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【百合がだだ漏れの観測記録】クラスメイトがわたしのことを好き過ぎて大変なことになった。  作者: 丹波謙虎


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第10話 『わちゃわちゃテスト勉強』


ある日の放課後。

帰る支度をしていると、ひよりが自分の席でプリントをじっとにらんでいた。

ただ見ているというより、完全に敵を見る目だった。

紙切れ一枚にそこまで本気になれるのも、ちょっとおかしい。

でも、本人はたぶん、まったくふざけていなかった。


「ひより、なにしてるの」


ひよりは顔を上げて、それからまたすぐプリントに目を戻した。


「国語と戦っています」

「負けてるっぽいね」

「……はい」


返事が素直だった。

それだけで、思ったより深刻そうだとわかる。

わたしは鞄を机に置き直して、ひよりの席の横まで行った。


「これ、小テスト? 国語、苦手なんだ?」

「作者の気持ちなんかわかりません」

「まあ、それはそう」

「でも、テストはそうも言っていられません」

「うん」

「このままでは、期末テストがまずいことになります」


そこでひよりは、少しだけ間を置いた。

それから、思い出したみたいに顔を上げる。


「そういえば、リン、国語、得意ですよね」

「苦手ではないかな」


ひよりは黙って、じっとわたしを見た。

何かを期待するような、そんな目で。


「じゃあ、テスト勉強一緒にする?」

「……」

「誰かと一緒の方が集中できるし」


ひよりは、ほんの少しだけ目を丸くした。


「それ、お願いしたいです……」

「じゃあ、そうしようか」


そのときだった。


「えー!! 二人でテスト勉強するの!?」


教室の後ろから、ありすの声が飛んできた。

静かだった放課後が、一瞬で放課後っぽくなる。


「声でかい」


振り返ると、ありすが鞄を片手に立っていた。

目だけがやたらきらきらしている。


「だって今、すごい言葉聞こえたもん。テスト勉強って言ったよね?」

「言ったけど」

「二人で!?」

「そうだけど」


ありすは、ずかずか近づいてきて、ひよりの机のプリントをのぞきこんだ。


「うわ、ほんとに勉強するやつだ」

「あたりまえです」

「ひより、国語だめなんだってさ」

「作者の気持ちなんてわかりません」

「大丈夫、それはわたしもわかんない!」

「全然大丈夫じゃないな」

「じゃあ、わたしも混ぜて!」

「ありすも国語が苦手なんですか」

「国語だけじゃないよ」

「え」

「全滅」

「全滅、ですか」


ひよりは、ちょっと引いている顔だった。


「英語も、数学も、理科も、社会も、なんか全体的に危ない!」

「広いなあ」

「そもそも期末テストって、範囲が広すぎない? あれ、だいたい全部じゃない?」

「期末テストだからな」


ありすは机に両手をついて、ぐっと身を乗り出した。


「お願い、混ぜて!ひとりだと全然やれないの!」

「そんなに?」

「教科書開いて三分で違うこと考えてる」

「だめだね」

「そう、だめなの! わたし全然だめ!」


それから、ありすは今度はわたしを見た。


「リン、お願い。ちゃんと静かにするから」

「今もう全然静かじゃないけど」

「ここから静かになる! たぶん!」

「たぶんなんだ」


でも、ありすが入ったせいで空気が軽くなったのも本当だった。

わたしは少しだけ考えて、それから言った。


「まあ、いいよ。三人でも」

「やった!」

「ただし、ほんとにちゃんと勉強するならね」

「するする。今日はする。たぶんする」

「急に信用なくなること言うなよ」


ありすは空いている席を勢いよく引いた。

がたん、と音がして、ひよりがちょっとだけ目を細める。


「……にぎやかになりました」

「そうだね」

「本当はリンと二人の予定だったんですが」

「それはマジでごめんって!」

「まあ、三人でもいいです」

「ほんと?」

「全滅を放置するのも、後味が悪いので」

「やさしい!」


そういうわけで、わたしたちは三人でテスト勉強をすることになった。


最初は二人だけのはずだったのに、気づけば机を寄せて、ノートを広げて、少しだけ騒がしい。

でも、こういうのも、悪くない気がした。



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