23.空中大乱闘
多くの人々が行きかう空の梯子のど真ん中
絶景広がる空中で、騎士団数十名とリンファ達2人の大乱闘が繰り広げられる
「あの穢れは魔法に弱い!動きを封じて一気に止めを刺すぞ!」
隊長の指揮に連動し、前後数人の騎士が魔法を発動させる
「「セイクリッドチェーン!」」
四方からリンファに向かって聖なる鎖が同時に放たれるがリンファはヒュっと一呼吸すると
新体操の選手の様に迫りくるチェーンの一本を側転からバク転につなぎ、逆立ちの様な状態から腕の力で跳躍!
チェーンを発動している騎士の真横につくと発動させている魔玉剣を回し蹴りで弾き飛ばした
「その魔法、速いけどすっごく直線的なんですよね!」
武器を弾き飛ばされ狼狽する騎士の鎧に両手を当て、零距離で掌底を叩き込む!
【八極剛拳 白虎撲子(弱)】
鎧の硬さなどお構いなしの魔導発勁が炸裂し見えない壁に吹き飛ばされる騎士だったが、その手をリンファはがしっと掴み通路中央に回しながら足払い!
「ないと思うけど!海に落ちたら危ないですもんね!」
その場で回転するようにひっくり返る騎士の向こう側から火球が数発発射され、その炎はリンファに襲い掛かる!
リンファの後ろからその火球に向かって盾を構えてアグライアが突進し、火球を払いのけるとその脇からリンファが箭疾歩で飛び込む!
次弾の詠唱を中断された騎士が剣を構えるがアグライアのセイクリッドチェーンがその手を捉え体勢を崩す
「いいぞリンファ!やれ!」
その瞬間にアグライアはチェーンを消し、崩れた騎士の左脇をリンファの蹴りが真下から炸裂!
【八極剛拳 夜鷹穿弓腿】
リンファはその蹴り足を相手の肩にひっかけるとクルリと体勢を入れ替え、魔力の共振で起きる衝撃を使って跳躍
アグライアに切りかかる騎士の魔玉剣を飛び蹴りで破壊し、よろけた相手にアグライアの盾による強打が炸裂する!
「助かった!ありがとうリンファ」
「こちらこそです!魔法攻撃のフォロー助かります!」
掛け合う言葉もそこそこに次の敵に二人は飛び掛かる!
リンファに魔法を唱えようと足を止めた者にはアグライアが詠唱の阻害、アグライアが狙われればリンファが強襲!
神聖騎士団お得意の相手を囲んだうえでチェーンで束縛して無力化するという戦法はリンファの動きが速すぎて対応できず
それ以外の連携が取れずに逆に無力されてしまう始末
騎士団はリンファに魔法を直撃させようと足を止めて詠唱を開始させるが
その瞬間をアグライアが待ってましたとセイクリッドチェーンを発射し相手の剣を絡みとる!!
体勢が崩れ詠唱が中断されるとアグライアはチェーンを消失させ、障害物がなくなった間合いをリンファが一気に詰め拳が直撃する
「なんだあの粗暴な魔法の使い方は!?アイツはあれでも誇り高い神聖騎士団の騎士だったのか!?」
「フフッ騎士団の魔戦教練では動きながらの詠唱は基本禁止されているものな!こんなにお行儀悪く魔法を使われちゃやりにくいよなぁ!」
アグライアは足を極力止めないように動きながら、剣は最初から逆手に構え魔法の詠唱に絞り、打撃は盾のみで戦っていた
セイクリッドチェーンも相手に接触すればすぐに消失させ、とにかく相手の行動の邪魔をすることを優先
「リンファを何としても倒したいのが見え見えなんだよ! 絶対にそれはさせない!」
元々捕縛用の魔法であるチェーンをこんな風に使われたことがなく、騎士団は対応に苦慮する
リンファの肘が敵に炸裂した瞬間、上空から雷撃、背面から火球が襲い掛かったが、リンファは火球を手の螺旋運動で制御するとそのまま火球と雷撃を衝突させて相殺!
もう一度詠唱にとりかかる二名の騎士のうち一名の魔玉剣めがけてリンファが一気に踏み込んで破壊!
すぐにもう一名に飛び込もうと視線を向けるとアグライアがそいつの顔面に盾を投げつけて無力化していた
「ナイスコントロール!そんなおっきい盾投げられるのすごいです!」
「投げて牽制しようとしたら直撃したんだ!ラッキーだったよ!」
盾を回収しながらニヤッと笑うアグライアにリンファもつられてニヤっとした
「おのれぇ!こうなればもろともに吹き飛ばしてくれる! 豪射の隊形を取れぇ!」
隊長らしきものが号令を発すると門側に全員が集合し、前側の数人が盾を構えバリケードの様になり、後方の隊長はじめ数人が詠唱を開始する!
