第十章 七次元界 ― 光の都
六次元界で「見えない導き」を感じた健一は、さらにその先へ進んでいきます。
そこに広がっていたのは、これまで見てきた世界とは比べものにならないほど、静かで美しい光の世界でした。
そこでは、魂たちが争うことなく、互いを思いやりながら存在しています。
健一が目にする「光の都」とは、いったいどのような場所なのでしょうか。
そして、その世界で健一が知ることになる「光」の意味とは――。
第十章「七次元界 ― 光の都」。
健一の霊界の旅は、さらに高い世界へと進んでいきます。
六次元界を後にすると、景色は再び大きく変わり始めた。
白く輝く都はゆっくりと遠ざかり、代わりに空そのものが光へ変わっていく。
青空ではない。
雲でもない。
どこまでも透き通る黄金の光だった。
その光は目を閉じても見え、耳を澄ませば音楽のようにも感じられる。
健一は思わず立ち止まった。
「この光は……。」
妖精は静かに答えた。
「愛そのものです。」
「愛が……光に?」
「七次元界では、魂の愛が世界を照らしています。」
健一は言葉を失った。
今まで見てきた五次元界や六次元界も美しかった。
しかし、この世界はまったく違う。
美しいという言葉では足りない。
そこにいるだけで、自分の心の中にある怒りや悲しみが溶けていくようだった。
二人が歩いていくと、巨大な都が姿を現した。
白い水晶で築かれた宮殿。
天空へ伸びる無数の塔。
川は水ではなく、光が静かに流れている。
木々の葉は宝石のように輝き、風が吹くたびに優しい音色を奏でていた。
広場では、多くの人々が語り合っている。
誰もが穏やかな笑顔だった。
年齢も国籍もない。
民族も言葉も違うはずなのに、互いを完全に理解し合っていた。
健一は驚きを隠せない。
「この人たちは……。」
妖精はゆっくりとうなずく。
「地球の歴史の中で、多くの人々へ愛を説き、平和を願い、生涯を捧げた魂たちです。」
「今もなお、人類を導くために学び続けています。」
そのとき、一人の老人が近づいてきた。
白い衣をまとい、優しい笑みを浮かべている。
その瞳には、何千年もの時を見つめてきたような深い慈愛が宿っていた。
老人は健一へ静かに頭を下げた。
「よく来られました。」
健一も深く礼をする。
「私は……。」
「あなたの旅を見守っていました。」
老人はそう言って微笑んだ。
「地上では、人々は宗教の名前で争うことがあります。」
健一は小さくうなずく。
「はい……。」
ニュースで見た戦争。
宗教対立。
互いに「自分だけが正しい」と主張する姿が頭をよぎる。
老人は空を見上げた。
「しかし、本来の教えは違います。」
「本当に光へ近づいた魂は、人を裁くのではなく、人を愛します。」
「本当に神を信じる者は、人を憎むことができません。」
その言葉は静かだった。
しかし健一の胸を強く打った。
老人は広場の中央へ健一を案内した。
そこには大きな泉があった。
泉の水面には、地球が映し出されている。
戦争。
飢餓。
災害。
差別。
貧困。
苦しむ人々の姿が次々と映る。
健一は目を伏せた。
「どうして世界には、こんなにも苦しみがあるのでしょう。」
老人は静かに答えた。
「人間には自由が与えられています。」
「だからこそ、愛を選ぶことも、憎しみを選ぶこともできます。」
「創造主は、その自由を奪いません。」
健一は尋ねる。
「では、なぜ導くのですか。」
老人は微笑んだ。
「愛とは、強制ではないからです。」
「扉を開くのは本人です。」
「私たちは、ただその扉の前で、光を灯し続けているだけなのです。」
そのときだった。
泉の水面が静かに揺れた。
映し出されたのは、健一自身だった。
妻と言い争った日。
仕事で部下を傷つけた日。
誰かに優しくできなかった日。
胸が痛んだ。
だが、その映像はやがて変わる。
落ち込む友人に声をかけた日。
道に迷った子どもを家まで送った日。
母へ「ありがとう」と伝えた日。
健一が忘れていた、小さな善意も映し出されていた。
健一の目から涙がこぼれる。
「こんなことまで……。」
老人は静かにうなずく。
「魂は、大きな成功だけで輝くのではありません。」
「誰にも知られない、小さな愛の積み重ねが光になるのです。」
健一はその言葉を胸に刻んだ。
突然、都全体に美しい鐘の音が響いた。
人々が一斉に立ち上がる。
誰もが東の空を見つめている。
健一も振り向いた。
その瞬間、息をのんだ。
空の彼方に、これまで見たどんな光よりも深く、静かで、温かな輝きが広がっていた。
それは眩しいのに目を閉じたくならない。
近づきたいのに、自然と頭が下がる。
健一は震える声で尋ねた。
「妖精さん……。」
「はい。」
「あの光は……。」
妖精も老人も、静かに頭を垂れた。
そして、ゆっくりと答えた。
「創造主の世界です。」
健一は言葉を失った。
その光からは、言葉では表せないほど深い愛が流れていた。
責める愛ではない。
試す愛でもない。
ただ、
「あなたが存在していることを喜んでいる」
そんな限りなく大きな愛だった。
健一は知らず知らずのうちに涙を流していた。
妖精は静かに微笑む。
「健一さん。」
「はい……。」
「次の世界では、あなたは創造主と会話をするのではありません。」
「では……。」
「あなたは、創造主の愛に触れます。」
「そして、この旅の本当の意味を知ることになるでしょう。」
健一は、果てしなく広がる光を見つめながら、一歩、また一歩と歩き始めた。
その先には、魂が永遠に憧れ続ける光が待っていた。
第十章を最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
健一は、これまでさまざまな魂の世界を旅してきました。
苦しみの世界。
希望の光。
そして、見えない導き。
その旅の先で出会った「光の都」は、健一に新たな気づきを与えてくれます。
光とは、ただ明るく照らすものではない。
誰かを思いやる心や、愛する心の中にも、光は存在するのかもしれません。
健一の旅は、いよいよ大きな真実へと近づいていきます。
次章も、どうぞお楽しみください。




