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1話目! 出会い

 「う……んっ」


 理亜が目覚めるとそこは小説で定番の森の中。周りを確認した後、理亜はスキルの設定を始めた。


 「ここが異世界かぁ。そういえばこの世界の名前も知識も何にも知らないなぁ。……よしこういう時はやっぱり記憶喪失ネタでいいよね。記憶喪失だけど名前と自分ができることを幾つか覚えてるって設定でいこうっと!森の中だしきっと獣がいると思うから戦えるスキルと……あとは食べれるものを探すスキルもだよね」



 蔵咲理亜 ヒューマンLV1

 職業 なし

 体力 90

 魔力 110

 腕力 25

 敏捷 40

 幸運 30


 設定中スキル:【棒術】【鑑定】【隠れ身】【採取】【気配察知】

 非設定スキル:【魔具製作】【空間魔法】【交渉】【変身】【生活魔法】【調理】




 「よし!こんなものだよね。棒術は近くにあった武器になりそうなのが木の棒しかなかったから。

隠れ身・気配察知は森の中で安全に行動する為、採取と鑑定は食事の確保の為。完っ璧な構成だよね!」



 スキルの設定を終えて町か村を探す為、意気揚々と森の中を歩き始めた理亜は後方より感じる異変に気づいた。気配察知のおかげか振り向いた時にその姿を確認できた。


 「グルルルっ!」


 そこにいたのは直列編隊で走ってくる狼の群れでその数なんと10匹。


 「……ちょっとぉぉぉ、こういうときは普通1匹か2匹だよねぇぇぇ!」


 理亜が風上にいたせいで狼の群れに気づかれてしまったというわけである。勿論この時のリアがそんなことに気づくはずもなく、慌てて近くにあった木の上に上り始めた。


 「グルルルルルルッ!ガウッガウッ!」


 狼の群れはリアの登った木の下で理亜を食べようと木をガリガリと引っかいている。

狼の数が多く見る見るうちに木の皮がはがれ徐々にミシミシと言う音が理亜にも聞こえてきた。



 「ヤバイヨヤバイヨ!どど、どうしよう!あんなに多かったらチートがあっても勝てないよぉ……」


 理亜が木の上で必死に考えを巡らせるがいい考えが思いつかないまま、運命の時がきてしまった。

 狼たちの引っかいていた木がツメによって削られ木本体の重さに耐えられなくなり傾きはじめたのだ。


 「た、たすけてぇぇぇぇぇ!」


 平和な日本にいた理亜が初めて感じる死の恐怖。理亜は木の上で声の限り叫んだ。



 その時ヒュンットスッという音と共に狼の一匹の頭に矢が刺さる。


 「グルルゥ?」


 狼たちも仲間がいきなり矢によって倒された為、その矢の飛んできた方向を探そうとキョロキョロし始めた。


 ヒュンッヒュンットストスッ!


 狼達が探している間にも矢がドンドン飛んできては狼達の眉間に刺さり1匹2匹とその命を奪っていく。



 リアの乗っていた木が音を立てて倒れる。その音に狼達は獲物りあを仕留めて逃げようと思ったらしく気のほうへ視線を向け走り出した。


 しかし倒れた木の傍にいるはずの獲物の姿が見当たらないのだ。狼達は鼻をスンスンとしながら捜そうとしたが弓によって仲間がドンドン倒されていくことに危険を感じとうとう逃げることにした。




 狼達の姿が森の中に消え数秒後、ドスンッ!という音と共に狼が匂いをかいでいた辺りに何かが落ちてきた。当然理亜である。理亜は狼によって倒された木が倒れる瞬間、近くにあった木の枝に必死に飛びついたのである。



 「た、助かった?んだよね……」


 理亜は矢の突き刺さっている狼を見ながら安堵の息を吐いた。



 「そこの女の子無事かい?」


 理亜が振り向くとそこには褐色肌で耳の尖った女性がいた。


 「え、エルフ?」


 理亜の声に反応した女性は一瞬顔をしかめたが、相手が何も知らなさそうな女の子の為、言いたい言葉を飲み込みできるだけやさしく声をかけた。


 「私はただのエルフじゃないよ?闇の森の狩人といわれるダークエルフさ」


 「あ、そうなんですか。すみません。初めて見たので……」


 理亜自身も自分の発言後目の前の女性の気配が気配察知のおかげか一瞬怒りに染まったのを感じ謝罪をした。


 「……まあいいよ。見たことがなかったのならしょうがない。次からは間違えないようにね!私じゃなかったら今頃アンタの体には矢が何本も突き刺さっていたよ?

 所でアンタみたいな子がこんな森の中で何をしてたんだい?言っちゃなんだけどこの森は獰猛な獣が多く生息しているから女の子が一人で来る様な場所じゃないよ」


 前半ものすごく怖い事を言われたが、後半の質問には考えていた通り記憶喪失ネタを使うことにした。



 「気がついたらこの森にいたんです。それで町か村を探していた所をあの狼の群れに襲われてしまったんです。……あっ、すみませんお礼も言ってませんでしたね。狼から助けてくれてありがとうございました」


 「そんな事はいいよ。私も丁度獲物を探していた所だったからね。アンタ名前は?」


 「り、理亜です!」


 「リリア?珍しい名前だね。そんじゃあリリア。狼を持っていくのを手伝いな。助けてやったんだからその位するのが筋だろう?」


 「うぅ、わかりました。少し待ってくださいね」


 理亜は名前を間違われていることをなぜか指摘できず、仕方なく設定スキルに空間魔法を追加した。

リリアの使える空間魔法は良くあるアイテムボックスといわれるもので容量無限、アイテムボックス内の時間経過は無しという代物だ。



 空間魔法を発動し狼の死体を収納するとダークエルフの女性は驚いた顔をしていた。


 「あ、アンタ空間魔法持ちかい?見た目ヒューマンなのにあの空間魔法を持っているなんて……リリア、アンタは何者だい?」


 「分かりません。私の名前と自分ができる幾つかのことしか……」


 「なるほどね……アンタはおそらくどこかの刺客でもやられたんだろうね。その時に怪我を負って記憶をなくしたってことかねぇ……って怪我はしてないじゃないか!」


 「ダークエルフさん、貴方の名前を伺っても?」


 「あぁ、私も名乗っていなかったわね。私はマリアだよ。さてリリアとりあえず私の住む村まで案内するからそこで詳しいことを聞かせてもらうよ?」


 「はい。私に答えられる範囲でしたら……」



 マリアに連れられ森の中を進むこと40分経過し村にたどり着いた。道中また3体の狼に襲われたがマリアがあっさりと倒したのでその死体を回収し村に向かう。その村は茅葺屋根の家で太い木の幹で作られた柵で村を守っているらしい。



 「着いたよ、ここが私の家さね。早速話を聞きたい所だが……」


 グゥキュルルゥ~


 「……っ」


 「……お腹が減っているようだから先に飯にしようかね。リリア?狼をだしな」


 「分かりました」


 理亜が空間魔法で狼の死体を出すとマリアは持っていたナイフで狼の解体を始めた。

おびただしい量の血が流れてくる狼を見て


 「……おぇ」


 「なんだいりリア?解体を見るのも初めてだって言うのかい?軟弱ものだねぇ」


 「すみません……」


 「とりあえず数日はこの家に住んでもいいから解体程度にはなれておきな。アンタにもやってもらわなくちゃならないからね?」


 「……ありがとうございます。頑張ります……あっ」



 ここまで発言したところで理亜はスキルに調理があったことを思い出す。


 「ん?どうしたんだい?リリア」


 「えっと解体は無理ですが料理ならできたと思いますのでお肉を頂いてもいいですか?」


 「構わないよ?好きなのを使いな!」


 理亜は解体され生肉となった狼を手に取ると調理スキル発動。マリアの家にある調理器具を鑑定しながら狼の肉を切り分けては鍋に放り込んでいく。鑑定と調理を同時使用することで調理の最適温度が分かるようになっているのだ。ちょっと臭みのある狼肉には山菜のにおい消し効果を持つ草で炒めホイコーローにした。


 狼の骨と内臓に関しては鑑定の結果、出汁になる程度に旨みがあるという結果がでた為、水や火を生み出す生活魔法と同時使用することにより弱火でじっくりコトコト煮込み出汁をとっていく。この出汁については今日はまだ飲めないのでその旨をマリアに伝えておく。


 他にはマリアの家にあった調味料を幾つか使い、狼肉のステーキとハンバーグを作り上げた。

何故肉料理が多いかというと単純にマリアが肉食系だからである。



 「リリア!あんたこんなに料理を作れるのかい!?」


 「体が勝手に動きました……」


 「味も……今までに食べたことの無いレベルで美味しいわっ!あの狼肉がこんなに美味しくなるなんて

これだけのことができるならうちの家にずっといてもいいよ!」


 マリアはホイコーローとステーキハンバーグを食べ、一応用意しておいた山菜のサラダには手をつけなかった。


 「マリアさんの気持ちは嬉しいのですけど、私は何かをしなくちゃいけない気がするんです。ですのでしばらくこの村で武器の扱いの練習をして大きな町に出たいと思います」


 「……そうかい。まあリリアがそういうならしょうがないねぇ。私としてはいい拾い物だと思ったんだけどねぇ。まあ武器の扱いについては村を守る警備兵達がいるからそいつらに習いな」


 「ありがとうございます」




 マリアの口添えのおかげで理亜は棒術の練習をすることができなんだかんだで2ヶ月の時が過ぎたのだった。

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