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SAVE A MALL ―セーブ ア モール―  作者: 福山直木
三幕 “彼女”のために……
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奔走!救世主タチ!7日目  その2

八重をブルーベリー栽培の準備に誘うため、食堂へ向かう。すると、店の前でばったり出会った。


これから、出かけようとしているところだった。


「何?忘れ物?」

「いや……ちょっと話があって……」

「私に?」

「うん。歩きながらでいいから、話を聞いて欲しいんだけど」と伝えると、静かに頷き、歩き始めた。僕も彼女と並んで歩く。


「この名物グルメをどうしたいと考えてるんだ?」

「商店街の名物になればって……思ってる」

「具体的には?」

「最初はね……なんか話題になったらいいなって思って……。ただ、それだけだったの……」

「話を大きくしちゃったのが、まずかったのか?」

「うんん、そうじゃないの……。大きくしてほしいの……」

「えっ?」


「本当は話題になってほしい……できることなら……」

「なら、もっと売り込むしかないだろ?どんなにうまくいかなくても、やり続けなきゃ……」

「そんなの……そんなの、私が一番知ってるよっ」

「や、八重?」


「商店街の人たちはみんな協力的だけど、今協力してくれている人たちの中に結構、乗り気じゃない人も居るんだよ……。私や委員会の人たちに気を遣ってくれてる……。だから、正直やりにくい……」

「そ、それはそうかもしれないけど、みんな真剣に考えてくれてるんだ。本心はどうであれ、協力しようとしてくれてるんだぞ。やりにくいことなんて全然……」


「船ちゃんは知らないんだ? 前にも、コロッケとチーズケーキを売り出そうとしていた事……」

「えっ……そんなの初耳……じゃ、ないかも……」


まだ僕が地元に居た頃の話。その街に八重も住んでいた。手伝いもまだしていなかったため、家業のことは話題にしなかった。

ただ、数ヶ月に一度、家族で食堂に行っていたため、そんなメニューを見た覚えがある。いつの間にかメニューからは消えていたため、その印象は薄い。


確か、その頃の八重は……



「再開発計画が本格的になる前の話。その時のきっかけも私……」

「そうなのか……」

「どうにかして寂れた商店街に人を呼び込めないかって話になって、私が提案した案が採用されたの。それは今回提案したものと同じ内容なんだけどね―――」


結局、商店街全体が納得する結論は出ず、一度は白紙になったらしい。商店街の総意が得られないことを、組合の費用を出して行う訳にもいかなかった。


だが、諦めきれなかった当時の組合長が、各自でやろうと彼女の案を推した。立場的に否定的だった店もやらざるを得ない空気ができたという。


「最初は、細々とでもやっていこうと多くの店が売ってくれた。だけど、大半の店はすぐに止めた。全く売れなかったの。余ったからって材料や在庫を私の食堂へ持ってきた人も居た……」


「やるんじゃなかった……なんて言う人も居た。ごめんね……って私に謝りながらメニューから消した店もあった。浮かない顔をしていた私を見かねて、しばらく続けてくれた店もあった」と言いながら、ある空き店舗を指差した。


「……ここにはね……小さなお惣菜屋さんがあったの……。一番協力的で赤字覚悟でたくさん売り込んでくれた……私のためにいろんなアレンジもしてくれた。他のお店にも声を掛けてくれた。……でも、再開発計画が決まる頃に、病気で倒れちゃって、お店閉めちゃった……」


「それは、八重が責めることじゃ……」

「この商店街で、一番可愛がってくれたおばあちゃんだったんだよ…その人…。丈夫とは言えない身体に鞭打って、いろんなことをしてくれてたなんて、聞かされたら……誰だって、責任感じるでしょ……」

彼女は今にも泣きそうな顔をこちらに向けて、俺に返事を仰いだ。



「ごめん……変なこと言った……。この話は止そう…。ありがとう、話してくれて……」

「うん……」



たぶん、そのタイミングだったのだろう。ある時期から、彼女は元気を無くし、休みがちになったこともあった。

気になって、その訳を訊こうとしたが、はぐらかされた記憶がある。

いつの間にか普段の彼女に戻っていた。だから、気にも留めなかった。



「…あのさ、もし名物グルメを盛り上げる活動があったとして参加したいか?」

「うん……。したい」


「みんなで盛り上げよう。もっと売り込もう。そのために八重の力を借りたい。協力してくれるか?」

「うん……」


「……ひとりで抱え込まないって、約束してくれるか?」

「分かった……」

「ありがとう……」


八重が抱えていた重荷を知ることができた。そして、彼女を活動に引き込むことができた。


もやもやが晴れた訳じゃない。だけど、確実に一歩前進したような気がする。


名物グルメを成功させる。

その気持ちはより一層、強くなった。

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