14話 追及?
会場がざわめく。
非難の目がリリーシャに向く中――ふふっと、アリアナはうつむく。
(もうばっちり★)
そう思って心の中でにまぁっと笑う。
(先輩を追い詰めるためにいっぱい頑張ったんだし、これくらい当然♡)
作戦はこうだ。
まず、ユリウスが部下を使って麻薬が蔓延してると不安を煽りまくる。
そして、その麻薬が、かつて一つの国を滅ぼしたといわれるほど中毒性の強いベルノア草と騒ぎ、リリーシャが金欲しさに普及させようとしていた。という筋書きだ。
うまく調合すれば万病に効く薬ができるが、麻薬として使うと、中毒性と快楽性が高すぎて人をすぐ堕落させる。
それが故、ケルタ族が厳重に管理しているのだ。
この薬を普及させたとなれば、たとえ聖女といえど断罪は免れない。
ユリウスが前もって、リリーシャが娼館を隠れ蓑にし、非合法な手段で金を集めているという噂を、こっそりと流している。
もちろんその場ですぐ信じる者はいなかった。
単なる誹謗中傷だととらえる者が多かったのだ。
平時はその噂はまったく意味を持たなかった。
(だけど――この状況ならどうかしら?)
疑惑を補強するには十分だ。
(その噂を思い出すだけでだいぶ違うはずよ♡)
ユリウスが植えた種が今芽吹こうとしている。
予期した通り――「そういえばリリーシャ様は娼館でお金遣いが荒いって」「叔父にお金を取られて資金が枯渇してると聞いたことも」「皇族や貴族に気に入られてるのは接待がすごいって聞いたことあるわ」
民衆からざわめきが聞こえる。
ユリウスがまいた種が芽吹いた。
アリアナはユリウスを見る。
民衆のざわめきの中、リリーシャとユリウスが見つめあっている。
「……これは何の冗談でしょう」
リリーシャが聞くと、ユリウスは首を横に振る。
「すでに複数の証言は取れています。
貴方がケルタ族の集落に向かうところも複数証言が」
そう言ってユリウスが調査書を取り出した。
「ふふ。お戯れを。姿を真似る魔道具が存在するのにそのような証言だけで、私を容疑者呼ばわりは心外ですわ」
「もちろん、そのような証言は意味をなしません。ケルタ族族長をわざわざ連れてきた意味を貴方ならとっくにお見通しなのでは?」
そう言ってユリウスがにっこり笑う。
キた――!!
ユリウスの後ろで笑いを必死にこらえながらアリアナが心の中で叫んだ。
そうよ。ここが私が頑張ったところなんだから。
「ケルタ族は聖女を判定する秘具を所有している――
貴方がその事実を知らないはずがないでしょう?」
そう言ってユリウスがリリーシャを見つめる。
つまりケルタ族が売った。この事実こそ証拠といっても過言ではないのだ。
もちろんケルタ族から買ったのは姿を変えたアリアナなのだが。
リリーシャの姿で聖女と認定され、麻薬を買った。
そしてその罪をリリーシャになすりつける。
これでリリーシャは大罪人だ。
アリアナという正当な聖女がいる以上、たとえ聖女であっても断罪される。
――これで先輩が断罪されれば、先輩とはバイバイ!
この世界線では私が聖女として崇め祀られるの。ごめんね先輩――
アリアナは心の中で笑うのだった。




