Ep.111 火急の報⑦
ミラとファプレはツミグロの村に到着すると、村の外にテントを建て中に荷物を入れてから村の中に踏み入った。ミラは依頼書を片手に辺りを見回しながら村の中を進み、とある一軒の家の前で立ち止まる。
「ここね。」
ミラはそういうと、上から吊り下がっているように設置された藁の扉をめくりながら
「ごめんくださーい。」
と中の住人に伺いを立てる。そのまま中の様子をチラチラと見回してから、ミラはファプレの方へ向いた。
「いまどきなかなか珍しいよね、こんなお家。」
「ええ。でも私こういうのにちょっと憧れてたのよ。」
「あはは、わかる。ザイリェンも海洋国もこういう家じゃ危険だもんね。」
ミラはそう言い、愛想笑いをする。すると、二人の背後の道を通る青白色の髪の女性にミラの目が釘付けになった。
「スピカ!!」
「え?ミラ!?」
スピカと呼ばれた女性はミラの声に反応し、彼女のもとへと駆け寄った。二人はお互いを確かめるように視線を往復させ、そして互いに抱き寄せあった。
「久しぶり!元気してた?」
「スピカこそ!」
「あははっ、アンタ、背伸びなさすぎじゃない?」
「なっ、スピカがおかしいのよ!少しは私に分けなさいよ!!」
スピカは手を高く挙げビラビラとミラをおちょくるように掌を振る。180センチ超えのスピカに負けじと手を伸ばし何度もジャンプを繰り返すミラであったが、150センチにも満たない身長では限界があった。やがて疲れ果て肩で息をするミラは、稲穂のように眼前を揺れる双丘に狙いを変え、勢いよく鷲掴んだ。
「ひゃっ!」
「ぐへっへへへへぇ!暫く見ないうちにこーんなに実っちゃってまあ……揉んだる!揉んでせめてここだけは小さくしたるわァ!!」
「ひぇぇ、ミラが、ミラがおじさんくさくなってるぅー!」
「こら、そこまでにしなさい。ミラちゃん。」
ファプレは暴走を始めたミラの首根っこを掴み、スピカから強引に引き剥がす。そのまま暴れるミラを抱えながらスピカに向けて頭を下げる。
「ごめんなさいね、うちの子がご迷惑をおかけして……」
「いえいえ、そちらの方こそ。いつもその子が持ってくるのは面倒事ばっかりでしょう?」
「子供!扱い!すんなぁぁぁぁぁ!!!」
ミラの訴えが無情に響き渡る。ファプレとスピカは大人の女の余裕を見せながら一頻り笑い、そしてスピカが再び口火を切った。
「そういえばミラ、魔法少女まだ続けてるの?」
「だからその言い方やめなさいって。特に少女の部分。」
「あれミラちゃん、その呼び名嫌いだったの?」
ファプレはそういうと、ミラを地面に下ろした。
「いや嫌いとかじゃなくてさ。私もう20歳なんだから、少女は無理あるでしょ。」
「えー、あんなにノリノリで"アタシは魔法少女ホワイトステラ!悪は絶対許さなーい!!"って言ってたじゃん。」
「何年前の話よ!あとあんまりファプレの前でその話しないで!」
「というか、続けてたんだ。正義の味方。」
スピカはそういうと嬉しそうに、それでいてどこか寂しげに笑った。ミラはその様子を見て照れくさそうに顔を真っ赤に染めながら頷いた。ファプレは様子が分からないと言った様子で二人を見つめていると、ミラがファプレに近付いて言った。
「スピカは私が初めて"ホワイトステラ"で助けた人なの。」
「そうそう!私たちの出身さ、ここでもザイリェンでもないところなんだけどね。」
「グレニアドールという、魔族と人間が共に住まう街の郊外ね。人間と魔族の戦争の最前線の街だったから、人が生きるにはなかなか過酷な土地だったんだ。」
「そこで私がちょっと山の中で迷子になって、魔物に襲われてたところを助けて貰ったのよ。」
「そこから仲良くなって、一緒に遊ぶことも多かったんだけど、戦争が終わった辺りで私はザイリェンに行ってそれ以来、ね。あれが7歳の時だから、13年前か。」
「そうねぇ、私が5つの時だったからねぇ。」
「え、ちょっと待って!?」
スピカの発言をファプレが驚きながら制止する。ファプレは目を大きく見開きながら二人を交互に見つめて言った。
「え?スピカちゃんの方が歳下?しかも18歳!?」
「はい」
「そうね」
ファプレは声にならない驚きを発し、口をパクパクさせながら少しずつ落ち着きを取り戻す。そしてスピカの方をまじまじと見つめながら言った。
「はぁー、最近の子の成長は凄まじいわねぇ……あっ」
「"あっ"って何かしら。どういう意味かしら。どうして私の方を見つめるのかしら。」
「い、いえぇ……なんでもありません。」
ミラに詰められながら、ファプレは謝罪の言葉をひり出した。スピカは手に口を当てながら笑いを堪え、プルプルと震えていた。




