濡烏との鍛錬はしばらく続いた。松葉は、濡烏に近付けるように必死に刀を振った。濡烏は、そんな松葉を見て、かつて緑丸も同じ事をしていたと思い出していた。
しばらく経ってから松葉は休憩した。その横で濡烏は松葉に声を掛ける。
「怪として生きるか、それとも妖として生きるか決まったか?」
濡烏がそう聞くと松葉は首を振った。
「まぁそう焦る必要はないからな。」
「一八は元気にしているのかな…」
松葉の脳裏には別れた時の一八の姿が映っていた。
松葉は改めて一八との心の距離が離れたというのを感じていた。同じように産まれ育ったはずの双子は、その見た目も考え方も大きく違っていた。そして、目的も違う。松葉は妖になりたいと願い八咫烏の里へ向かった。一方、自分だけの生き方を探している一八は昴の指示で現世に居る。
一八が今何を考えているのかは分からないが、少なくとも自分とは違うのだろう。
休憩を終えた松葉は刀を自分の所に寄せた。
「一旦八咫烏の里に戻ります。」
「そうか、気をつけてな。」
松葉は一人で鬼界を抜け、八咫烏の里へ帰った。