貴方と出会う前の記憶
『大切な人と初めて出会った日を覚えてますか?』
誰かの脳裏にそう問いかける声が聞こえる。二人は互いの目を見て、声にならない声を交わす。
似たような人生を繰り返している。だが、全く同じではない。二人はいつの時代にも必ず出会い、共に過ごした。何故そうなってしまったのかはもう分からない。
二人は生まれる前の記憶を失っていた。だが、二人は再び同じように生まれて出会った。そこまでの強い繋がりがある理由は、もう二人には残されていない。
篤矢と星藍は空を見上げていた。そこでは今も音羽が戦っている。
「どうして、音羽君はそこまでして僕達を助けようとしてるんだろう。」
クォーツは二人を怪の攻撃から守っていた。
「ご先祖様達から託された使命だって聞いたけどそれだけじゃない。音羽君が助けたいからそうしている。違うかな?」
二人はお互いを見た。
「僕も音羽君も詳しい事情は知らない。だけど、昴様が二人の事を気にしていてね。二人が知りたいなら聞きに行ってと言いたいところなんだけど、この騒動で昴様も忙しくてね、残念だけど今は無理かな…」
音羽は今も戦っている。二人を守る為、一人戦っている。
音羽の家系である風見家が守っていた二つの魂、それが篤矢と星藍として産まれた。だが、何度も生まれ変わりを繰り返した結果、魂の記憶は薄れていった。
それだけではない。二つの魂は妖や怪に変じやすい性質だった。ある時代には互いを失った結果、妖になってしまった。それを防ぐ為、昴は二人の記憶を封印していた。
その性質を怪は狙っている。ゾフィーが星藍を狙ったのもそのせいだった。
本来二人は何事もなく結ばれ、平穏な人生を送るはずだった。だが、ゾフィーが二人の力を狙った結果、星藍は危うく命を落としかけた。風見家が助けなければ星藍は助からず、対となる存在を失った篤矢は人ならぬものに変異していたかもしれない。
そこまでの事情を二人はまだ知らない。本来なら知る必要はなかったが、事態は変わってしまった。
その為にはまず、音羽の戦いが終わらなければならない。
「音羽君、頑張って!」
二人は空を見上げ、音羽を応援した。




