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緑の拳士~ゴブリンハーフは魔法が使えない~  作者: ハンドレットエレファント


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386/386

386.リンファが掴んでいた物

「そんな化け物……殺しちゃえばいいんだ! そしたらみんな助かるんでしょ!?」


少女は震えながら叫び、意識のないリンファに向かって叫ぶ



「お、お前なんてこというんだバカ野郎! リンファが居なかったらお前は死んでたかも知れねぇんだぞ!」


「違う! そいつが街を滅茶苦茶にしたんだ! そいつの仲間がお父さんやお母さんを……あああああ!」



グリフが怒って反論するも、更に声を上げて少女は叫ぶも感極まったのか言葉にならない言葉に変わった


少女の服は泥と血で汚れ、体中に小さな傷を作っていた

その小さな体で何を見たのかを思うと、グリフも言いかけた言葉を飲み込まずにはいられない



「君……名前は何という? 私はアグライア……リリー・アグライアだ で、こっちはグリフ」


泣きながら鋭い目を向ける少女にアグライアは優しく話しかける


少女はアグライアを睨みつけながらも、ゆっくりとその口を開いた


「ろ、ロベリー……」


「ロベリーか、いい名前だ 君が辛い思いをしてきたのは見ればわかる 大変だったね……」


「ゴブリンが……ゴブリンがみんなを殺したんだ……! そいつが!殺したんだ!」


「それは違う、リンファは君や人間を助けようと必死に戦っていた ロベリーはリンファとゴブリンを間違えてるんだよ……」



地獄を見てきたのであろうロベリーに対してあくまでも優しく言葉を選ぶアグライアだったが、ロベリーの怒りと悲しみは収まらなかった


「何が違うのよ……! そいつみたいな緑色の化け物が、皆を殺したんだ……! それに!」



ロベリーはあふれる涙を必死にこすり上げ、目を真っ赤にしながら言った



「神様がそいつを殺したら人間を助けてくれるって言ってた! だから!」


「それはアイツの嘘だ! そんな約束が守られるはずがない……!」


「嘘でも何でもいい! そいつのせいなんだ! おかあさん!おとうさん!ああああ!」




その泣き声に、その場にいた全員が目を伏せて立ち尽くす



泣き叫ぶロベリーをサクラコが抱きしめる

アグライアはリンファのなくなってしまった右腕を握りしめ、唇をかみしめた


その時、アグライアの手をそっと何かが包み込む




「あ、アグライアさん…… こ、これをあの子に……」


「り、リンファ! 目が覚めたのか!?」


アグライアの目が見開き揺れる

リンファはその目に小さく微笑むと、震える手でアグライアにそれを託した


それは……



「これ……あの子にとってきっと大事な……物……だから……」


「お前……ずっと手を離さなかったと思ったら……こんなものを……」



リンファは気を失ってからもずっと左手に布に巻いた何かを握りしめていた

治療中もその手は絶対にそれを離すことはなかった


それを失ってはいけない、その一心でその手を握りしめていた

自らの切り落とされた右腕よりも、それを掴み離さなかったのだ





それは、首だけになってしまったウサギの人形

泥だらけで、目のボタンはほつれて、綿まで飛び出したボロボロの人形……



アグライアは思わず流れてしまった涙を拭いながら、その人形を手にする

リンファは苦しそうにほほ笑むと、ロベリーの方にわずかに視線を向けた



そんなリンファをロベリーは怒りに満ちた顔で見つめる



アグライアはロベリーの視線からリンファを守るようにゆっくりと立ち上がると、泥だらけのウサギの人形を手で優しく払いながらロベリーに手渡した



「これ……君の大事な物……なんだろ?」


「……」


ロベリーはそのウサギを礼の一つも言わず、両手で掴む

受け取るでもなく、ただ握りしめ涙しながらそのウサギを見つめるロベリー……




「この人形を、アイツは……リンファはずっと持っていたんだ 気を失っても絶対に離さなかったんだよ……」


あの時、ロベリーが石を投げる為に手放したウサギの人形

両親と街を滅茶苦茶にした化け物を殺すために投げ捨てた大事な物を。その化け物が必死に守ってくれていた



そのウサギの人形は誕生日に両親がくれた大事な宝物

妹の様に大事に扱っていた家族の象徴……



その人形と両親とで食卓を囲んで、その日のあった事を話すのが何より楽しかった


今はもう、その人形の首しか残っていない

街も、家も、両親も、残っていない




その人形を大事に守っていたのは、自分の大事な物を滅茶苦茶にした化け物の仲間

その事実にロベリーは叫び、アグライアからその人形をひったくるように掴み取った!




「こんなものあったって! 何の意味もないよ!!」



ロベリーはウサギの人形の耳を力任せに引っ張ると、それを憎しみを込めて地面に叩きつけようと振りかぶる


そしてその手が正に振り下ろされようとした時……




「ダメだ! それを絶対に捨てちゃだめだ!!!!!」





その思わぬ大きな声量にその場に居た全員……ガルドですら驚き目を丸くする


立ち上がるのもまだ苦しいであろうリンファが、体を震わせながら叫んでいた

ロベリーはその声に驚き、手を止めて体を竦めてしまう




そんなロベリーの顔を見ながら……けれど怖がらせないように目をあわせないようにして、リンファがゆっくりと話しかけた



「怖いよね・・憎いよね 石を投げたくもなるよね…… いいんだ、僕に石を投げてもいい でも……」



リンファは震える左手を、そのうさぎに向ける



「憎しみや悲しみの感情で……自分の大事な物を……こわし……ちゃ……ダメ……」


リンファはそのウサギを必死に指し示すと、体を支えきれなくなったのかガクンと体勢を崩す


「リ、リンファ! しっかりしろ!」


慌てて駆け寄るアグライア


その様子をロベリーは茫然とみつめ、もう力を込めていない手で、そのウサギを所在なく抱きかかえた――――



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