「豪射隊形!?こんな往来のど真ん中で広域魔法を撃つつもりか!」
「魔力の流れがどんどん大きくなってる……」
島側の通路には混乱の最中逃げようとするもの、何が起こったかわからず混乱する者、やじ馬でみているものなど多くの人が残っている
「アグライア!そして異形の穢れよ! おとなしく神の炎に焼かれよ!」
巨大な火球がうねり巨大な蛇のような姿に変わっていき、意志を持っているかのように宙を舞い始める
その熱は数メートル離れたリンファ達に伝わるほどで、熱が強風を呼ぶ!
「如何に貴様らが奇怪な技を使おうとも、この鉄壁の隊形を容易には崩せまい……」
『もし逃げたりかわしたりしたら後ろの人が巻き込まれちゃう!』
リンファはチラリと島側の方を確認すると、強く踏みこみ足元の魔力と自身の顕現できない魔力を共振させる!
「アグライアさん!光の壁を!」
「何!?」
「馬鹿め!どんな防御魔法であろうとこの威力の魔法を弾けるわけがなかろう!死ねぇ!」
「光の壁を 上空に!」
「! そういう事かぁ!」
アグライアはその言葉に意を得たりと手の大きさほどの光の壁をフリスビーの様に数枚、騎士団の上空に向けて放射させる!
「私を踏み台にしろ、リンファ!」
「いきまああああっす!」
アグライアが盾を構えるとリンファはその盾を足場に踏み込み、その踏み込みを感じたアグライアが全力で盾を振り抜く
その勢いを利用して跳躍、騎士団の陣形の上空に張られた光の壁を跳び前転で飛び込み掌で更に跳躍!
もう一枚の光の壁を脚でけりこみ、その勢いでバリケードを突破
まるで空を跳ぶかのように隊長の眼前に強襲した!
「な、なにぃ!?」
「詠唱をやめろぉぉ!」
今まさに放たれようとしていた巨大な炎蛇の詠唱をする隊長の体に崩拳・重を叩き込む!
そのまま他の詠唱者にリンファは突進
一瞬の出来事に思わず注意を逸らしてしまう前衛のバリケードにアグライアも特攻し、乱戦に持ち込まれる
混戦の最中形成された炎の蛇は詠唱を中断され大気に徐々に霧散していく
「リンファ!一気に押し込むぞ!」
「はい!この人たちの剣を一本残らず破壊します!」
戦場の勢いはリンファ達に傾き、勝負あったと思ったその時
リンファの前に誰かが飛び込んでくる
「争いはいけない!ここは楽しい島だよー!喧嘩とかするのはよくないんだよぉおお」
「さっきの道化さん!? 危ないからどいて!」
道化の乱入に気を取られたとき、先ほど直撃させ無力化させたはずの隊長が朦朧としながら詠唱を完了させてしまう
「神の裁きを受け……ろ……薄汚い穢れの化け物め……!」
勢いは失っていたものの十分な威力を残した炎の蛇がリンファと道化に襲い掛かる
「リンファ!よけろ!」
アグライアがそういいながら光の壁を詠唱し炎を阻害しようとするが間に合わない!
「あわああああ炎のスネークが牙をむいーてるっよおおおお」
道化は思わず頭を抱えて座り込んでしまう
『よければ道化さんが危ない、螺旋で散らせば周りの騎士や往来の人が危ない!』
リンファは視線だけで回りの状況を確認し、両足をふんばり両掌を突き出し構える!
迫りくる炎の蛇を前にリンファ脳裏に浮かぶのはステラとの戦いのあの瞬間
ステラが攻防で見せたあの動き、魔導発勁の技を無力化されたあの技を!
「守って見せる!僕にだってできるはずだぁ!」
炎が直撃するその刹那、リンファの双掌打が炸裂し炎の魔力を逆位相に共振させ無力化、荒れ狂う蛇がまるで狼に噛み千切られるように形を奪われていく!
【八極剛拳 極光双掌打】
炎は炎上することも爆発することもなくその威力のほとんどを霧散させていく
だが威力を殺しきれず、リンファはその身を焼きながら吹き飛ばされてしまう!
フラフラと定まらぬ視線で指先に上空に掲げ、ブツブツと更に詠唱を重ねようとする隊長
「させるかぁ!」
アグライアはそれを止めようとチェーンを発動させながら急いで駆けつけようとする
「神の怒りに触れよ!ゴブリンクイーンの尖兵よ……!」
迫るチェーン!振り下ろされようとする指先!
だがその両方は何者かにガシリと掴まれ、一気に抑え込まれた
「なっ……!?貴方は……!?」
アグライアは驚愕し視線をその何者かに注ぐ
「神の怒りの前に、私は怒っているよ神聖騎士団の諸君……」
倒れるリンファの前に立ち、両者を抑え込んだまま
道化を演じた天空宰相ルキウス=ファルネウスは笑顔でそう言った――




