

「失敗は誰でもする。」

「次は一緒に気をつけよう。」

その言葉に、部下の目が少し潤んだ。


健一は気づいた。

人は、責められることで変わるのではない。

信じられることで変わる。


その日の夕方。

健一は一人、公園へ立ち寄った。

ベンチに腰を下ろし、夕焼けを見つめる。

風が木々を揺らす。


ふと、あの日助けてくれた老人を思い出した。

「人生は長い。」

「今日だけで決めるな。」

あの一言が、自分を救った。


健一は静かに空を見上げる。

「ありがとうございます。」

誰に向けた言葉なのか、自分でも分からなかった。


しかし、その瞬間。

風が優しく頬をなでた。

健一は微笑んだ。

(見守ってくださっている。)

そう思えた。


家へ帰る道。

健一は一つの決意を胸に刻んだ。


霊界を見たことを、人に証明する必要はない。

奇跡を語る必要もない。

大切なのは、自分が今日、どれだけ愛を選べるか。

それが、魂を光へ近づける唯一の道なのだから。


夕焼けの空を見上げながら、健一は静かに歩き始めた。

その背中は、霊界へ旅立つ前よりも、少しだけ大きく見えた。

第二部・第一章を最後まで読んでいただき、ありがとうございます。


第一部では、健一が霊界を旅し、さまざまな魂や世界を目にしました。

しかし、旅を終えたからといって、すべてが終わったわけではありません。


むしろ、本当の学びはここから始まります。

人は、現実の世界で生きながら、愛や許し、感謝を学んでいく。


地上という場所もまた、魂にとって大切な「学校」なのかもしれません。

第二部では、健一が再び地上で生きる中で、どのような学びと出会っていくのかを描いていきます。

どうぞ、続きをお楽しみください。

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