強くてニューゲーム
俺は強い。
気づいたらこの世界の勇者の中でも
かなりレベルが高かった。
この世界では、
頭の上にレベルが数字で表示されるから
一目瞭然だ。
生まれ育った村連中のレベルが1なの対し、
俺のレベルは100だった。
だから、魔王討伐のために村を出ると両親に伝えた時は、
お前の生まれ持った才能を皆のために使いなさい、と涙ぐんで送り出してくれた。
村人たちも応援してくれた。
そして、村の周辺の雑魚魔物を一掃したのち、一人で隣村へと向かった。
そして、村から町へ、町から都市へと向かう途中に、焼け落ちた村で彼女と出会い、今は彼女を連れた旅の途中なのだが…。
森の中で魔物と戦うのには慣れていた。
しかし、彼女がいると…。
「やぁっ、きゃあっー」
「マリア!僕の背に隠れて!」
「はぃっ、でも、私も戦いのお手伝いがしたいのです!このままお荷物は嫌なの…!」
「いいんだ、これくらいなら僕だけで…!」
俺は言葉通りあっさりと敵を打ち負かした。
彼女のターンが来る前に。
この世界の戦いは、ターン制になっている。
俺、マリア、敵1、敵2、…、俺、マリア、
というような順に攻撃するのが世界の暗黙のルールとなっているため、先制の全体攻撃で勝利を収めれば敵の攻撃は、マリアには届かない。
もちろんマリアの攻撃のターンもないので、パーティにいないも同然だ。
しかし、彼女も力になりたいらしく、時々世界のルールを破って敵に体当たりしに行ってしまう。
それを遮るかたちで俺が戦っていた。
彼女が俺を手伝いたいという気持ちは有難いのだが、俺は簡単な回復魔法しか会得していないため、マリアが大きな怪我をしないかヒヤヒヤしてしまう。
パーティーではなく、同行人として戦い中は待っていてもらいたいのだが、同行人設定も彼女には効果がないようだ。
勝手にパーティーに入ってきて、戦いを始めてしまうのが困ったところだった。
この辺の魔物のレベルはまだまだ俺より格下なので瞬殺は可能だが、マリアのレベルはまだまだ低く、装備も整っていないため、魔物からの攻撃が当たると結構痛いと思う。それなのに、勇敢にも敵に体当たりしていってしまうところが心配でならない。
魔物との戦いに勝利し、チリリンッという小気味良い音が周囲に鳴り響くと、報酬の金貨がチャージされ、戦いに加わったメンバーに経験値が加算された。いつもはそれだけで終わるが、ピロリンっという音も鳴った。マリアのレベルが一つ上がったのだ。
俺はマリアに笑顔を向けた。
「おめでとう、マリア。マリアもついにレベル20
だな!」
「はい!勇者様!嬉しいです!これで、もっと勇者様のお役に立てますね!」
そう言ってマリアはぴょんぴょんと飛び跳ねて喜びを伝えてきた。
俺より顔二つ分背が低い女の子がそうやって無邪気にしているのを見ると、和む。
男一人の旅もワイルドで楽しいが、女の子が一人いるだけで、世界が色づいたような錯覚を受ける。
「前から思ってたけれど、マリアは普通の村人にしてはレベルが高いね、それともマリアの住む村がみんなそうだったの?」
「どうでしょうか…なにせ記憶がないので…」
「そうだったね、また嫌なことを思い出させてすまない」
考え込んでしまったマリアを前に、自分の出した話題に後悔した。
村の惨状を思い出させるなんて、自分はなんて浅はかなことを口に出してしまったんだ。
と、そこでマリアが突然顔をあげた。
「あ!わたし、一つ魔法を思い出しました!」
「お!すごいじゃないか。何系の魔法だろう」
「えっと、わからないのですが、今からこの草にやって見せますね」
そう言ってマリアは集中し、呪文を唱えた。
「どれい、んっ!」
んっ、の言い方が、あまりにも可愛すぎて草からマリアに視線を向かわせてしまった。
もう一度聴きたい。その、んっと言う声、なんなんだ。
俺の胸に突き刺さる。
「見てください!勇者様!ほら、こんな感じで」
マリアが草を指差しているのに気づいて、はっと振り返ると、なんてことない普通の草が地面から生えている部分を踊らせていた。
「なんだ…これは…」
「草に、ダンスしてって気持ちを込めて呪文を唱えたら、こうなったんです!」
「そうか。すごいな…」
何系の魔法なのかさっぱり検討がつかなかった。
草系なのか?他の草や花にも試すと、同様のダンスをし始めた。そして、マリアがもうダンスは結構、と思うと、ダンスは収まり、普通の草に戻っていた。
その辺にいる小動物にも効果があるようだった。
リスがダンスしているのを見た時は衝撃的だった。
戦いの旅の中で分かったことがある。
彼女の「どれい、んっ」は、彼女よりレベルが低い魔物に対しても効果があった。
つまり、魔物や人を思い通りに動かすことができる強力な黒魔術の部類の呪文だった。
彼女のレベルは15。
その辺の雑魚敵との戦いは、彼女の魔術で不戦勝できるようになった。




