1話 プロローグ
1話
わぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
怒号が響く。
殺せ。殺せ。殺せ。偽聖女を殺せ。
会場に民の怒りの声が響き、大地が揺れる。
会場には衛兵に囲まれて紐で束縛された少女の姿。
「見て。先輩。みんな貴方の死を望んでいるわ」
くすくすと金髪の少女が笑う。
「ねぇ、先輩今どんな気持ちです?さっきまで貴方を聖女だって祀ってた人間たちに罵られるってどんな気持ちですかー?」
先輩と呼ばれた銀髪の少女に顔を近づけた。
その間にも殺せ、殺せ、殺せと会場に声が響きわたり、銀髪の少女を束縛している兵士たちからも殺意の視線が注がれていた。
「かわいそう。先輩。みんなから嫌われちゃって」
金髪の少女が笑うと
「一つだけ聞かせて」
「はい♡なんですか?」
「……母を殺したのは貴方?」
その問いに、宿る瞳の殺意に、金髪の少女は嬉しそうににまぁっと笑う。
「ふふ。だって仕方ないじゃない。邪魔だったんだもの」
銀髪の少女の瞳が揺れる。
殺意と悔しさと、憎しみ。
その表情に金髪の少女は歓喜の表情を浮かべた。
「あはー♡私をあんな目に合わせた罰ですよ先輩♡」
そう言って銀髪の少女の口元にビンを近づける。
「この薬、何度ももがき苦しんでは死んで、生き返るをかなり長い間繰り返す毒なんですぅ♡ うまく転生できることを祈ってください♡
私に逆らわなければ、ギロチンで楽にいけたのにかわいそう♡」
そのまま強引に口を開かれ、毒が注ぎ込まれた。
金髪の少女の瞳に映る狂喜。
そこに戸惑いはない。
「さぁ、見るがいい、聖女を騙った不届き者の末路を」
大神官が会場中に告げる。
まるでそれが見世物であるかのように。
銀髪の少女からあがる悲鳴、もがく呻き声。
少女の苦しむさまに熱狂する民衆。
――銀髪の少女はもがき苦しみながら呪う。
自らをはめた聖女を
何もできなかった自分を
そして抗うことを許さなかった世界を
けれど。
飲まされた毒に抗うことは叶わず息絶えた。
これは――聖女として献身的に国に尽くした少女が偽聖女と断罪され――逆行して復讐をやり遂げる物語。
―――のはずだった。
「ふふ……ふふふ……」
声が響く。
本来なら興奮の歓喜と騒音でかき消されておかしくないほどの声。
それなのに――なぜか、その場にいた者に認識できたのだ。
声がやむ。まるで吸い寄せられるように視線が――集まる。
会場の中心には口から吐いた血で真っ赤に染まったドレス姿の偽聖女。
「皆さま、満足していただけたかしら」
誰も視線を離せない状態のまま――その声は響いた。
その場にいた者すべてに。
まるで呪詛を吐くように。
声が皆に強制的に入り込んでくる。
ばさりっ!!!
羽が開かれたときの音が響く。
目が離せない。
目の前で、偽聖女の背中に美しい金色の羽が現れたのだ。
そう――数千年に一度生まれるといわれる、巨大な力をもった聖女の証である金色の羽。
「喜んでいただけたならよかったわ―――」
そう言って少女はゆっくりと立ち上がる。
血を吐きながら、妖艶な笑みを浮かべて。
「だって、喜びからの絶望のほうが美しいでしょう?」
一歩一歩。
金髪の少女に近づく。
そして目の前で止まると
「私が、復讐したいのは回帰した貴方ではないわ――
今この場にいるあんたよ」
そう言ってにたぁっと微笑んだ。
そう――これは回帰に抗う、転生聖女の復讐の物語。




