表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/69

八咫烏の里


 …現世(げんせ)とも冥界(めいかい)とも(こと)なる世界(せかい)(いく)つかある。その(ひと)つが妖界(ようかい)だった。その()(とお)(あやかし)()らす世界(せかい)で、その(なか)八咫烏(やたがらす)(さと)がある。八咫烏(やたがらす)とは(かみ)(つか)えるのを生業(なりわい)とする(からす)だ。三本足(さんぼんあし)特徴(とくちょう)だが、烏天狗(からすてんぐ)()した人型(ひとがた)姿(すがた)変身(へんしん)する。そんな八咫烏(やたがらす)()らしているのが八咫烏(やたがらす)(さと)だ。



 そこで修行(しゅぎょう)しているのが、一八(いちはつ)双子(ふたご)(あね)松葉(まつば)だった。松葉(まつば)一八(いちはつ)(おな)じように(かい)()()()いでいるが、八咫烏(やたがらす)になるという(ゆめ)(かな)える(ため)にここで頑張(がんば)っている。


 八咫烏(やたがらす)としては()技術(ぎじゅつ)不完全(ふかんぜん)松葉(まつば)だ。教育係(きょういくがかり)青鈍(あおにび)()ほどきを()けているが、剣技(けんぎ)妖術(ようじゅつ)もなかなか上達(じょうたつ)しない。それでも、松葉(まつば)必死(ひっし)()らいついている。見知(みし)らぬ土地(とち)頑張(がんば)(おとうと)(おも)()しながら、(きび)しい(こえ)にも()えていた。



 そんな松葉(まつば)(やさ)しく(せっ)したのは、従姉妹(いとこ)梅重(うめかさね)とその婚約者(こんやくしゃ)山吹(やまぶき)だった。梅重(うめかさね)は、松葉(まつば)(いもうと)のように(あま)やかしている。それを青鈍(あおにび)(とが)められているが、(まった)()にしていない。

「お(つか)れ、松葉(まつば)ちゃん。」

梅重(うめかさね)(いろ)とりどりの寒天菓子(かんてんがし)()って()ていた。

若草(わかくさ)がお(そな)(もの)のお()がりを()って(かえ)ってね、()けてくれたの。」

松葉(まつば)はそれを(ひと)()って()べた。寒天(かんてん)砂糖(さとう)(おお)われていて、シャリっとした()ごたえがあった。



 八咫烏(やたがらす)時々(ときどき)主人(しゅじん)である(かみ)のお(そな)(もの)()(あた)えられる。それは、()(もの)装飾品(そうしょくひん)といったもので、八咫烏(やたがらす)好物(こうぶつ)だった。若草(わかくさ)から()けてもらった寒天(かんてん)梅重(うめかさね)()べる。

(わたし)も、(はや)(だれ)かに(つか)えたいなぁ…。」

梅重(うめかさね)には主人(しゅじん)()ない。八咫烏(やたがらす)は、主人(しゅじん)となる(かみ)(えら)ばられてやっと八咫烏(やたがらす)として(みと)められるのだ。(かみ)にも様々(さまざま)存在(そんざい)()るが、主人(しゅじん)(たか)地位(ちい)である(ほど)優秀(ゆうしゅう)八咫烏(やたがらす)(えら)ぶ。


 松葉(まつば)父親(ちちおや)緑丸(りょくまる)は、風見(かざみ)(すばる)息子(むすこ)で、冥府(めいふ)神妖(しんよう)風見(かざみ)朝日(あさひ)(つか)えている。また、梅重(うめかさね)両親(りょうしん)紅丸(べにまる)真白(ましろ)は、夫婦(ふうふ)鬼神(おにがみ)蘇芳(すおう)(つか)えている。二人(ふたり)(おや)優秀(ゆうしゅう)で、(ほか)八咫烏達(やたがらすたち)からも一目(いちもく)()かれている。だが、松葉(まつば)梅重(うめかさね)はそんな両親(りょうしん)足元(あしもと)にも(およ)ばなかった。



 休憩(きゅうけい)(あと)松葉(まつば)青鈍(あおにび)との修行(しゅぎょう)再開(さいかい)した。青鈍(あおにび)は、先程(さきほど)人型(ひとがた)姿(すがた)ではなく、(からす)姿(すがた)でそこに()る。

松葉(まつば)今度(こんど)(からす)姿(すがた)になれ。」

松葉(まつば)青鈍(あおにび)のように(からす)になろうとした。ところが、身体(からだ)(ちから)()めても、(からす)にはならない。

松葉(まつば)何故(なぜ)なんだ!(からす)姿(すがた)になれないなんて…。」

その様子(ようす)()ようと八咫烏達(やたがらすたち)(あつ)まって()た。余程(よほど)(めず)らしかったのだろう。

松葉(まつば)(からす)になれないと八咫烏(やたがらす)としての使命(しめい)()たせない。剣技(けんぎ)妖術(ようじゅつ)上達(じょうたつ)しても、(からす)になれなければ意味(いみ)がない。」

松葉(まつば)何度(なんど)(からす)になろうとした。ところが、(あたま)姿(すがた)想像(そうぞう)しても、松葉(まつば)だけは変身(へんしん)できなかった。どれだけ修行(しゅぎょう)をしても、やはり自分(じぶん)半端者(はんぱもの)なのかと、松葉(まつば)一人(ひとり)()()んでいた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