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忌具


 ようやく洞窟(どうくつ)の最深部(さいしんぶ)に辿(たど)り着(つ)いた音羽(おとは)は、重々(おもおも)しい扉(とびら)の前(まえ)に立(た)った。鍵(かぎ)を開(あ)けると、そこには無数(むすう)の御札(おふだ)が貼(は)られた箱(はこ)が置(お)かれてあった。音羽(おとは)がそれを一枚(いちまい)ずつ剥(は)がしていくと、漆黒(しっこく)の箱(はこ)が顔(かお)を出(だ)した。

「この中(なか)に『黒刃(こくば)』が入(はい)ってるんですか?」

クォーツが頷(うなず)くと、音羽(おとは)はその箱(はこ)に手(て)を伸(の)ばした。すると、箱(はこ)は一人(ひとり)でに崩(くず)れ、中(なか)から漆黒(しっこく)の鎌(かま)が顔(かお)を出(だ)した。

「これか、千年(せんねん)もの間(あいだ)封印(ふういん)されていた師匠(ししょう)の鎌(かま)か…」

クォーツが『黒刃(こくば)』を持(も)とうとした。すると、『黒刃(こくば)』は禍々(まがまが)しい気(き)を発(はっ)してクォーツを退(しりぞ)けた。それを目撃(もくげき)した音羽(おとは)は驚(おどろ)いたが、同(おな)じように鎌(かま)を持(も)ったが、不思議(ふしぎ)な事(こと)に何(なに)も起(お)こらなかった。

「優(すぐ)れた鎌(かま)は自(みずか)らその持(も)ち主(ぬし)を選(えら)ぶとされる。音羽(おとは)は『黒刃(こくば)』に選(えら)ばれたんだ。」

「どうして俺(おれ)を?」

「それは鎌(かま)に直接(ちょくせつ)聞(き)くしかないね」

「でも鎌(かま)は言葉(ことば)を話(はな)さないんじゃ…」

「だからだよ」

音羽(おとは)は『黒刃(こくば)』を握(にぎ)り締(し)めた。

「君(きみ)が『黒刃(こくば)』の使(つか)い手(て)なら、誰(だれ)よりも使(つか)いこなすんだ。鎌(かま)と心(こころ)を合(あ)わせるのを繰(く)り返(かえ)して死神(しにがみ)は成長(せいちょう)する。」

音羽(おとは)は、クォーツと共(とも)に洞窟(どうくつ)の外(そと)に出(で)た。

 『黒刃(こくば)』は封印(ふういん)されなければならない程(ほど)に忌(い)むべきものだったのだろうか。音羽(おとは)は『黒刃(こくば)』の無言(むごん)の声(こえ)に耳(みみ)を傾(かたむ)けた。クォーツには明(あき)らかに抵抗(ていこう)したものの、音羽(おとは)には心(こころ)を許(ゆる)しているそうで側(そば)を離(はな)れない。

「色々(いろいろ)な鎌(かま)を造(つく)り手懐(てなづ)けてきた師匠(ししょう)だけど、この『黒刃(こくば)』だけは手(て)に追(お)えなかったみたいでね。」

「鎌(かま)を造(つく)るのって大変(たいへん)じゃないですか?」

「大変(たいへん)だよ。だけど、僕(ぼく)がやらなきゃいけない仕事(しごと)だからやるしかないんだ。」

クォーツは師匠(ししょう)であるマグマの顔(かお)を脳裏(のうり)に浮(う)かべていた。

 そして、『黒刃(こくば)』を持(も)って音羽(おとは)が現世(げんせ)に帰(かえ)ろうとした時(とき)だった。遠(とお)くで見知(みし)った誰(だれ)かの気配(けはい)を感(かん)じた。

「嫌(いや)な予感(よかん)がする!」

「音羽君(おとはくん)!」

音羽(おとは)はクォーツを置(お)いて走(はし)り出(だ)した。その手(て)には『黒刃(こくば)』がしっかりと握(にぎ)られている。この先(さき)で何(なに)が起(お)こるかは分(わ)からないが、もし戦(たたか)うなら『黒刃(こくば)』を使(つか)う絶好(ぜっこう)の機会(きかい)だと音羽(おとは)は意気込(いきご)んだ。









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