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未だ来ぬ者


 何度(なんど)呼(よ)んでも、呼(よ)んでも、声(こえ)が返(かえ)ってくる事(こと)はなかった。星藍(せいら)はずっと誰(だれ)かを待(ま)っているが、その者(もの)が来(く)る事(こと)はない。

 星藍(せいら)は、記念館(きねんかん)を出(で)てある場所(ばしょ)へ向(む)かった。

 青波台(あおなみだい)の海辺(うみべ)には大木(たいぼく)が生(は)えている。古(ふる)くからそこにある木(き)を音羽(おとは)は『光(ひかり)の樹(き)』と呼(よ)んでいた。音羽(おとは)はその木(き)が光(ひか)るのを見(み)た事(こと)があるらしい。何故(なぜ)木(き)が光(ひか)るのかは星藍(せいら)には全(まった)く分(わ)からない。音羽(おとは)も詳(くわ)しくは教(おし)えてくれなかった。

 『光(ひかり)の樹(き)』からはこの世界(せかい)の生物(せいぶつ)にはない異質(いしつ)な気配(けはい)を感(かん)じた。ひょっとするとこの木(き)は自分(じぶん)と同(おな)じように不完全(ふかんぜん)な状態(じょうたい)でこの世界(せかい)に存在(そんざい)しているのだろうか。以前(いぜん)見(み)た時(とき)はよくある普通(ふつう)の木(き)だと思(おも)っていたが、もしかするとそうでもないのだろうか。

 星藍(せいら)はこの木(き)に寄(よ)り掛(か)かり、篤矢(あつや)を待(ま)った。篤矢(あつや)は、星藍(せいら)を覚(おぼ)えているのだろうか。無事(ぶじ)に見(み)つけてくれるだろうか。そんな事(こと)を考(かんが)えながら眠(ねむ)りについた。



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