奇形の子
エメルダは疲れ果てたシリカに持っていた薬を飲ませた。シリカは疲れて眠っているが、異常はない。
「ありがとうございます」
「これでも医者の端くれだから」
エメルダはショールやアゲートの様子を見た。
「現世を旅したばかりの頃、二人と同じように旅している子と会ったの。懐かしいわね。」
エメルダは三十年もの間、現世を旅している。エメルダは元々冥府の役人だった。ところが、ある事件を機に昴から水蛇と共に現世を旅するようにと命じられている。
「エメルダさんは長い事現世に居ますよね。どうしてなんですか?」
「私は人間が生み出した医学や科学について研究しているの。」
「人間が作り出したものを研究するのに何か意味があるのですか?」
「ええ、あるわ。私達は元々人間だった。だから、人間について調べれば私達の事も分かるはずなの。」
「しかし現世と冥界とでは環境も違いますから同一視すべきではないと思います。」
ペタライトが反論するがエメルダは全く動じない。外見は若々しいが、一同の中では年長者なのだろう。
「奇形の子達と出会った後、何故一定の確率でそのような存在が生まれるのか考えていた。人間は生物は遺伝子という設計図を元にして生まれると言っていた。私達にも遺伝子があるならそれを調べれば奇形の原因も分かるのではないかしら。」
エメルダの言葉にペタライトだけが反論していた。
「月輪様の娘達は神力を持つ人間と婚約し、子孫を残しました。その末裔が我々だとされています。神力を持つ人間は我々と同格だとされています。そこに奇形が生まれる原因はないかと。」
「けれど、神力を持つ人間はそう多くはない。だから血を絶やしたり濃くなるのを防ぐ為に妖や怪との間に子を作ったんじゃないか、って私は考えているの。それなら、死神が他の神よりも不安定な存在だというのが説明できる。根拠といえるものはないけど確実な証拠が見つかれば、それが正しい可能性はあるわ。」
すると、今まで無言だったアゲートが手を挙げた。
「僕は父親が死神で、母親が馬の怪なんです。エメルダさんの説がもし正しければ僕以外にもそういう存在が居たって事ですよね?」
「そうなの?その割には怪の特徴が見られないけど…」
アゲートは奇形ではないが、怪の血を受け継いでいる。アゲートはそうではなかったが、もしかすると子孫には怪の特徴が現れるかもしれない。
「人間は私達と比べて寿命は短いけれど、多くの事を知っている。それを生かせば私達は人間に近付けるのではないかしら。」
エメルダが更に話そうとしたその時だった。遠くで何かがぶつかる音が聞こえた。
「また怪が現れたの?!」
「仕方ない。行きましょう!」
エメルダはショール達を引き連れ、怪が居る場所へ向かった。




